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私たち自身が波と化す時代。選手の「社会的発言」は増えているのか

2022.11.20

※『フットボリスタ第82号』より掲載。

 ドイツ代表のフィリップ・ラームは「スポーツは政治である」から始まる記事を今年1月、英紙『ガーディアン』に寄稿した。その中で「人々はカタールの状況を知りながら、壮大な景色や最高のチームを見ることを楽しんでいる」と指摘。今は誰もが世界中の情報にアクセスできる。あらゆる楽しみを共有できるのなら、カタールの状況だって同じだろう、と。

 同時に、ラームは社会問題に向き合う選手の存在も伝えている。ドイツ代表は昨年3月、アイスランド代表とのW杯欧州予選で「HUMAN RIGHTS」と書かれたTシャツを着用。その一員であるレオン・ゴレツカは、カタールで移民労働者が置かれている環境から「目を背けていないことを証明したかった」と話す。2019年1月には、フィンランド代表のリク・リスキが「倫理観と価値観」を理由にカタールで行われた合宿を辞退。同国主将を務めたティム・スパルフは昨年9月、リスキの指摘を受け「カタールについて話し続けなければいけない」と綴り、各地で言葉を紡いでいる。

イングランド代表をめぐるせめぎ合い

 そして同年に開催されたEURO2020決勝では、イングランド代表をめぐる人種差別の波が押し寄せた。当事者の一人となったマーカス・ラッシュフォードは、PKの失敗については「申し訳ないとしか言いようがない」とした一方、「南マンチェスターのウィジントンとウィゼンショー出身の、23歳(当時)の黒人男性」であることは「絶対に謝らない」と自身のTwitterに投稿した。試合の結果と肌の色や出自、想起される「イングランド人らしさ」が絡み合って起こる差別の波の中で、ラッシュフォードは強力な帰属意識を言葉にしてそれに抗った。……

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イングランド代表フィリップ・ラーム文化

Profile

邨田 直人

1994年生まれ。サンケイスポーツで2019年よりサッカー担当。取材領域は主にJリーグ(関西中心)、日本代表。人や組織がサッカーに求める「何か」について考えるため、移動、儀礼、記憶や人種的思考について学習・発信しています。ジャック・ウィルシャーはアイドル。好きなクラブチームはアーセナル、好きな選手はジャック・ウィルシャー。Twitter: @sanspo_wsftbl