SPECIAL

過ぎたるは猶及ばざるが如し――クロップの右腕が重要視する“フロー”状態の持つ“中毒性”という罠

2021.10.20

現代プレッシング戦術の大家ユルゲン・クロップの右腕ペーター・クラビーツによるゲーゲンプレッシングの解説を読み解く中で、浮かび上がってきた“フロー”状態というキーワード。普段サッカーについて語る際にはなかなか触れることのないこの“フロー”状態が持つ特徴、特に注意すべき負の側面についても掘り下げておきたい。

 リバプールのアシスタントコーチ、 ペーター・クラビーツによるゲーゲンプレッシングの解釈を紐解いた記事で、“フロー”状態になるための条件について説明した。また、ユルゲン・クロップやその右腕を務めるクラビーツが意図的にフロー状態を作り出すための仕組みを備えていることを理解した。その中で解説したように、選手たちをチームとしてフロー状態に導く方法はある程度体系化されている。トップリーグで勝ち続けるクラブは、大なり小なりフロー状態にたどり着くための5つの条件をそろえているはずだ。

 だが、このフロー状態には問題もある。提唱者であるミハイ・チクセントミハイもフローの“中毒性”を指摘して「我われは、世の中には完全に肯定的なものなどないという事実を受け入れなければならない」と語り、「エネルギーは力であり、力は手段にしか過ぎない。それを適用する目的によって、生活はより豊かにも苦しみに満ちたものにもなる」としている。例として、窃盗などの犯罪者もその行為を行う際にフロー状態に入ることがある。そういった犯罪者は金銭が目当てというよりは、そのスリルやリスクを統制したという快感を味わうために繰り返し犯罪を起こすのだという。適切な目的を設定できないままフロー状態の“快楽”を求めようとすれば、自ずとその行為の結果もより悲惨なものとなる。

 そこで以下では、サッカーの世界と関連付けながらフロー状態の難しさを見ていこう。

フローの中毒性…身体の限界

……

残り:4,206文字/全文:4,978文字
この記事は会員のみお読みいただけます

会員登録はこちら

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

電子版雑誌が読み放題

会員限定記事が読める

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年9月号 Issue092

11、12月開催のW杯を控えた異例のシーズン。カタールをめぐる戦いの始まり【特集】ワールドカップイヤーの60人の要注意人物 【特集Ⅱ】ワールドカップから学ぶサッカーと社会

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

ケガフローメンタル

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。