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クリスティアン・ロメロ(アルゼンチン):デビュー直後の猛批判を乗り越え「強くなった」冷静と情熱のCB【W杯注目の新星⑨】

2022.08.18

7月11日に発売され、現在プレゼントキャンペーンも実施中の『footballista 2022 QATAR WORLD CUP GUIDEBOOK』。出場32カ国確定のタイミングでどこよりも早く、全チームの有力メンバーを網羅した選手名鑑と戦術分析をお届けするカタールW杯観戦ガイドだ。その連動企画として、WEBでは各国の担当ライターがそれぞれ、本大会でブレイク期待の“ライジングスター”を紹介。第9回は昨年のコパ・アメリカで28年ぶりのタイトルを手に入れ、そして36年ぶりの世界制覇に挑む「アルゼンチン代表」から、名アタッカーぞろいの同国に現れた待望の次世代DFリーダー、24歳のCBロメロ(トッテナム)を取り上げる。

 いつの時代も魅力的なアタッカーがそろうアルゼンチン代表。そのためにどうしてもリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)やアンヘル・ディ・マリア(ユベントス)といった攻撃陣ばかりが注目されがちだが、リオネル・エスカローニ監督率いる現在のチームにはカタールW杯での活躍が大いに期待される若手CBがいる。“クティ”の愛称で親しまれるクリスティアン・ロメロだ。

 昨年6月のW杯予選2連戦で初めてA代表に招集されるや先発メンバーとして起用され、2試合目のコロンビア戦(2-2)ではキックオフから130秒後に得点をマーク。W杯予選のアウェイゲームにおける歴代最速ゴールとして1985年にディエゴ・マラドーナが樹立した168秒の記録を更新して話題をさらっただけでなく、後半途中に負傷退場するまで安定したプレーを披露して称賛された。その5日後に開幕したコパ・アメリカではレギュラーに定着し、先輩のニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)と堅固な守備の壁を築いて優勝に貢献。長年にわたってアルゼンチン代表に不在と言われた「次世代を担うCB」の待ち望まれた登場となった。

1998年4月27日生まれの24歳。昨年6月の代表デビューから1年、何度かケガに苦しみながらも、南米制覇とW杯予選突破を果たしたアルゼンチン、さらに新天地トッテナムで不動の地位を確立した

 代表デビューの直前には所属していたアタランタでのパフォーマンスが高評価を受けて20-21シーズンのセリエA最優秀DFに選出され、コパ・アメリカ優勝後はトッテナムに移籍してプレミアリーグで成長を続けるロメロ。母国では代表入りを機に一気にスターダムに駆け上がったものの、名声に浮かれることはなく、どんな状況にも動じないベテランの風格がある。だがその冷静沈着な性格の背景には、18歳でプロデビューしたばかりの頃に味わった辛い体験があった――。

12歳で「W杯優勝DFを彷彿とさせる」気質

 ロメロが生まれたのは、首都ブエノスアイレスに次ぐアルゼンチン第2の都市コルドバ。サッカー熱が高く、過去に多くの名手を生み出した地域である。ロメロも物心ついた頃からごく自然にボールを蹴り始め、8歳で地元のクラブ、クルブ・アトレティコ・サン・ロレンソに入団してジュニアリーグに参加するようになった。

 同ジュニアチームの指導に当たっていたダニエル・リオスによると、ロメロは当時からDFとしての素質を発揮していたが、「優れたゲーム感覚を持っていてパスも巧く、5番(守備的MF)としての才能もあった」という。攻撃参加が好きで、チャンスがあれば敵陣まで攻め上がり、セットプレーでは得意のヘディングで得点を挙げることもよくあった。まさにW杯予選のコロンビア戦で決めたゴールのようなパターンだ。

コロンビア対アルゼンチンのハイライト動画。開始130秒で決めたロメロの初ゴールは13秒〜

 また、プレー面でのスキル以外に、ロメロは同年代のチームメイトに見られない「強い気質」を秘めていた。試合では最終ラインから声を出してチームをまとめ、劣勢になれば仲間たちを鼓舞し、競り合いでも人一倍負けん気の強さを発揮。トレーニング場には誰よりも早く到着し、練習終了後も最後まで居残ってFKを蹴り続けた。……

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アルゼンチン代表カタールW杯クリスティアン・ロメロトッテナム

Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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