SPECIAL

敵陣では“ポジショナルプレーっぽくない”アヤックススタイルを分析する

2022.01.04

チーム分析から紐解くポジショナルプレー#1

現代サッカーの主流な戦術的アプローチの1つとなっているポジショナルプレー ただ、採用しているチームであっても実際にピッチ上で実践しているサッカーには差異があり、その実像を理解するのはそう簡単ではない。そんなポジショナルプレーの実像を、具体的なチームの分析を通してらいかーると氏が紐解いていく。第1回はアヤックス。今季のチャンピオンズリーグにおいてGSを全勝で突破。充実一途のオランダ王者流ポジショナルプレーに迫る。

 ポジショナルプレーって結局、なんですか?

 この質問を受けた時に、私は非常に困ってしまいました。ポジショナルプレーは概念なんですよと答えたところで、質問者が納得するわけはありません。ポゼッションサッカーとは違うんですよと答えたところで、実際にポジショナルプレーをしているチームはボールを保持していることが多くないですか?と質問返しを受けたらなんて答えればいいでしょうか。いや、ポジショナルプレーは戦術の上位概念であり、カウンターやポゼッションとは比較することがそもそも間違っているんだ!と言ったところで、具体的にどういうサッカーがポジショナルプレーなんですか?と聞かれたら嫌になっていまします。違うんです、ポジショナルプレーは個々の立ち位置、チーム全体の配置によって、ボール保持非保持にかかわらず、個々の局面において優位性を自分たちに引っ張ってくる考え方なんです!と力説したところで、それって昔から存在していますよね、と言われて話し合いは終了となるでしょう。

 そこで考えました。私は幸運にもfootballistaさんでほぼ毎月web記事を書かせてもらっています。気になる、もしくは注目を集めているチームをピックアップしたり、カップ戦ファイナルのマッチレポを書いたりしてきました。しかし、一貫性がないと言えばありません。一貫性のある記事を書く方が読む人にとっても、そしてなにより書く自分にとって勉強になることは間違いありません。よって、ポジショナルプレーをしているだろうチームを分析することによって、ポジショナルプレーって結局はなんですか?というシンプルな問いに対して、具体的なプレーなどからポジショナルプレーについて迫っていければいいなという願望を叶える企画になっています。末永くお付き合いください。

 さて、記念すべき第1回に取り上げるチームはアヤックスです。チャンピオンズリーグでドルトムントを一蹴し、まさかの6連勝でグループステージを首位で突破しています。アヤックスと言えば2018-19シーズンのチャンピオンズリーグでの旋風が記憶に新しいですが、エリック・テン・ハフに率いられたチームはもう表舞台に帰ってきました。早いです、帰ってくるの。というわけで、チャンピオンズリーグの試合を中心にアヤックスを分析することで、ポジショナルプレーに迫っていこう企画の始まり始まりです。

アヤックスのボール保持

 ポジショナルプレーを志向するチームの多くがピッチの上ではポゼッションサッカーになっている法則の通りに、アヤックスもボールを保持することを非常に得意としています。アヤックスのボール保持の特徴は、ボール保持者がフリーになるまで何度も何度もプレーをキャンセルしGKからビルドアップをやり直すことにあります。そのため、ビルドアップの開始点はGKであることが多いです。……

残り:3,569文字/全文:5,134文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

アヤックスポジショナルプレー偽サイドバック

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

RANKING