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「ウンチが付いた靴は……」。試合後の会見で飛び出したフットボールの名言

2021.10.28

 フットボールというスポーツは、人生の教訓となるような格言や表現を教えてくれる。先日、ブンデスリーガの試合後の会見でも、興味深いやり取りがあった。

教会を村に残す?

 先週末、ブンデスリーガで今季の解任第一号が生まれてしまった。ボルフスブルクを率いていた元オランダ代表MFマルク・ファン・ボメル(44歳)である。今季からチームを率いていたファン・ボメルは、開幕4連勝スタートで一時はブンデスリーガの首位にも立ったが、そこから大スランプに陥った。

 10月23日にはホームでフライブルクに敗れて公式戦4連敗。さらに8試合も勝利から遠ざかったことで、試合の翌日に解任の憂き目に遭った。そのフライブルク戦の試合後の会見で、こんなやり取りがあったのだ。

 試合後にホームサポーターから「ファン・ボメルの退任」を求めるチャントがあったようで、記者がその質問をぶつけると、翌日に解任されることを知らない指揮官は「今ここで初めてその話を聞いた。ファンは常に勝利を求めるものだからね」と暗い表情で答えた。

 そんな指揮官に助け舟を出したのが、会見に同席していたフライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督だった。ちょうど一回り先輩の監督は「ひとこと言わせてくれ」と語り始めた。「観客は1万200人だったが、敗戦後なのでスタジアムは静まり返っていた。そんな中で4~5人が叫んだのかもしれないが、それはチャントではない。いずれにせよ、私にも聞こえなかった。教会は村に残しておいてくれ」

 2011年に監督に就任してからフライブルクで長期政権を築くシュトライヒは、窮地に立たされた敵将を放っておけなかったのである。会見に両チームの監督が同席するブンデスリーガらしい素敵な光景に思えたが、ドイツ語に明るくない筆者は「die Kirche im Dorf lassen(教会を村の中に残す)」で引っかかってしまった。

 実は、これはドイツ語の言い回しで「大袈裟にするな」という意味があるそうだ。その昔、キリスト教徒が列をなして村中を歩き回る風習があったそうで、その行列が村をはみ出して他の村にまで及んでしまうことから「やりすぎ」「大袈裟」という意味で使われるようになったそうだ。

ブレーメの名言を引用

 だが、それ以上に気になる発言があった。『kicker』によると、どうしてもうまくいかないファン・ボメル監督はチームの不運を嘆いたそうだ。勝てていない最近8試合は一度も複数得点がなく「今はゴールにつながる運がない」と口にした。そして最後に、なかなか好転しない現状について「靴にウンチが付いていれば、ウンチが付いているのさ」と付け加えたのだ。

 何となく意味は伝わるが、これもドイツの言い回しだという。それも、1990年のワールドカップ決勝戦で試合唯一のゴールを決めて西ドイツ代表を頂点に導いたアンドレアス・ブレーメの名言だというのだ。

 バイエルンやインテルなどで活躍したブレーメだが、彼が最も長く在籍したのはカイザースラウテルンだった。そのカイザースラウテルンは、1996年にDFBポカールを制するも、同一シーズンにクラブ史上初めてブンデスリーガ2部への降格の憂き目にあった。その際にブレーメは「靴にウンチが付いていれば、ウンチが付いている」と失意を表現した。

 「ウンチが付いている靴は、どんなに素敵な靴でも、ウンチの付いている靴なんだ」といったニュアンスなのだろう。そして今回はファン・ボメルが、その名言を引用してボルフスブルクの現状を説明したのである。

 英雄が名言を生み、それが語り継がれていく。そういうことをフットボール文化と呼ぶのかもしれない。


Photo: Getty Images

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アンドレアス・ブレーメクリスティアン・シュトライヒファン・ボメルボルフスブルク文化

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。