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イタリア新世代監督が提唱する「ファンクショナルプレー」という未来

2022.05.06

本誌『フットボリスタ第90号』のポジショナルプレー特集で大きな反響が寄せられたペルージャU-19監督のアレッサンドロ・フォルミサーノによる「ポジショナルプレーからファンクショナルプレーへ」というサッカーの新しい解釈。取材した片野道郎氏はイタリアの新世代監督が提唱する新しいフレームワークに何を感じたのか? 片野氏が最も印象に残ったのは、サッカー監督の仕事に対する根本的な問いかけだった。

 「ほとんどの監督が心の底に抱いている最も大きな恐怖は、自分が望んだ通りにチームが動かないことです。想定外の、コントロールできない出来事がピッチ上で起こることに巨大なフラストレーションを感じ、いつもそれと戦っている。しかしそこには根本的な問題があります。それは、監督の頭の中は選手の頭の中と同じではないということです。選手が監督に言われた通りに振る舞うとしても、それは遂行を命じられたからであってそれ以外ではない」

 本誌5月号のための取材で、アレッサンドロ・フォルミサーノが話していた中で、最も印象的だった言葉だ。ここには、監督という仕事のあり方、その本質をめぐる大きな問いが隠されている。それは、監督の仕事は「自分のサッカー」をチームに「指導」し、自分が頭に描いている通りに「遂行」させることにあるのか、という問いだ。

「選手は駒ではない」――監督の仕事の本質とは?

 フォルミサーノの理論とメソッドは、その問いに対して明確に「NO」と答えるところからスタートしている。その出発点にあるのは、サッカーというゲームをプレーするのはピッチ上の選手たちであって監督ではない、サッカーはチェスや将棋とは違う、という単純な事実だ。

 それゆえ、彼のトレーニングメソッド、そしてゲームモデルやプレー原則の構築プロセスは、一般的に考えられがちなそれとは矢印が逆方向に向いている。

 「監督⇒チーム/選手」ではなく「チーム/選手⇒監督」なのだ。本誌3月号のトレーニングメソッド特集で彼はこう語っている。

 「どんなサッカーをするかを決めるのは私ではなくてチームです。彼らが毎日一緒にプレーする中で自然と方向性が発露してくる。自己組織化のプロセスが進んでくる。それがさらに進むように環境を整えるのが私の仕事です。監督としての私に『私のサッカー』はありませんが『私のメソッド』はある。それはシステム論的、全体論的アプローチです。人間の学習プロセスを尊重し、エコロジカルなやり方でチームと私との間に相互作用を作り出し、成長と進化を促していく」

 監督がしたいサッカーではなくチームがしたいサッカー。それを毎日のトレーニングの中で引き出し、チームに投げ返し、プレーを重ねる中で内面化するプロセスを助ける。それが監督の仕事というわけだ。

 ポジショナルプレーをめぐる議論においても、フォルミサーノのこの基本姿勢は一貫している。盤面上の配置論がもたらす優位性(数的、位置的、質的)を認めながらも、ゲームの中で真に違いを作り出すのはそこから先、すなわち配置そのものよりもむしろそこで行われるプレー選択であるというのが彼の立場だ。

ポジショナルプレーを成り立たせる上位概念

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アレッサンドロ・フォルミサーノファンクショナルプレーポジショナルプレー戦術

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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