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「ルート2014」の再現へ。[5-3-2]に活路を見出すオランダ代表

2021.06.09

【EURO2020カウントダウン企画】強豪国の戦力分析#6オランダ代表

6月11日に開幕するEURO2020。そのカウントダウン企画として、各国に精通するジャーナリストが強豪国の戦力分析&最新情報をお届けする。第6回は、ロナウド・クーマンが退任し、フランク・デ・ブールが指揮を執るオランダ代表。指揮官が決断したのは伝統の[4-3-3]ではなく、[5-3-2]の採用だった。

苦境のW杯で3位。[5-3-2]の成功体験

 昨年10月にオランダ代表監督に就任したフランク・デ・ブールは、ゼロトップ(デパイ)の[4-3-3]とターゲットマン(ルーク・デ・ヨンク)を置く[4-3-3]という2つのフォーメーションを主に採用していた。しかし、11月のイタリア戦だけは例外として[5-3-2]を使用。この試合は1-1の引き分けに終わったものの、「デ・ブールの采配したオランダ代表の中でベストゲーム」と言われている。オランダ代表はイタリア戦で成功したシステムを、EUROでの軸にしようとしている。

 [5-3-2]で思い出すのは、2014年のブラジルW杯で3位になった時のことだ。2014年3月、フランスに圧倒されて2-0で敗れたオランダは、主力MFストロートマンを負傷で欠く不運にも見舞われた。当時のルイ・ファン・ハール監督は「このままではW杯で強豪国と太刀打ちできない」と察し、オランダ代表の現状を下記のように整理した。

・今の陣容では、オランダがポゼッションを握ってゲームをコントロールしながら勝つのは不可能。
・オランダの守備陣は才能こそあるが、まだ頼りない。
・幸い、アタッカー陣にはロッベン、ファン・ペルシー、スナイダーといった個の力で違いを作れる世界的名手がいる。
・オランダ人の選手なら、[5-3-2]から[4-3-3]に戻すのは簡単。

 しかも当時は1カ月もの準備期間があった。ファン・ハールは合宿で5バックの連携やビルドアップを念入りに教え込んだ。W杯では初戦のスペイン戦を5-1で勝利するとチームスピリッツが高まり、メキシコ戦ではカイトが左ウイングバック→右SB→ストライカー→右SBとポリバレントな姿を見せ、コスタリカ戦ではGKシレセンをベンチに下げてクルルをPKストッパーとして送り込む策が成功。最終的には、23人の登録メンバー全員を使い切って3位入賞を果たした。

前回準優勝のオランダは初戦で王者スペインに雪辱を果たした勢いそのままに、下馬評を覆す3位に輝いた

 今回、フランク・デ・ブール監督は「ルート2014」のシステムである[5-3-2]をどのように捉えているのだろうか。……

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EURO2020オランダ代表戦術

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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