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ドハーティの移籍が古巣を潤す。2億円で練習施設の建設へ

2020.09.03

 今夏、トッテナムがウォルバーハンプトンからアイルランド代表DFマット・ドハーティ(28歳)を獲得したことで、ありがたい恩恵を受けるクラブがあるという。それが同選手の古巣であるアイルランドのクラブ、ボヘミアンズだ。

2億円はかなりの大金

 アイルランドの首都ダブリンで生まれたドハーティは2010年、18歳の時に地元のクラブからウルブズに引き抜かれた。その時の移籍金は7万5000ポンド(約1000万円)と安価だったが、ボヘミアンズはその際に「次回の移籍金の10%を受け取る」契約を織り交ぜていた。

 そのため10年後の今夏、トッテナムが支払った移籍金の10%がボヘミアンズに入ることになった。今回の移籍金は公表されていないが1500万ポンド(約20億円)と言われており、ボヘミアンズには2億円が舞い込む計算になる。

 アイルランド1部リーグに所属するボヘミアンズにとって、2億円はかなりの大金だ。

 昨季1部リーグで3位だったボヘミアンズは、今季のヨーロッパリーグ予備選(既に敗退)にも参加した国内の強豪クラブだ。しかし、潤沢な資金を有するイングランド・プレミアリーグ勢と比べてはいけない。彼らの2019年の平均観客動員数は2800人で、年間の収益は1億円程度なのだ。

 「今のサッカー界は、とんでもないほどの商業主義だからね」と、同クラブの幹部であるダニエル・ランバート氏は英紙『The Times』に語る。

 ボヘミアンズは会員の会費で運営されている「ソシオ制」のクラブだ。ソシオといえばスペインのバルセロナが有名だが、世界中に会員を抱えるバルセロナとは違い、ボヘミアンズの会員は750名程度。「我われのような会員制のクラブでは、役員報酬などもない。アマチュアクラブのようなものさ」とランバート氏は語る。

 だから今回の2億円についても、使い方を慎重に決める。1つの案は練習施設への投資だという。アイルランドの多くのクラブがそうであるように、彼らは練習施設を間借りする日々が続いている。

 「練習施設を所有していないと“クラブスピリット”を育むのが難しい。U-10世代の選手たちがファーストチームと同じ場所で練習できれば、クラブのアイデンティティも定着するはずだ」

正しい行動への“ご褒美”

 ボヘミアンズは過去に大きな負債を抱えたこともあるが、2015年に本拠地のスタジアムを地元自治体に売却して切り抜けた。今はスタジアムの改修計画も浮上しており、順調そうに見えるのだが、自立経営を念頭に置いて無理はしないという。

 「使い道は役員会で決めるが、ここ10年間そうしてきたように、長期的なことを視野に入れて経営維持できるような使い方をするだろう」

 今回の降って湧いたような2億円の収入は因果応報なのかもしれない。正しいことをしてきたクラブへのご褒美だとランバート氏は語る。

 「何よりクラブ会員のことを考えるとうれしくなる。この契約条項は1度きり有効だ。ドハーティが移籍金100万ポンド(1億4000万円)程度で移籍する可能性だってあったはずだ。クラブに携わる全員が努力してきたご褒美なのかもね」

 彼らのユニフォームを見ると、ランバート氏の主張も納得できる。今季、クラブのアウェイユニフォームの胸には企業名ではなく「難民、歓迎」の文字が入っている。難民を支援する非政府組織『アムネスティ・アイルランド』をサポートするためだ。

 そして、その背中には「Love Football, Hate Racism(フットボールを愛し、差別を憎む)」と記されているのだ。


Photo: Getty Images

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ウォルバーハンプトントッテナムドハーティ移籍

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。