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アダマ・トラオレ、絶賛ブレイク中。最速ドリブラーを作るレシピとは?

2019.12.16

 「プレミアリーグ最速」の呼び声高いウォルバーハンプトンのアダマ・トラオレ(23歳)。10月のマンチェスター・シティ戦では2得点の大暴れで大金星に貢献すると、11月にはケガで辞退したとはいえスペイン代表に初選出された。そんな彼のブレイクのきっかけは、ある監督との出会いだったという。

期待とは裏腹に不遇の時を過ごす

 マリ人の両親の下、スペインで生まれ育ったトラオレは、バルセロナのカンテラで腕を磨いた。そして2015年に海を渡ってイングランドのアストン・ビラに鳴り物入りで加入。当時の監督であるティム・シャーウッドも「メッシとロナウドをちょっとずつ合わせた感じ」と大いに期待した。だが、19歳のウインガーは、ビラでは一度もプレミアリーグで先発起用されず、チームも降格の憂き目に遭うのだった。

 不遇の1年を過ごしたトラオレは、すぐにクラブを離れて元レアル・マドリーのアイトール・カランカが指揮していたミドルズブラの門を叩いた。そこで覚醒するわけだが、最終的なきっかけを作ったのはカランカではなく、スペインの2強とも、はたまたメッシやロナウドとも無縁の指導者だったという。それが2017-18シーズンにボロを率いたトニー・ピュリス、その人である。

 ピュリスといえば元ストークの名物監督で、フィジカルを前面に押し出したロングボール主体のサッカーで名を馳せた武骨なウェールズ人だ。そんな監督がどうやってドリブラーの才能を引き出したというのか?

指揮官との信頼関係が彼を急成長させた

 スポーツ情報メディア『The Athletic』によると、ピュリスはまず、ベンチに近い方のウイングでトラオレを起用したという。そしてテクニカルエリアから常に声をかけ続けた。ドリブルやパスのタイミング、そしてポジション取りまで、あらゆる指示を送ったという。後半には左右のウイングを入れ替え、再びトラオレを声が届くところに置いたそうだ。

 「彼は自信と監督への信頼を少し失っていただけだ」とピュリス。「ミスをするたびに、彼は怒られないかと監督の顔色をうかがっていた。まるで暴力に怯える猫のようだった。そこを改善させる必要があったのさ」

 無論、ピュリスもトラオレに向かって叫んでいた。だが、2人の間には今でも連絡を取り合うほどの信頼関係が築かれているという。「私も叫んでいたよ。『アダマ、アダマ』ってね。ある日など『アダマ!』と叫んで夜中に目が覚めたことがある(笑)。アダマが男性の名前で良かったよ。女性だったら妻に殺されていたね!」

 結局、トラオレはピュリスの元でプレーした17-18シーズンには2部リーグで最多となる243回のドリブル突破を記録した。2番目の選手より108回も多い数字だ。それどころか、リーグが違うとはいえメッシ(185回)より58回も多かった。その活躍によって昨年夏にウルブズに引き抜かれ、プレミア屈指のドリブラーへと進化を遂げたのだ。

 そう考えると、マリの身体能力を持つ若者にバルセロナの教育を施し、少しの挫折で風味付けした後に、ウェールズ人のメンタリティを添える。これが最速ドリブラーを作り出す“黄金のレシピ”なのかもしれない。


Photo: Getty Images

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アダマ・トラオレウォルバーハンプトン

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。