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日本代表の付け入る隙はある。サプライズの少なかったスペイン代表メンバー選考を読み解く

2022.11.13

1111日に発表された、スペイン代表のW杯メンバー26人。以前から組織を重んじメンバーを固定してきたルイス・エンリケ監督らしく、信頼を寄せる選手中心の選考となった。顔ぶれに表れる指揮官の狙いを、現地在住の木村浩嗣氏に読み解いてもらった。

 ルイス・エンリケのW杯招集メンバー26人が発表されてから15分後には、『マルカ』紙に「忘れられたW杯に行けない強力なイレブン」という記事がアップされていた。招集にサプライズはなかったので、事前に準備した原稿は無修正で掲載できたことだろう。

GK:ケパ(チェルシー)

DF:ベジェリン(バルセロナ)、S.ラモス(PSG)、I.マルティネス(アスレティック)、ククレジャ(チェルシー)

MF:チアゴ(リバプール)、メリーノ(ソシエダ)、ファビアン(PSG)、カナーレス(ベティス)

FW:I.アスパス(セルタ)、G.モレノ(ビジャレアル)

 なかなか強力なメンバーで(私なら右SBはオスカル・ヒル=エスパニョール、右サイドはブライス・メンデス=ソシエダだが)本番で見てみたかったが、もう夢でしかない。

 ルイス・エンリケが選んだ26人は次の通り(※太字は木村のレギュラー予想)。

GK:ウナイ・シモン(アスレティック)、ロベルト・サンチェス(ブライトン)、ダビド・ラジャ(ブレントフォード)

DF:ダニ・カルバハル(レアル・マドリー)、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)、エリック・ガルシア(バルセロナ)、アイメリク・ラポルト(マンチェスターC)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、ウーゴ・ギジャモン(バレンシア)、ジョルディ・アルバ(バルセロナ)、ホセ・ガジャ(バレンシア)

MF:セルヒオ・ブスケッツ(バルセロナ)、ロドリ(マンチェスターC)、コケ(アトレティコ・マドリー)、カルロス・ソレール(PSG)、ペドリ(バルセロナ)、ガビ(バルセロナ)、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリー)

FW人:フェラン・トーレス(バルセロナ)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、ジェレミ・ピノ(ビジャレアル)、アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリー)、パブロ・サラビア(PSG)、ダニ・オルモ(RBライプツィヒ)、アンス・ファティ(バルセロナ)

 もう少しサプライズがあると思った。

 最後の招集時にルイス・エンリケお気に入りのメンバーの何人かがクラブで出場時間を減らしており、彼らのパフォーマンスもチームの試合内容も良くなかったからだ。

 ルイス・エンリケが最後の最後に翻意して、クラブで絶好調のブライス、メリーノ(ともにソシエダ)、もしかするとカナーレス(ベティス)とかセルヒオ・ラモス(PSG)もプレリストの55人には入っていたので可能性はあるかもと思っていたが、そうならなかった。クラブでの出来がどうであれ招集する者は招集する、という方針は変わらなかったわけだ。

「一貫性」を強調

 記者会見でルイス・エンリケは「一貫性」という言葉を何度か使っていたが、一貫したメンバー選考で、一貫した戦い方でカタールに臨むことになる。

 GKはずっと固定されていたので予想通り。DFには小さなサプライズ、ギジャモンの抜擢があった。彼は今季ガットゥーゾの下でボランチで使われており、MFと兼用できることが決め手になったようだ。代わりにイニゴ・マルティネス、ディエゴ・ジョレンテの常連組が外された。CLでのミスでベンチを温めることが多くなったエリック・ガルシア、ここ数試合ボール出しのミス続きのパウへの信頼も揺るがなかった。アスピリクエタはCB的なSBで、4バックから3バックへの移行には欠かせない。ジョルディ・アルバは最後の招集時より出場時間を増やしており、ガジャはチームで完全なレギュラーかつキャプテンなので万全だった。……

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カタールW杯スペイン代表

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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