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政治的意見が嫌われるどころか待望されるサッカー監督。育成の雄フライブルクを率いる名将シュトライヒの“もう一つの顔”

2021.02.01

日本では、選手をはじめスポーツの現場にいる人物が政治的信条や意見を口にすることはいまだ敬遠されていたり、マイナスイメージを持つ人が少なからずいるのが現状ではないだろうか。それに比べれば、海外ではアスリートがインタビュー等で政治的意見を述べることは決して珍しいことではない。それどころかドイツには、政治的なテーマへの見解が待望されているサッカー監督がいる。フライブルクを率いるクリスティアン・シュトライヒだ。育成クラブを率いる名将の、意外な一面を知ってもらいたい。

 昨年夏、かの『ニューヨーク・タイムズ』の記者が、クリスティアン・シュトライヒ監督とのインタビューのためにフライブルクを訪れた。その後まもなく同紙に掲載されたのは、ワクワクさせられるポートレートだった。その中でシュトライヒは「黒い森の哲学者」とか、「ブンデスリーガの社会的良心」と呼ばれている。

 25年来フライブルクで仕事をするシュトライヒは、1980年代に現ドイツ代表監督レーブ、バイエルンのレロイ・サネの父スレイマン・サネとともにプレーした。トップチームの監督に就任してから9年半。1度降格を経験している一方でEL出場権を2度獲得している。そんな彼が特別なのは、サッカーに限らず世界情勢についても非常に多くの聡明な見識を持ち合わせていることである。「彼が記者会見で語ることを集めれば、図らずしも基調講演、または心を動かす人道主義のマニフェストができてしまう」と『エルフ・フロインデ』が評するように。……

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クリスティアン・シュトライヒフライブルク政治

Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。

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