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女子ワールドカップ事実上の決勝戦フランス対アメリカで見えたもの

2019.07.01

事実上の決勝戦、制したのは……

 女子ワールドカップ、「事実上の決勝戦」とも言われた、6月28日の準々決勝、フランス対アメリカ戦。

 自国開催での優勝を目標とするフランスと、大会2連覇を目指す優勝候補筆頭のアメリカの対戦ということで、会場となった首都パリのパルク・デ・プランスは、パリ・サンジェルマンの試合でもめったに見られない満員御礼。

 自国からはるばる応援に駆けつけたアメリカファンも大勢いて、試合前の会場周辺も、両国のファンたちによる熱い雰囲気に包まれた(両方とも国旗が赤・白・青ゆえに、いたるところこの3色だらけに……)。

 そして試合は、開始5分にアメリカがFKから得点し、早々にリードを奪う展開に。キッカーは、かつてリヨンに所属したこともあるミーガン・ラピノーだ。

 アメリカはこの1点リードのおかげで、気持ちにひとつ余裕のある状態で、落ち着いてその後のゲームをコントロール。後半はあとがないフランスがより積極的に攻撃をしかけ、アメリカはカウンターを狙っていく作戦をとったが、これもうまくはまって65分、右ウィングのトビン・ヒースからの絶妙な角度のパスをラピノーが的確に蹴り込んで追加点。

 フランスも81分、FKから長身のCBウェンディ・ルナールが得意のヘディングで1点を返したが、2-1でアメリカが逃げ切り、準決勝進出を決めた。

アメリカの2ゴールを挙げたFWミーガン・ラピノー

王者アメリカが見せた効率の良さ

 アメリカとフランスは、好対照、というほど、キャラクターの違うチームだ。

 アメリカは実に組織力がある。スペースの使い方、味方選手との間の取り方、特に誰かがボールを持ったときの連動は見事なまでに徹底されていて、仮にボールをロストしても、次のステップで奪い返せるような段取りが彼女たちの頭に完璧にインプットされている感じだ。

 対するフランスはフィジカルに強く、対人プレーを得意とする。ゴリゴリ攻め込んでいく突破力や推進力もある。ただしそれが発揮できるのは、自分たちのペースで、自分たちが主導権を持ってプレーできるときに限る。

 4月になでしこジャパンがフランスと対戦したとき(3-1でフランスが勝利)などは、まさにそんな得意プレーを十二分に発揮できた、彼女たちにとって真骨頂のゲーム展開だった。

 それゆえに、彼女たちに得意なプレーを出させず封じ込めたところに、アメリカのうまさがあった。

 スタッツを見ると、ボールポゼッションも、パス成功率も、フランスがアメリカを大きく上回っている。パスの総数などは1.5倍もの差がある。しかし逆にここに、“効率性の良さ=勝機”という数式が浮かび上がる。

 フランスのFWユージェニー・ル・ソメールは試合後、「そんなに苦しめられた場面もなかったし、けっこう前に仕掛けていけた。でも、ゴール前の30メートルまでは行けるのに、そこから先はうまくパスをつなぐことができなかった」と悔しがっていた。彼女の言う通り、特に後半戦は、フランスのほうがはるかに攻め込んでいたし、シュートも打っていた。

 そこで以前、男子のDFに聞いたこんな話を思い出した。

 「自分たちとしては、究極的には、ゴールさえ入れられなければ仕事としてはOK。いくらボールを持たれてゴール前に攻め込まれても、シュートさえ打たせなければいいのであって、仮に打たれても、入らないように打たせれば良い」

 終盤、アメリカは5バックにスイッチしてディフェンスを強化した。

 81分にルナールに1点を返された後の残り10分ほどはさすがに必死な様子もあったが、相手にボールを持たれているときでも、アメリカはしっかり状況をコントロールできていて、むしろボールを持っているフランスの方が逼迫している印象を受けた。

 対してアメリカ側の攻撃といえば、後半はシュートらしいシュートでパッと思い出せるのは2本しかないのだが、そのうち1本はラピノーが決めた2点目のゴール、もうひとつはオフサイドだったとして取り消されたヒースのシュートと、2本ともネットに入っている。つまり、シュート数は少なくても、決定力が高いのだ。

 この試合展開には、開始5分の先制点も相当効いていた。

 ホスト国として決勝戦に到達することは、フランスの選手たちにとって“命題”であったから、プレッシャーもあったはず。
そこで開始早々、よりによってアメリカという強豪国相手に劣勢に立たされたのだから、気持ち的にもかなり厳しかったことだろう。

「開始早々の失点以外、後悔はひとつもない」

惜しくも開催国優勝は果たせなかったフランス代表

 また、フランスの主力の大半を占めるリヨンの選手が、チャンピオンズリーグ決勝に残り、5月18日まで長いシーズンを戦った、その心身の疲労も、フランスにとっては痛いポイントではあった。その頃にはアメリカチームはすでに数週間の合宿を行っていたというから、チーム作りにかけられた時間や選手のコンディションにも差はあった。

 フランスのコリーヌ・ディアクル監督は、「アメリカが5バックにスイッチした試合などこれまで見たことはありません。これだけでも私たちのプレーが脅威だったということを象徴している。序盤早々に失点してしまったこと以外、後悔はひとつもありません。私たちはできることすべてをやり尽くしました」と、なにかこう、突き抜けた感じで話していた。

2017年のユーロ後に着任したディアクル監督に与えられた使命は「決勝戦進出」だったが、この後も続投することを、連盟のノエル・ル・グラエ会長は明言している。

 昨年の男子に続け! と、国民は予想以上に今回の『Les Bleues(レ・ブルーズ)』の挑戦に注目し、オープニングの韓国戦は、女子の試合ではこれまで最高の1000万人以上のテレビ視聴者数を記録した。

 残念ながら、この敗退で来年の東京オリンピック出場のチャンスもなくなってしまった。これまで主力としてチームを引っ張ってきたキャプテン、アマンディーヌ・アンリやル・ソメールたちもそろそろキャリアの終盤にさしかかっている。

 フランス代表にとっては、ここからどう立て直すかが、正念場だ。


Photos: Getty Images

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アメリカ女子代表フランス女子代表戦術

Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。