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ヘディングと認知症。DFは発症リスクが5倍?「ヘディング禁止」の歴史的テストマッチが英国で開催

2021.10.08

去る9月26日、イングランド北東部でサッカー史に残る試合が行われた。ヘッド・フォー・チェンジ対チーム・ソランの舞台となったのは、国内6部のセミプロリーグに所属するスペニモア・タウンのホームスタジアム。FA(イングランドサッカー協会)非公認で、観客数も329人というチャリティ団体同士の対戦ではあったが、成人チームによる11人制の試合で初めてヘディング禁止ルールが採用されたのだから、歴史的な“テストマッチ”だ。前半はペナルティエリア内でのみヘディングが許され、後半はすべてがファウル扱い。違反行為として、相手チームにFKが与えられた。

サッカー選手の認知症リスクは一般人の3.5

 キックオフでボールを蹴ったのは、往年のミドルズブラ選手で構成されたヘッド・フォー・チェンジの一員、ビリー・ゲイツ。77歳の元CBは、試合後の偏頭痛に悩まされて30歳で現役を退き、のちに認知症と診断された。以来、サッカー選手と認知症の関連性を訴え続け、患者の支援と研究の資金援助を目的とする『Head for Change』を設立したのは、医師でもあるゲイツ夫人。今回の前例なき一戦も、同慈善事業団体の主催で行われた。

 ここサッカーの母国で、人々に少なからず衝撃を与えるデータが公表されたのは2年前のことだった。スコットランドのグラスゴー大学で7700人の元プロ選手を対象に実施された調査により、サッカー選手が認知症やアルツハイマー病を患う危険性が一般人の3.5倍に上るとの結果が得られたのだ。

 今年8月には、ポジションとの関連性を示唆する数値も発表された。滅多に頭でボールを処理することのないGKに見られるリスクは一般人と同レベルだが、フィールド選手は約4倍で、ヘディングの機会が多いDFは実に5倍。一般的に、男性喫煙者の発がん率は非喫煙者の1.6倍とされることを考えれば、タバコのパッケージに倣(なら)い、ボールの表面に“ヘディングは認知症の危険性を高めます”という警告メッセージが印刷されていてもよいほどだ。

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Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。在住も20年を超えた西ロンドンが第二の故郷。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。