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0得点0アシスト…プレミア屈指のドリブラーに何が起きているのか?

2021.12.23

 プレミアリーグで最もインパクトのある選手の1人といえば、ウォルバーハンプトンのスペイン代表ウインガー、アダマ・トラオレ(25歳)だろう。

 「彼はモーターバイクだ!」とペップ・グアルディオラに言わしめた圧倒的なスピード。そしてプロレスラーを彷彿とさせるような太い腕。ウルブズの試合を見た観客は、家に帰れば必ずと言っていいほど友人や家族に彼の話をするはずだ。それくらい、一度見たら忘れることのできない印象的な選手である。

 バルセロナ下部組織出身のトラオレは、2019-20シーズンからプレミアリーグで最多のドリブル成功数を誇る世界屈指のドリブラーだ。今季もドリブル突破数は、ニューカッスルのアラン・サン・マクシマンを抑えて堂々の1位。しかし今季のプレミアリーグでは、17試合に出場しながら得点やアシストが1つもないのだ。

 これまでも決してゴール数が多い選手ではなかったが、それにしても今季の不発は少し気になる。その点について『BBC』が同選手の分析を掲載しているので紹介しよう。

指揮官にも要因ありか

 トラオレは2019-20シーズンのプレミアリーグで4得点9アシスト。そのうち3ゴールをペップのマンチェスター・シティから奪って注目を集めた。しかし、彼は昔から非凡な身体能力と個人技を持ちながら、ラストパスやフィニッシュの精度には難があった。昨季も2得点2アシストの数字を残しているが、シーズン前半は不発だった。

 プレミアリーグでの通算成績は157試合で7ゴール14アシスト。毎年のように彼とドリブル数を競い合っているクリスタルパレスのウィルフレッド・ザハ(261試合52ゴール27アシスト)と比較するともの足りない。

 2トップの一角でスタメン出場した今月11日のシティ戦でも、67分までプレーしてボールタッチ数はGKジョゼ・サの半分以下だったという。そのため、今季からウルブズを率いるブルーノ・ラージ監督は、トラオレを先発から外す機会が増えている。

 『BBC』によると、トラオレの不振は指揮官にも原因があるそうだ。ラージ政権のウルブズは攻守のバランスが整っており、今季ここまで18試合で13得点14失点の勝ち点25で8位と健闘している。しかし、トラオレが大活躍した2019-20シーズン、ウルブズはヌーノ・エスピリト・サント前監督の下、開幕18試合で27ポイントを稼ぎ、今季の倍となる26ゴール(22失点)も決めていたのだ。

 確かにトラオレのようなドリブラーはサッカー界でも滅多に見ない“珍種”であり、同選手に対する評価は割れやすい。稀代のチャンスメイカーにも見えれば、リスクの高い選手にも見えるのだ。トラオレ本人はヌーノ前監督について「ウイングバックをやらされた時でさえ100%信頼していた」と語ったことがある。一方でラージ監督は「ボールを持てば特別なことを生み出せるが、ボールがない時も頑張ってほしい」と、トラオレに攻撃力よりも献身性を求めているのだ。

リバプールなどが興味か

 トラオレの不振は“相方”の影響とも考えられる。2019-20シーズンのトラオレは、メキシコ代表FWラウル・ヒメネスと抜群のコンビを形成した。ヒメネスの17ゴールのうち、7ゴールはトラオレのアシストによるものだったという。

 だが、ヒメネスは2020年11月に頭蓋骨骨折という大ケガを負って長期離脱を強いられ、今季ようやく復帰したところ。トラオレからすれば、昨季途中に相方を失い、シーズン終了後には信頼する監督まで失ったことになる。

 では、トラオレにはウルブズでの未来がないのか? 2年前は移籍金7000万ポンド(100億円)とも噂された選手だが、あれから評価額はだいぶ下がったことだろう。ウルブズとの契約も残り1年半となり、そろそろ移籍を考える時期なのかもしれない。

 「2年前は7000万ポンドと言われたが、今なら3000万ポンドでもウルブズファンは喜んで彼を売却するよ」と、ウルブズサポーターの1人は『BBC』に話す。一方で、他のサポーターは「売りたくない。シーズン後半に奮起するかもしれないので、とりあえずチームに残すだけの価値はある」と主張する。

 トラオレについてはリバプールなどが興味を示しているそうだが、半年待てば移籍金が再び倍に跳ね上がる可能性だってある。そう考えると、今が買い時の選手なのかもしれない。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。