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滑り込みでのW杯出場を目指すセルティックのU-21デンマーク代表

2022.10.04

 スコットランドのセルティックには、まだA代表デビューを果たしていないにもかかわらず、ワールドカップメンバーに滑り込めそうな選手がいる。それがU-21デンマーク代表のMFマット・オライリー(21歳)だ。

U-21代表でアピール成功

 イングランド生まれのオライリーは、ロンドンのフルアムの下部組織出身。その後、イングランド3部のMKドンズを経て、2022年1月にセルティックに加入した。過去にはU-18イングランド代表でプレーした経験を持つが、母方の家系が北欧出身のため、デンマークやノルウェーでプレーする権利もあり、U-21代表はデンマークを選択。今年3月にU-21デンマーク代表デビューを果たした。

 そのオライリーが、11月に開幕するワールドカップでデンマーク代表メンバーに入る可能性がある。間に合わないかもしれないが、オライリーは最後までアピールし続けるつもりだ。

 今季のセルティックではインサイドハーフとしてリーグ戦の全試合に出場しており、9月の宿敵レンジャーズ戦での2アシストなど、ここまでチームメイトのFWジョタと並びリーグ最多の5アシストを記録している。さらにU-21デンマーク代表として出場した9月のクロアチア戦では、U-21欧州選手権のプレーオフをかけた戦いにはPK戦の末に敗れたが、2試合で1ゴールを決めてしっかりとアピールした。

 9月の代表戦でA代表に抜擢されるという噂もあったが、デンマークのカスパー・ヒュルマンド代表監督は「選手を試す時期ではない」と前置きした上で「オライリーの場合、U-21代表チームで好プレーをする方がW杯メンバー入りへの近道になるはずだ」と語っていた。

 オライリー本人もW杯メンバー入りに少し手応えを感じ始めているかもしれない。「W杯メンバー入りに向けて、害はなかったはず」と、英紙『The Times』でU-21代表の試合を振り返っている。

 「クラブに戻る前にU-21代表監督と話したんだ。監督は『A代表まで近づいているので、このままアピールを続けるんだ』と言ってくれた。だからチャンスはあると思う。あとはセルティックでベストを尽くし、どうなるか様子を見るほかない。UEFAチャンピオンズリーグにも出ているのでチャンスはあるはずだ。少なくとも1年前よりは近づいているよ」

2年前は無所属だった

 確かに1年前よりは大幅に近づいている。1年前の今頃、オライリーはW杯とは無縁のイングランド3部リーグでプレーしていたのだ。さらにもう1年遡ると、オライリーはW杯など考えることもできない状況にあった。彼はフルアムでキャリアをスタートさせるも、2020年夏に契約が満了して退団。それからMKドンズに加入するまでの半年間、どこにも所属せず、父親やパーソナルトレーナーとともに自主練習に明け暮れていたのだ。

 それでもMKドンズに入ってイングランド3部で活躍を始めると、今年1月にセルティックに引き抜かれてさらなる成長を遂げた。今ではニューカッスルといったプレミアリーグのクラブが熱視線を送る選手となったのだ。しかし、セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督によると、同選手が浮かれることはないという。

 「彼は確かに急成長を遂げた」とポステコグルー監督。「でも、1年前はイングランドの3部リーグでプレーしていた。だから彼はフットボールの裏と表を理解している。その少し前には、父親やパーソナルトレーナーと自主練習をしていたしね。だから彼は噂話を気にしないはずだ。選手が足を踏む外す時は、何もかもが上手くいっている時だ。でも、どんな一流の選手も挫折を味わうし、マットは既にそれを経験しているからね」

 彼が浮かれない理由は、これまでの経験もそうだが、チームの環境にもあるはずだ。スコットランドでリーグ連覇を目指すセルティックは、「珍しいほど」チームの雰囲気が良いという。オライリー自身も「このチームには“腐った卵”が1人もいないんだ。それは意外と珍しいことだと思う。ちょっと人間性に問題がある選手は、控え室の毒となりかねないからね。このチームには様々な個性がある。それでいて、珍しいくらいに一体感があるんだ」とチームの雰囲気を絶賛している。

 このままセルティックでアピールを続ければ、2年前に無所属だった選手が、本当にW杯メンバーに滑り込むかもしれない。


Photo: Getty Images

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アンジェ・ポステコグルーセルティックデンマーク代表マット・オライリー

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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