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鹿島で活躍したジョルジーニョ監督、クイアバーを変貌させた手法とは

2021.10.05

 元ブラジル代表、鹿島アントラーズでもプレーし、監督を務めたこともあるジョルジーニョが、今季半ばの7月から指揮を執っているクイアバーEC。クラブ史で初めてブラジル全国選手権1部を戦っているこのクラブが、彼の監督就任から始まった躍進で注目を集めている。

降格圏のクラブが急浮上

 就任会見で、ジョルジーニョは「非常に良く組織されたクラブ。2001年創立というまだ若いクラブの歴史において、その急成長ぶりは印象的だ」と語っていた。

 しかし、彼が就任する前は1勝も挙げることができず、全20チーム中下位4チームの2部降格圏であえいでいたのだ。ジョルジーニョに託された使命も“1部残留”だったが、それすら簡単ではないだろうと予想されていた。

 それが、チームは彼の指揮の下で、ここまで16試合を戦い6勝7分3敗。10月3日の時点で11位につけている。

 その状況から、サポーターは来季のコパ・スダメリカーナ参戦(上位7位〜12位が出場枠を獲得)はもちろん、一時は7位まで順位を上げたことから、コパ・リベルタドーレス(上位1位〜4位が出場枠を獲得、5位、6位が予備選参加)までも夢見るようになった。

 もちろん選手も同様だろう。初参戦の1部の厳しさに意気消沈していたチームが、今は非常に良い雰囲気で盛り上がっている。

降格圏にあえいでいたクイアバーが、ジョルジーニョ就任を機に生まれ変わった

数々のクラブで手腕を発揮

 ジョルジーニョは2006年から2010年ワールドカップまで務めたブラジル代表アシスタントコーチや、2012年の鹿島アントラーズ以外では、ブラジルの数々のクラブで監督としての経歴を積み上げている。

 フラメンゴでのスーペルクラシコ(2013年)、バスコダガマでのリオ州選手権(2016年)など、強豪クラブでもタイトルを獲得した。中堅クラブのポンチプレッタを、南米第2のクラブ選手権であるコパ・スダメリカーナ準優勝(2013年)に導くというサプライズも起こした。

 一方で、低迷するチームを救い上げる、または、小規模クラブを急成長させ、目標以上のレベルに引き上げるのも、監督としてのジョルジーニョの特徴の一つだ。

 上記のバスコダガマでも、全国選手権2部から1年での1部復帰に導いた。2019年には、2部で低迷していたコリチーバをシーズン半ばで引き受け、1部昇格を実現させた。

 2011年に指揮を執ったフィゲイレンセは、今回のクイアバーと少し状況が似ている。1部に昇格したばかりのチームに就任し、目標は残留だったのが、7位で終える快挙を成し遂げた。

 当時、彼に話を聞いたところ、快進撃に沸き立つムードの中でこう冷静に語っていた。

 「僕らのような弱小チームの最大の問題は、勝てば足が宙に浮き、第一の目標を達成する前に別の目標を考え始めることだ。僕らの最初の目標は1部に留まること。それがあってこそ、もっと上を目指せるんだ」

 「僕らは最初、“ダークホース”だった。それが“サプライズ”になった。そして今や、サプライズが現実となって、コパ・リベルタドーレス出場枠まで争えるんじゃないかと考えられるようになった。でも、それを考えるのは早過ぎる。まだ“サプライズ”として戦い続けるべきだ。そして、真面目に仕事を続け、今後、直面するであろう困難に立ち向かうんだ」

 アシスタントコーチとして「ブラジル代表の頭脳」と呼ばれた彼は、クイアバーでも非常に緻密な戦いを続けている。代表レベルの選手を抱えるビッグクラブとは違う。また、30代の選手が多く、平均年齢の高いチームにあって、選手個々の特徴を生かした組織プレーで堅実に勝ち点を重ねている。

 一方で、就任前は「創造力に欠ける」と言われていたチームにあって、対戦相手を見極めながら、試合前にこう宣言し、準備することもある。

 「僕らは勝利のために前向きに攻める。単に守り、リアクションサッカーに徹することだけを考えるのはあり得ない。相手を僕らの陣地に呼び込んで、スピードを生かして決める。目標はいつでも勝ち点3だ」

勝利後はロッカールームで記念撮影。チームの雰囲気は良好だ

より上を目指すチームへ

 ジョルジーニョの監督としてのもう1つの特徴が、選手達のメンタル面のコントロールだ。現在2位の強豪パルメイラスに2-0で勝利した時には、快挙を達成した時だからこそ雰囲気を引き締めている。

 「まだ僕らは何も勝ち取っていない。試合内容で見れば、これまでと比べてもベストゲームとは言えない。僕らの特徴である、相手陣地でのボールポゼッションが維持できなかった。それでも、僕らは知的にプレーし、大事な試合で勝利することができた」

 逆に、実力的には対等と見られるアトレチコ・ゴイアニエンセと0-0で引き分けた時には「マンツーマンでハードにマークをしてくる相手との戦い方をよくわかっていた。アウェーでの勝ち点1は重要だ」と選手たちの粘りを称えた。

 フルミネンセ戦では、2点を先行されながら、引き分けに持ち込んだ。

 「チームが『全国選手権を戦うとはどういうことか』を理解しつつあることを幸せに思う。コパ・リベルタドーレスの準々決勝進出チームと対等に戦い、試合中の多くの場面では、相手よりも良いプレーをすることができた」と、選手たちの短期間での成長を絶賛した。

選手のメンタルコントロールのうまさもジョルジーニョ監督の特徴の1つ

 ジョルジーニョは今後の対戦カードを挙げながら、12月までを見据えてこう語っている。

「まだ降格圏から遠くにいるわけではないが、ここまでの戦いで何が重要かと言えば、目標を達成するための希望と自信が大きくなったことだ。チームは勝っても、引き分けても、負けたとしても、もっと上に行けるんだという自信を失わない。それは大事なことで、相手のクオリティは尊重しつつ、勇気を持って戦うことによって、結果は大きく変わってくる。試合ごとに結果を出し、最後には最大の目標を達成する。そういう流れを期待している」

 降格を恐れていたチームが、ジョルジーニョとともに、より上を目指すチームに変貌を遂げつつある。クイアバーがどこまで行くか。それは、今季のブラジルサッカーの大きな話題の1つだ。


Photos: AssCom Dourado

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ジョルジーニョバスコダガマブラジル代表鹿島アントラーズ

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。