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ロブロ・マイェル(クロアチア):モドリッチの後継者は「見えていないものが見える」努力の天才レフティ【W杯注目の新星⑧】

2022.08.14

7月11日に発売され、現在プレゼントキャンペーンも実施中の『footballista 2022 QATAR WORLD CUP GUIDEBOOK』。出場32カ国確定のタイミングでどこよりも早く、全チームの有力メンバーを網羅した選手名鑑と戦術分析をお届けするカタールW杯観戦ガイドだ。その連動企画として、WEBでは各国の担当ライターがそれぞれ、本大会でブレイク期待の“ライジングスター”を紹介。第8回はロシアW杯の準優勝国「クロアチア代表」から、次代を担う新たな“LM10”、24歳のMFマイェル(レンヌ)を取り上げる。

 「私たちに見えていないものが彼には見える」

 今から始めるのは真夏の怪談ではなく、あるサッカー選手の話だ。クロアチア代表MF、ロブロ・マイェル。左利きには天才肌が多いと言われるが、マイェルも「天才」の名をほしいままにするレフティだ。研究によれば、アスリートが受け取った視覚情報が右脳で処理されたのち、その情報が運動中枢に到達するまでのスピードが20〜30ミリ秒、右利きより左利きの方が速いそう。なるほど、ピッチ上で数手先が読めるマイェルの知覚力は利き手の違いで説明づけられるかもしれない。ところが、幾多の左利きを見てきたはずのクロアチアの指導者たちが異口同音に言うのがあのセリフだ。

 「私たちに見えていないものが彼には見える。ようやく私たちにそれが見えるのは彼がパスを出してからだ」

昨季加入したフランスのレンヌでも、1年目から中盤の“マエストロ”としてチームを牽引、ファンを魅了した

才能は成功への道のりのほんの一部に過ぎない

 テコンドー欧州王者だったエゴン・マイェルの長男としてクロアチアの首都ザグレブで生を受けたロブロは、サッカー一筋の少年時代を過ごした。父親に「テコンドーをやらないか? もし誰かにやられそうになっても対抗できるんだぞ」と勧められても断り続けたという。フランスW杯の得点王、ダボル・シュケルが開校したサッカーアカデミーに5歳で入団。その1年後には強豪ディナモ・ザグレブの門をくぐった。1998年生まれの同世代にはヨシップ・ブレカロ(現ボルフスブルク)、ボルナ・ソサ(現シュツットガルト)、ニコラ・モロ(現ディナモ・モスクワ)ら多彩なタレントが集結。2013年にはナイキ・プレミアカップで優勝してU-15クラブ世界王者に輝いた。しかし、その3年前にマイェルは不本意にもディナモを去っていた。

 「何が理由だったかは語りたくない。僕はあえて困難な道を選んだんだ。人として、サッカー選手として自己形成できたので、その決断をして今は良かったと思っている。才能は成功への道のりのほんの一部に過ぎないことに気づいた。何かを成し遂げるには多くの努力が必要だ」

 12歳でディナモを退団したマイェルは、ドゥブラバやトルニェといった下部クラブのユースで練習を続け、その3年後に1部ロコモティーバのユースに入団した。かつての仲間が世界王者になった際には「彼らよりも僕の方が優れている。『サッカー選手になる』という唯一の目標に向かって必要なことはすべてやってやる」と心に誓い、トレーニング量を増やしたという。

 16-17シーズンに18歳でロモコモティーバのトップチームでデビューを果たすと、1年目の途中から「10番」を背負ってプレーメイカーとして君臨。2017年5月には国内組を中心に結成されたクロアチア代表に選ばれ、3分間とはいえメキシコ戦でA代表デビューを果たした。2018年3月にはディナモを相手に2得点を挙げ、直接対決29戦目にしてロコモティーバに初勝利をもたらし、2シーズン連続で21歳以下のリーグ最優秀プレーヤーに選出。サンプドリアから移籍金650万ユーロのオファーが届き、交渉のためにジェノバへ足を運んだのもこの頃だ。周囲がセリエ行きを勧める中、古巣ディナモからのオファーに彼の心は揺れ動いた。

 「サンプドリアの方が条件が良く、僕のためのプロジェクトをしっかり準備していた。しかし、『これじゃないんだ』とも感じていた。ディナモに戻れるチャンスが少しでもあるならば、それこそが僕の選択だ。代理人からディナモが『10番』を用意していることを耳にした時、まるで僕はその言葉を聞くために切磋琢磨してきたような気分になった」

2019年4月7日のルーデシュ戦でマイェルが挙げたディナモ初ゴール。写真提供は長束氏

「ディナモの10番」を背負うということ

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カタールW杯クロアチア代表ロブロ・マイェル

Profile

長束 恭行

1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。