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一番の差は「前進」、一方で示した確かな「クオリティ」と「完成度」。U-24スペインとの最終テストから見るU-24日本の現在地

2021.07.19

山口遼のU-24日本代表集中分析第1回:U-24日本対U-24スペイン

57年ぶりの自国開催となる東京五輪で、1968年メキシコ五輪以来となるメダル獲得を目指すサッカーU-24日本代表。その戦いぶりを、先日水戸ホーリーホックのスカウティングアドバイザー就任が発表され7月31日には新刊『シン・フォーメーション論』が発売となる山口遼が徹底分析する。第1回では、大会前最後の実戦で優勝候補と激突した7月17日(土)のU-24スペイン戦で見えた「前進」に対する両チームの目的意識の違いとその背景に着目するとともに、U-24日本チームの攻守の完成度を分析する。

 様々な議論と混乱を呼びながらも、1年遅れの東京五輪開幕が間もなくに迫る中で行われたU-24日本代表のオリンピック前の最後の強化試合。相手は、今大会の優勝候補の1つと言ってもいいスペイン代表だった。メンバーに目を向けると、先日行われたEURO2020の決勝ラウンドでスタメンとして出場していた選手も散見される非常にクオリティの高い陣容になっている。五輪出場チームの中でクオリティ的には最高レベルと言っていいであろうスペイン相手に、自国開催のプレッシャーを背負う日本代表がどこまで通用するのか注目された一戦は終わってみれば1-1の痛み分け。最高とは言わずとも、一定の成果は得られたと言って良いように思える。そこで今回は、本大会に続く最終強化試合という観点からこの一戦を多角的に分析し、本大会への展望についても少し語ってみたいと思う。

親善試合で見えないもの、親善試合だからこそ見えるもの

 分析する上でまず留意しなければならないのは、この試合はあくまで親善試合であり公式戦ではないということだ。常に全力を尽くすことが美徳として慣例化している我われ日本人からするとピンと来にくいことかもしれないが、海外、特にスペインや南米のいわゆる「ラテン」の文化を持つ人々にとって、本番と練習はまったく異なるものである。もちろん地域差や個人差があるので一概に言える話ではない(例えば、バスクのアスレティック・ビルバオは日本人に近いメンタリティを持っている)し、あくまで傾向の話である。また、彼らとてトレーニングだからと手を抜いているわけではなく、むしろ本番になった時の興奮度、集中力の上がり方が尋常ではないという感覚の方が近い。

 そのため、あくまで親善試合であるこの試合の(メンタルも含めた)コンディション感は85〜95%がせいぜいであり、今回起きたすべての現象が本番でも同様に起きるわけではないということは念頭に入れておかなくてはならない。

 また、先ほどスペイン代表はEURO2020にも出場していたメンバーが複数いるためクオリティが高いと言ったが、逆に言えばEUROが終わった直後というこのタイミングは出場して疲労した選手個人としても、あるいはそれらの選手が直前に合流したばかりのチームとしても万全の状態ではないということも考えなければならない。この試合でも、18歳にしてスペインA代表の主力に登りつめたペドリが途中出場だったのは、明らかにコンディション面に配慮した起用の仕方だった。実際、彼はたった20分の出場にもかかわらずその圧倒的なクオリティを我われに見せつけた上に、スタメン出場していて明らかにコンディションが悪そうだったやはりA代表の主力クラスであるダニ・オルモとの共演があれば、その脅威はより大きくなっていただろう。

前半、ゴールに迫るダニ・オルモとクロスを間一髪でクリアする酒井宏樹

 とはいえ、完全なベストメンバーでなかったのは日本も同様で、おそらく本番では不動のスタメンであろう田中碧が今回ベンチスタートだったのは、コンディション面での配慮か板倉を試しておきたかったのかの意図は測りかねるものの強化試合だからこそできたことであるのは間違いない。それは、いまだ人選に迷いが見られる左のサイドハーフ(SH)と1トップの人選にも表れている。そのような意味で、これは日本とスペインどちらにとってもあくまで強化試合の1つであり、ここでの結果が本番での成功や失敗を予言するようなものではないということはあらかじめ断っておこう。

なぜスペインは効果的に前進できるのか?

……

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スペイン代表日本代表東京五輪

Profile

山口 遼

1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。twitter: @ryo14afd