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ささゆかのベトナム遠征記。「他では絶対味わえない経験」ACL現地観戦のすゝめ

2022.05.09

コロナ禍によりベトナムで集中開催されたACL(AFCチャンピオンズリーグ)東地区グループステージのH組。日本から参戦した横浜F・マリノスは怒涛の6連戦の中、4勝1分1敗の成績を収め、堂々の首位で決勝ラウンドへの切符をつかんでいる。その愛するクラブとともに現地へ乗り込み、高温多湿の厳しい気候にも負けず熱い声援を送ったマリノスサポーターの一人がささゆか氏だ。TwitterやYouTubeでマスコットから旅行情報まで幅広くサッカー観戦の文化や魅力を発信している彼女が綴る、異国の地で味わった苦難の連続、それを乗り越えた先で楽しめるACLの醍醐味とは。パンデミックで何かと身動きが取りづらい今だからこそ、フットボリスタ初となるサポーター海外遠征記を通じて旅情を味わってほしい。

 あなたは知らないオヤジが運転するバイクの後部座席に乗ったことはあるだろうか。

 経験上、サポーターライフを送る中で起きた失敗談やびっくりエピソードを話すのが初対面の人と打ち解けるきっかけになることがある。とりわけ、アジアでの戦いはエピソードの宝庫だ。日本での常識は通用しない。構えていても次から次に不思議な事象が起こる。それがACLだ。

 今回はベトナムで集中開催されたACL東地区グループステージにおいて、横浜F・マリノスの応援に行った遠征記をお届けする。

ホテルでもスタジアムでも自由なベトナム

 飛行機を降りた瞬間に、国内遠征では味わったことのないじんわりとした熱風が全身に纏いつく。滞在中のベトナムの湿気は常に94%以上。おやつに買ったオレオクッキーは30分部屋に置いていただけでサクサク感が見事に失われ、口溶けはメルティーキッスと化した。スタジアムでフラッグに寄せ書きをしても、書いていくそばから文字が滲んでいく。それほどの蒸し暑さだった。

 空港からスタジアムまで向かう道すがら、ホテルにデカデカと掲げられた「WELCOME TO Hoàng Anh Gia Lai」「AFC CHAMPIONS LEAGUE 2022」という幕が目を引いた。

横浜FMの宿泊先にも入口に「WELCOME AFC CHAMPIONS LEAGUE 2022」の文字が

 おそらくACL出場チームが宿泊しているホテルなのだが、選手の宿泊先をここまで明らかにしていいのかと驚く。ヨーロッパでは宿泊ホテル近くで対戦相手チームのサポーターが花火を上げるなどの妨害や、不要なファンサービスの負担を減らすべく伏せるのが一般的だ。 しかし実際に滞在してみると、どうやらベトナムでは有名人のお墨付きの宣伝効果が高いらしい。

 私が現地で連れて行ってもらった飲食店も「ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーがお忍びで行ったレストラン」との触れ込みで、10年以上人気を博しているようだった。せっかくのお忍びのはずがまったく忍べていないが、「ここは○○が選ぶほどの観光スポットですよ」といったアピールが最優先され、当人のプライバシーは二の次だと伝わってくる。

 いざ試合会場に到着すると、入場ゲートがザルだった。試合で動物がピッチに乱入するとハプニング映像として取り上げられるが、マリノスが全6試合を戦ったトンニャットスタジアムでは、猫が頻繁に出入りして陸上トラックを闊歩している。スタッフや警備員の誰かが捕まえに行く様子もなく、ただただ微笑ましく眺めているだけだ。

スタジアムにも顔を出すベトナムの野良猫

 そして、まもなくゴール裏に入ってきたのはピーナッツ売りの女性。チケットすら持っていない様子で、良い商売の機会とばかりに顔パス入場している。なんて自由なんだろう。アジアの覇を争う一世一代の大舞台のはずが、続くのは緊張感が緩む出来事ばかりだった。

応援に悩む中で…海外遠征ならではの距離感

 しかし、異国の空気に飲まれては思う壺だ。ベトナムに集まっているのは、突然の有観客開催発表やワクチン接種などの厳しい条件をクリアできた猛者たち。全世界にいるマリノスサポーターを代表して、選手に一番近いところから応援を絶やさず届けなくてはならない。……

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文化横浜F・マリノス

Profile

ささゆか

1988年東京生まれ、フェリス女学院大学卒。 外資インフラ広報経験を活かしたマーケティング考察やサッカーマスコット情報を中心に執筆・イベント登壇など活動中。2019年7月より「サポーターに寄り添うサッカー雑誌」をコンセプトにした共同運営マガジンesteem chant編集長を務める。夢は沢山の海外クラブストアを巡り、世界中のマスコットと会うこと。