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名波浩と松本山雅が描く未来図(前編)。残留と降格の狭間で知ったクラブと自らの現在地

2022.01.12

2021年6月21日から始まった名波浩の松本山雅での1年目の挑戦は、J2最下位でJ3降格という苦い結果に終わった。しかし、クラブは監督との契約更新を発表し、2022年シーズンはJ3から再起を図ることになる。果たして彼はどのようなプランで指揮を執り、何が誤算で、何を改善していこうとしているのか。現役時代から追い続ける増島みどり氏が聞いた。

前編では、「残り試合で6勝」という2021シーズンの残留プラン、そしてそれを達成できなかった自身とクラブの反省点を振り返る。

(取材日:2021年12月20日、取材・文:増島みどり)

 試合中にひんぱんにメモを取る姿は、松本でも変わらなかった。メモを取る理由について過去に、「目まぐるしく展開が変化する試合中、メモに書き留める作業は判断のスピードを遅らせ、手間もかかるのでは?」と、たずねた取材がある。

 理由は主に2点。選手に対してアバウトな指示ではなく、より具体的に場面や状況を伝え、ハーフタイム、試合中に修正しやすいアドバイスを出すため。もう1つの理由は、試合中のメモを土台に、自分自身を採点するためだった。試合後、試合分析とは別に、監督としての評価を自らにずっと課してきた。

・選手を適材適所で起用できたのかを含め、戦術が適切だったか。
・戦術を選手が試合で表現するために積んだトレーニングは、的確だったのか。
・試合中の交代に適応し、機能したか。
・試合のための選手、スタッフらとのコミュニケーションは伝わっていたのか。
・良いモチベーションを、チーム全体に与えられたか。

 主にこれらについて自己採点するという。それもかなり厳しく。メモはそのために重要な情報源で、そうであれば2021年はメモの量も、ノートの冊数もかつてないほど増えていたはずだ。

 インタビューで、監督としての反省を聞くと即答した。メモの整理と、それを土台に、チームと、自分をどうプランニングするか。今季への作業はすでに終わっていたからだ。

メモを手に指示を送る名波監督

「選手の心に響く伝え方をしていきたい」


――6月の就任からJ2リーグ戦23試合で、3勝6分14敗。9月の北九州戦で勝利(2-1)した後、最終戦まで11試合連続未勝利で、最下位でのJ3降格となりました。
……

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名波浩松本山雅FC

Profile

増島 みどり

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年独立しスポーツライターに。98年フランスW杯日本代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞。「GK論」(講談社)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作多数。フランス大会から20年の18年、「6月の軌跡」の39人へのインタビューを再度行い「日本代表を生きる」(文芸春秋)を書いた。1988年ソウル大会から夏冬の五輪、W杯など数十カ国で取材を経験する。法政大スポーツ健康学部客員講師、スポーツコンプライアンス教育振興機構業務執行理事も務める。