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男女そろってCL決勝進出。史上初のアベック優勝に挑むチェルシー

2021.05.15

 チェルシーがとんでもない快挙に迫っている。

 今週末、チェルシーの女子チームは初の欧州制覇を目指してスウェーデンのヨーテボリでバルセロナと相まみえる。1992年に発足されたばかりのチェルシー・ウィメンが決勝に進んだのは初めてのこと。イングランド勢としては、2007年のアーセナルに次いで史上2チーム目の優勝を目指すわけだ。

史上初の快挙を達成

 チェルシー女子は、近年の積極的な補強が実を結んでいる。今シーズンは、史上初のUEFA女子ベストプレーヤーに2度輝いたデンマーク代表FWペルニル・ハーダーをボルフスブルクから獲得したほか、バイエルンからはドイツ代表MFメラニー・ロイポルツを連れてきた。

 そういった新戦力に加え、オーストラリアの絶対的エースであるFWサム・カー、イングランド代表FWフラン・カービー、日本でもプレーしたことのある韓国代表MFチ・ソンヨンといった既存戦力も活躍している。

 その結果、今季のUEFA女子チャンピオンズリーグでは5度の決勝進出を誇るボルフスブルクを準々決勝で撃破。さらに準決勝でバイエルンを退けて、初めてファイナルの舞台に駒を進めた。

 ご存知の通り、男子チームも準決勝でレアル・マドリーを下して決勝に進出している。「チェルシーは1つのクラブ。ここにはクラブのDNAが存在し、それが勝利を生み出す」と女子チームのエマ・ヘイズ監督が語ったように、チェルシーは男女そろってCL決勝進出という史上初の快挙を達成したのだ。

 ここまできたら、前人未到のアベック優勝が見たいもの。しかし、チェルシー女子が目指すのはアベック優勝だけではない。彼女たちは4冠を目指しているのだ。

4冠獲得の可能性も残す

 今季はペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティの“4冠挑戦”が話題になったが、その夢を阻んだのは、FAカップ準決勝で彼らを下したトーマス・トゥヘルのチェルシーだった。結局シティは現在2冠を達成しており、3冠をかけて5月29日にチェルシーとCL決勝を戦う。

 一方で、チェルシー女子はいまだに4冠の可能性を残している。すでにリーグ戦とリーグカップを制しており、前述通り女子CLでは今月16日(日)にバルセロナと決勝を戦う。さらに女子FAカップでも16強に進出しており、このまま勝ち続ければ4つのタイトルをすべて手中に収めることになる。

 そうなったら注目すべきは、あの男だろう。過去に存続が危ぶまれたチェルシー女子を自らのポケットマネーで救い、同クラブの名誉会長を務めるジョン・テリーである。

 現在アストンビラのコーチを務めるテリーは、古巣チェルシーがRマドリーを下してCL決勝に進んだ際には自身のインスタグラムにお祝いメッセージを載せて「おめでとう、チェルシーFCとチェルシーFC女子」とちゃんと女子チームも祝福したのである。優勝した際の態度を現地メディアに何かと批判されてきたテリーだが、古巣の活躍を心底喜んでいることだろう。

 もしチェルシーがアベック優勝を果たし、さらに女子チームが4冠なんて達成したら、テリーも感慨深いはずだ。だが、実際に4冠は可能なのか。

 実は、過去にイングランドで4冠を達成したクラブは男女合わせて1つだけある。それがアーセナル女子だ。彼女たちは2007年に国内3冠と女子CLを制して前人未到の“クアドラプル”を達成したのだ。実は、その時にアシスタントコーチを務めていたのが、現在チェルシー女子を率いるエマ・ヘイズ監督なのだ。

 アベック優勝、そして4冠は、決して無謀な夢ではないようだ。


Photo: Getty Images

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アーセナルジョン・テリーチェルシー

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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