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“町田を世界へ”。サイバーエージェント参画4年目、ゼルビア経営改革の今

2022.04.30

サイバーエージェント(CA)グループによる経営権取得から3年半が経過したFC町田ゼルビア。この間にはクラブ名変更をめぐる騒動を経験した一方、今年2月にはクラブにとって待望だった新クラブハウスが完成するなど変化が形となって現れてもいる。スローガンとして掲げる “町田を世界へ”の実現に向けた歩みは順調に進んでいるのか。特にピッチ外を中心とした変化について、クラブを追い続けている郡司聡氏に綴ってもらった。

 豊かな自然に囲まれた「三輪緑山ベース」にボールを蹴る音がこだまする。桜の時期には春の風情がにじみ、四季折々の変化を体感できる練習場は、サッカーコート2面が取れる天然芝の緑の絨毯が鮮やかだ。

 FC町田ゼルビアの選手たちは、そんな環境で日常のトレーニングに励んでいる。町田在籍通算12年目。かつては河川敷グラウンドの駐車場で着替える時代も経験している深津康太がこう言って感謝の言葉を口にする。

 「練習が終わってすぐにシャワーが浴びられることは、他のクラブの選手にとっては普通のことかもしれませんが、僕は練習が終わって車の中で着替えたり、そういった時期も過ごしてきました。今は食堂もあって、ジムも併設されていて、お風呂も充実している。そういったことが当たり前になっていることがうれしいですし、クラブハウスは最高の環境です。僕たちがこうして今の環境を利用できるのも、ここまでクラブに携わってくださった方々や選手たちのおかげです。そうした先人たちに感謝をしながら、この環境をありがたく使わせてもらっています」

環境面の充実への感謝を語った深津

コロナ禍にあって右肩上がりの成長

 町田が2018年10月にCAグループの傘下に入ってから、約3年半の時が過ぎた。CAグループ入り最大の恩恵が、練習場とクラブハウスの環境整備だ。CAによる第三者割当増資11億円のうち、約8億円が今回のクラブハウス建設に充てられたという。町田は市民クラブとして、“自助努力”でJ2定着まで奮闘してきたが、J2ライセンスを取得するためのハード面の環境整備は、高コストが大きなハードルとなって立ちはだかってきた。

練習場の奥に見えるのが、今年2月に完成したクラブハウスだ

 クラブがJ1ライセンス取得に向けた環境整備を模索する中、サッカークラブ経営の再チャレンジを願っていたCA代表取締役社長である藤田晋オーナー側との思惑が一致。2018年10月に町田のCAグループ入りが実現した。

 2021年5月に発表された2020年度の営業収益は約13億円と、年々右肩上がりに成長を続けている。唐井直GMがJ1定着のために目安として掲げている20億円にはまだ及ばないものの、経営改革は着実に進んでいると言えるだろう。

 クラブスタッフ数もCAグループ入りとともに年々増加傾向にある。CAからの出向者はごくわずかだが、現在は総数20人超。一時期は常勤のスタッフがようやく2桁に届くか届かないかほどの数だった時代と比較すれば、 大きな変化だ。……

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Jリーグ町田ゼルビア

Profile

郡司 聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。

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