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「開幕戦とやっていることは変わらない」モンテディオ山形、スタートダッシュ失敗と急上昇の理由とは?

2022.05.20

監督交代を経験した2021シーズンを7位で終え、2022シーズンは昇格の有力候補と目され開幕を迎えたモンテディオ山形。開幕8試合でわずか1勝(3分4敗)とスタートダッシュに失敗するも、第9節以降7戦無敗(5勝2分)と調子を上げてきた。序盤の不振とそこからの急上昇理由について、チームをつぶさに追い続けている佐藤円氏に綴ってもらう。

 今季、「ブッチギレ」をクラブスローガンに掲げているモンテディオ山形がようやく加速してきた。

 ゴールデンウィーク5連戦の4勝1分を含む7戦負けなしで、この間に19位から5位まで急浮上し混戦の中位グルーブをゴボウ抜き。第15節終了時点で、自動昇格圏まで勝点6差に迫っている。敗戦扱いになっている第8節ファジアーノ岡山戦は競技規則の適用ミスが認められたことで今後、再試合になることが決まっているほか、第16節いわてグルージャ盛岡戦は岩手に新型コロナウイルス感染者が出た影響で中止となり、こちらも後日、代替試合が行われることになっている。夏場に連戦が増えることは懸念材料だが、2人の外国籍選手も活躍するなど戦力の層は厚みを増した。タフな日程を戦える戦力が十分にそろってきた印象はある。

 ピーター・クラモフスキー監督の下で2年目となる今季、山形の前評判は高く、J1から4クラブが降格するなかでも昇格候補の一角に推す予想を多く目にした。指揮官をはじめチームの体制に大きな変化がなく、昨季の主力を多く残しながら新たな戦力も加えている。強化部門を強化した効果は年々、確かな形で表れている。

 しかし、蓋を開けた今季序盤は苦しいスタートとなった。開幕戦でザスパクサツ群馬に敗れたあと、第2節でロアッソ熊本に勝利したがその後は勝利をつかめず、ホーム開幕戦で7年ぶりに実現した第5節ベガルタ仙台との「みちのくダービー」では、2度追いついたあとに勝ち越され2-3で敗れている。第8節まで1勝3分4敗、勝ち点6で19位に低迷。これは石丸清隆監督(当時)が解任された昨季と同じペースで、昨季は第9節にも敗れた直後に石丸監督が解任されクラモフスキー監督招へいのきっかけとなった。では、同じような戦績の今季も監督解任の可能性があったかといえば、その可能性は極めて低かったと思われる。理由はさまざまあるが、終盤の失点で勝ち点を取りこぼすケースは多かったものの、攻守の理想形に着実に近づき、求めるパフォーマンスが出せていたことがある。

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“スロースターター”な2つの通説

 では、なぜ今季序盤に低迷したのかについて見ていきたいが、その前に1つ情報として共有しておきたいのが、山形はそもそもスロースターターだということだ。

 2009-11年と15年にJ1でプレーしているが、J2“初降格”した12年以降の10シーズン(15年を除く)で見てみると、開幕戦で勝ったのは17年の一度きりで、ほかは1分8敗。圧倒的に開幕戦で勝てていない。今季も群馬に0-1で敗れている。また、開幕から5戦の戦績を見ても勝ち越しているのは12年、13年(ともに3勝0分2敗)、17年(1勝4分0敗)、19年(3勝1分1敗)の4シーズンのみ。今季も1勝2分2敗のスタートで、戦績だけを見れば「いつものシーズン」という印象だ。

 山形の開幕直後のスロースターターの要因として、通説となっている理由が2つある。

 1つは、開幕前の長いキャンプ生活。開幕前の山形は降雪、積雪に見舞われグラウンドの確保もままならず、気温の低さはケガに繋がりやすくトレーニング効果も高くない。加えて近年は日程的に開幕戦が前倒され、3月上旬から今や2月開幕が既定路線となっている中で、1月中旬のチーム始動から開幕まで通常約6週間は山形へ帰らず、キャンプ地から開幕戦の地に乗り込むのが恒例となっている。長期キャンプは目に見えないストレスが蓄積しやすく、開幕戦では選手の動きの硬さが毎年のように目立つ。また、一度地元に戻れば開幕に向けてスイッチを切り替えリフレッシュすることもできるだろうが、キャンプの延長線上で迎える開幕戦は気持ちを作るのも難しいとチーム内から聞いた。こうした問題を解決すべく、クラブでも開幕前の部屋割りで1人にひと部屋を割り当てたり、J1時代の15年にはまだ雪の残る山形に半ば強引に戻り、開幕前の1週間トレーニングしたこともあった。昨季途中に就任したクラモフスキー監督にとって山形でキャンプから指導するのは今回が初めてだったが、こうした難しさをどこまで考慮し、これまでのクラブの蓄積がどれだけフィードバックされていたのか。ポジティブな思考でどんな状況でも全力を出し切ることを求める監督だけに、あるいはそこまで重要視していなかったのかもしれない。……

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Jリーグモンテディオ山形

Profile

佐藤 円

1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。