
在籍3年半で公式戦165試合85ゴール19アシスト、計8タイトル獲得に貢献したセルティックを離れ、移籍金1200万ユーロ(約19億2000万円)でレンヌと2年半契約。加入後5試合で出場2試合という厳しい現状にも、本人はいたって前向きだ。「ここで選手としてどこまでできるのか」――30歳で異なる環境に飛び込んだストライカーの「新しいチャレンジ」は、始まったばかりである。
「僕もきっかけがあればまた上に行けると思っている」
この冬のメルカートで、スコティッシュ・プレミアシップのセルティックからリーグ1のスタッド・レンヌに移籍した古橋亨梧。
2月2日の第20節ストラスブール戦(○1-0)で先発し、リーグ1デビューを飾った後は、次のサンテティエンヌ戦(○0-2)はベンチ入りするも出場はなし。続くリール戦(●0-2)は73分から出場。そして伊東純也らとの日本人対決となったスタッド・ランス戦(○1-0)、モンペリエ戦(○0-4)と、メンバー入りはしたが出場せず、ここまではプレー機会に恵まれない試合が続いている。
彼に期待していたと言われるホルヘ・サンパオリ監督が、昨年11月の就任後わずか10試合を率いたのみで、古橋加入のタイミングで電撃解任となったのは予想外の出来事だったと思う。
サンパオリ体制が続いていたらもっと出番があったかも……とも思うが、タラレバを言っても仕方がないのがこの世界。選手自身が一番そのあたりの切り替えは早い。
後任に就いた元セネガル代表のハビブ・ベイェ監督は、アルノー・カリムエンド中心の攻撃スタイルを気に入っているようで、パリ・サンジェルマンのアカデミー出身の23歳は、新監督着任後の5試合で3ゴールと絶好調。ゆえに当分はこのパターンを変えることはないだろうが、すでにリーグ得点王、年間MVPなど個人賞を総ナメにし、クラブでも多くのトロフィーを勝ち取ったスコットランドではやり尽くした感もある古橋にとっては、自分が絶対的な選手ではない、という環境の中でどう自分をアピールしていくか、その挑戦こそ望んでいたことだ。
スタッド・ランス戦後、取材エリアで記者たちの質問に応じてくれた古橋は、「今ここで新しい挑戦をしているという手ごたえを感じている?」という問いに対して、「今そうかなと思いますね」と即答した。
「(セルティックで)3年半という素晴らしい幸せな時間を過ごさせてもらい、常にプレーさせてもらえる機会があった中で、 新しい環境で新しいチャレンジを始めて、なかなか今は出られない状況ですけど、でもそれが本当にまた一人の選手として成長できるチャンスだと思っています。本当にいいリーグですし。
今は下の方で苦しい戦いをしているチームではあるかもしれないですけど、きっかけがあればこうやって4試合中3勝して(第20〜23節)、ここから上に行けるチームだと思うので、その中で僕もきっかけがあればまた上に行けると思っている。自分としては試合に出られると思っているので、そのチャンスを次はつかむために練習から頑張っているところです!」
そう話してくれた古橋の表情は明るかった。
「10回走って1回出てくればいい」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。