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セルティックでブレイク中のオライリー、無所属時代を経てデンマーク代表に上り詰める

2023.10.23

 スコットランドのセルティックで日本代表FW古橋亨梧やMF旗手怜央のチームメイトとして活躍するMFマット・オライリー(22歳)が、とうとう無所属からデンマーク代表まで上り詰めた。

守備の責任を担い攻撃力がアップ

 オライリーはイングランドで生まれ、ロンドンのフラムでキャリアをスタートさせた。だが2020年夏、19歳の時に出場機会を求めてフルアムとの契約更新を拒否し、チームを飛び出して半年ほど無所属の身となって父親と自主練習の日々を送った。

 その後、イングランド3部のMKドンズで結果を残し、2022年1月にセルティックに引き抜かれると、さらに飛躍を遂げてチームには欠かせないセントラルMFに成長した。過去にはU-18イングランド代表でプレーした経験を持つが、母方の家系が北欧出身のため、デンマークでプレーすることを選択。U-21代表で活躍し、昨年のFIFAワールドカップでもA代表入りが噂されたが声はかからなかった。

 それでもオライリーは腐ることなくセルティックで必死にプレーを続けた。そしてアンジェ・ポステコグルー前監督の後任として今季からチームを率いるブレンダン・ロジャーズ監督の下、覚醒を遂げたのだ。今オフにはイングランド2部のリーズからオファーがあったものの、ロジャーズ監督が彼を手放さなかった。そして指揮官は「守備は最高の攻撃手段。ボールを奪えば攻撃機会が増える」として同選手に守備の責任を求めた。それが驚くべき結果をもたらした。

 オライリー本人は自身の役割について、ポステコグルー政権から「大きくは変わっていない」と語るが、「ボックス内でのプレー」が増えたという。監督の指示通り、しっかりと自陣ボックス内まで下がって守備をする。その後で「相手のボックス内に入って違いを生み出す」というのだ。「役割はあまり変わっていないけど、以前よりも前に出ることを許されているし、そのうえで守備の責任も増しているのさ」と説明する。

 違いを生み出せる“ボックス・トゥ・ボックス”の完成である。今季のスコティッシュ・プレミアシップでは開幕9試合を終えた時点で6ゴールを決め、中盤の選手ながら得点ランク首位に立っている。「私が率いてきたチームには、常にボールを運んでたくさんゴールを奪うNo.8がいた」とリヴァプール時代にイングランドの英雄であるスティーブン・ジェラードを指導したロジャーズ監督は胸を張る。

本人の努力でさらに成長を遂げる

 もちろん本人の努力による部分が大きい。「食生活と睡眠だけは意識する」というオライリーは、昨季から「炭水化物と野菜の摂取量を調整して間食も減らした」とスコットランドのメディアに明かした。合わなければ変えればいいというスタンスで始めた取り組みが見事にはまったそうで「昨季よりも動けるし、力もついた。走り勝つことができる」とオライリーは手応えを感じている。事実、今季ここまでの6得点のうち5つは試合後半に決めたもの。9月のマザーウェル戦では後半追加タイム9分に決勝点を決めてみせた。

 その活躍が認められ、先月末には契約を4年間延長。そして今月、ようやくデンマーク代表から声がかかったのだが、合流する際には“変装”を余儀なくされたという。

 当初、EURO 2024予選の2試合を戦う代表メンバーから漏れていたオライリーは、マジョルカで休暇を過ごしていたが、離脱選手の代わりに追加招集されることになり、連絡を受けてすぐにホテルをチェックアウトとして8時間でデンマークに駆け付けた。まずは10月14日のカザフスタン戦をスタンド観戦することになったが、追加招集が正式に発表されていなかったため、オライリーはどうしていいか分からずに「帽子とフード」をかぶって変装したという。

 その後、正式に代表チームに合流。出場機会こそなかったが「みんなが歓迎してくれたので馴染みやすかった」と初招集に歓喜したオライリーは、セルティックで活躍を続けながら来夏のEURO 2024出場を目指す。


Photo: Getty Images

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アンジェ・ポステコグルーセルティックデンマーク代表ブレンダン・ロジャースマット・オライリー

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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