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MVPはジルー? 息をのませる日本代表…英紙が独自のアウォードでW杯を振り返る

2022.12.22

 アルゼンチンの36年ぶりの優勝とリオネル・メッシの悲願の戴冠で幕を閉じたFIFAワールドカップ。英紙『The Guardian』が、独自のアウォードで大会を振り返っているので紹介しよう。

MVPはメッシに票が集中する中…

 まずは「ベストゲーム賞」だが、満場一致でファイナルが選ばれるかと思いきや、そこに割って入ったのは日本の番狂わせだった。

 16名の記者のうち、12名がPK戦までもつれる死闘となったアルゼンチンvsフランスの決勝戦を選んだ。「心臓がドキドキしすぎて頭が痛くなった」と記者の1人が振り返るほど、今大会の決勝戦は歴史に残る激闘だった。“過去最高の決勝戦”とも称えられた名勝負について「オペラのようなドラマに満ちた魅惑的なゲーム」と称賛する記者もいた。だが4名の記者は、決勝戦を称えつつ他の試合を選出した。

 終了間際にオランダが追いついてPK戦決着となった準々決勝オランダvsアルゼンチン戦や、グループステージのセルビアvsスイス、ポーランドvsサウジアラビアといった試合に票が入った。そんな中、ポール・マッキネス記者は自身が実際にスタジアムで見た試合の中から選ぶことに。「雰囲気が増す夜の試合で、5分間の極限状態のフットボールでサムライ・ブルーが優美で洗練されたスペインをひっくり返した」と振り返り、日本vsスペインをベストゲームに選出した。

日本が逆転勝利を挙げたスペイン戦をベストゲームに選出する記者もいた

 「大会最優秀選手賞」は、16名の記者うち13名の意見が一致した。もちろん、彼らが選んだのは36年ぶりにアルゼンチンを頂点に導いたリオネル・メッシである。メッシ以外には考えられないとして「なんて馬鹿げた質問なんだ!」と企画自体を否定する記者もいれば、「スポーツ界で語り継がれるおとぎ話にして伝説。ロサリオ出身の少年が、35歳になっても、まるでロサリオの少年のようにプレーした」と、悲願のW杯制覇を成し遂げたメッシに惜しみない賛辞を送る記者もいた。

 そんな中で、こんな批評を残した記者もいる。「この年齢になって、これほど見事に周囲を驚かせてくれた選手がいただろうか。彼ほど強い思いを示した選手がいただろうか。今大会は色々な意味で“オリビエ・ジルーの大会”だった」と、メッシかと思いきや36歳のジルーを選んだのだ。

 冗談にも聞こえるが、ケガでメンバー外となったFWカリム・ベンゼマの穴を埋めて得点ランク3位の大活躍を見せたジルーは確かに今大会の主役の1人だった。一方で、アフリカ史上初のベスト4進出に大きく貢献したモロッコのMFソフィアン・アムラバトを選ぶ記者もいた。

「ベストゴール」候補は多数

 「大会ベストゴール賞」は意見が割れた。キリアン・ムバッペの決勝戦でのボレーシュートが票を集める中、ブラジル代表FWリシャルリソンも高い人気を誇った。彼の場合はグループステージのセルビア戦でのオーバーヘッドキックと、ラウンド16の韓国戦での完璧な崩しの得点という2つのゴールが候補に入った。同じぐらい票を集めたのはオランダ代表のボウト・ベグホルストだ。準々決勝アルゼンチン戦の終了間際、世界中のサッカーファンを騙すFKからのサインプレーで同点ゴールを決めてみせた。

 「個人的な思い出」部門では日本代表が人気だった。それぞれ大会の思い出を振り返った16名の記者のうち、2名が日本の試合について触れたのだ。ある記者は、カタール国民がW杯にあまり興味を示さなかったために通常のW杯の雰囲気ではなかったことを指摘。そして「レストランの大型スクリーンでスペインvs日本の試合を見ている時に、最高にドラマチックな展開になったところで地元民がスクリーンの前で立ち話を始めた」といったエピソードを紹介した。

 また、ある記者は「自身の担当ゲームではない方が心から楽しめる」として、一番の思い出にグループEの最終節を挙げた。「その日の仕事を終え、スペインvs日本とドイツvsコスタリカを現地のメディアセンターで観戦したが、もの凄い雰囲気だった」と、日本中が歓喜した瞬間を選出した。

 今回のW杯は“メッシの大会”であり、ムバッペが世界中を魅了し、モロッコ代表が大旋風を巻き起こした大会だ。そして、間違いなく日本代表が世界中のサッカーファンの心に足跡を残した大会でもあった。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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