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優勝しても山積、パリ・サンジェルマンが直面する5つの問題。ムバッペは…守護神は…“次の”監督は…

2022.05.01

34節を終えて2464敗・76得点31失点。パリ・サンジェルマンが2位マルセイユに13ポイント差をつけ、2季ぶりのフランス・リーグ1王座奪還を達成した。だが、その喜びに浸る間もなく、主力選手、指揮官、フロント、サポーター……彼らの周辺は穏やかでない話題で持ちきりだ。

 第34節のRCランス戦で引き分け、パリ・サンジェルマンが21-22シーズンのリーグ1制覇を決めた。通算10回目の優勝は、これまで単独首位に君臨してきたサンテティエンヌに並ぶフランスの最多記録だ。9回で並んでいた宿敵マルセイユを追い越したのはさぞかし痛快だったはず……だが、まあなんと盛り上がりに欠けた優勝決定戦だったことか……。

 第3節から首位に立ってそのまま順当勝ちと、ドラマチックなタイトルレースでなかったせいもあるが、いろいろな意味でPSGに魅力がないのが一番の要因であろう。優勝を決めたRCランス戦が1-1のドローというのも、王者らしさがなさ過ぎた。ドローはフランス語で「nul」(ニュル)というのだが、この単語には「能なし」という意味もあり、今回の試合の報道ではことさらそのニュアンスが強調されていた感じがする。

 そして喜びに浸る間もなく、PSGはさっそくいくつかの問題に直面している。

①ムバッペの契約延長はどうなる?

 6月30日の契約切れまで、あと2カ月弱。現在、キリアン・ムバッペの母は弟のイーサン君を連れてカタールを訪れている。ナセル・アル・ケライフィ会長もカタールに滞在中で、母ラマリさんはここで息子の新契約についてクラブの取締役と会合を持つ予定だ。

 PSGには、今年11〜12月に開催されるW杯で、なんとしてでもムバッペに「PSGの選手」としてカタールのピッチに立ってほしい、という思いがあるようで、そのために2年間という短めの契約と膨大な報酬を提示すると伝えられている。

 全コンペティション合わせて33得点22アシスト(出場42試合/4月23日時点)。リーグ1では得点(22)、アシスト(14)そろってリーグ首位と、今シーズンの活躍ぶりはこれまでにも増して目覚ましかった。数字もさることながら、決勝ゴールや厳しい状況を打開する一打といった、加点をあげたいくらいの重要な働きが多く、まさにチーム優勝の立役者だった。

 「自分中心のチームでプレーすること」を望み、レアル・マドリーが用意するというそのプロジェクトに惹かれていたムバッペだが、それがもしPSGでも実現するとなったら?

 もとよりパリ近郊出身のムバッペにとって地元のクラブでプレーすることは夢であり、前々から家族もPSGでの契約延長を望み、彼自身も「移籍するなら恩返しに移籍金を残したい」という希望を口にしていた。そしてなにより、あと2年PSGでプレーしても25歳。まだまだ大いにステップアップできる年齢だ。

 リオネル・メッシが加入し、彼とのコンビプレーの楽しさも感じ、自分の成長にとって価値ある学びを得ているという実感もあることだろう。これらの条件がそろったことで、今まで以上に契約延長に天秤が傾いている模様だ。

②ポチェッティーノ監督は去るのか?

……

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パリ・サンジェルマン

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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