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バイエルンの「帝王学」を継ぐ者。敏腕経営者に転身したカーン

2019.06.19

ドイツの“巨人”は敏腕経営者に

 「オリバー・カーンがハーバードを卒業した」。6月3日の『ビルト』紙が、元ドイツ代表の英雄“ティターン(巨人)”ことカーンがハーバード大学で経営学のコースを修了したことを報じている。

 ドイツ代表とバイエルン・ミュンヘンで数々のタイトルを獲得したカーンは、引退後はオーストリアのゼーブルク大学でMBAを取得し、自身の会社『Goalplay』(ゴールプレイ) を経営している。この会社は、カーンが信頼するGKコーチたちを、契約した選手やチーム、サッカー連盟に派遣し、コーチングを行うサービスを行っている。

 スポンサーとして韓国大手のサムスンと契約し、自身が出演する分析番組をコンテンツとして配信することで資金調達を行うなど手腕を発揮している。2018年のロシアワールドカップ前には、サウジアラビア代表がこのサービスを契約し、話題を集めた。

 現在では、レアル・マドリーのサッカースクールと提携しながらGKに特化したコースを運営している。まさに、自身の選手時代に作り上げた“ブランド”を最大限に活かしたビジネスを国際的に展開している敏腕経営者としての顔を見せている。

 今回カーンが訪れたコースは、ハーバード大学の「The Business of Entertainment, Media, and Sports(BEMS)」という、スポーツやメディアのエンターテインメント産業の経営に関するコースだ。わずか1日のプログラムで1万ドル(約108万円)という高額のコースだけあって、元オーストラリア代表のティム・ケイヒルやNBAのジュリアス・ランドル、アメリカ合衆国のスターシンガーであるシアラなどの著名人たちと充実した時間を過ごしたようだ。

バイエルンの伝統。トップ選手からトップマネージャーへ

 バイエルンの会長を務めるウリ・ヘーネスは、1970年代には“皇帝”フランツ・ベッケンバウアーらとともにバイエルンとドイツ代表の一時代を築いたアタッカーだ。ケガで若くして引退した後、米国のプロスポーツのやり方を参考にしながら、当時ドイツのサッカー界に存在しなかった「マネージャー」として現在のバイエルンの圧倒的な人気の基礎を築いた。

 CEOを務めるカール・ハインツ・ルンメニゲは、『キャプテン翼』のシュナイダーくんのモデルであったように、80年代ヨーロッパのトップストライカーとして名を馳せた後、引退後はバイエルンの成功を支え続けている。カーンは、この2人が作り上げた“バイエルンDNA”を継ぐ後継者として、2021年のCEO就任を有力視されているのだ。

バイエルンのヘーネス会長(左)とルンメニゲCEO(右)はいずれもクラブOBの元選手

 ルンメニゲCEOは、6月12日の『シュポルト・ビルト』誌のインタビューの中で「オリバーは、これまでも素晴らしい航路を辿ってきたバイエルン・ミュンヘンという名の船の船長として、素晴らしい成功を収めるでしょう」と話しており、その能力に期待を寄せている。

 ルンメニゲCEOは、自身の引退を前に、カーンとともにオンボーディングによる共同作業を行い、直接指導をしながらカーンがすぐに新しい役職に馴染めるための準備を進める意向だという。「重要なのは、我々がお互いに了解し合いながらプロセスを進めていくことだ」と、協力体制を築くことを示唆している。

 バイエルンの伝統を引き継ぐカーンは、ルンメニゲ、ヘーネスの両者からクラブ経営の“帝王学”を学び、万全な状態でバイエルンの栄光を引き継ぐことになるだろう。

Photos : Bongarts/Getty Images

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オリバー・カーンバイエルンビジネス

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。