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カソルラの奇跡はいつまで続くのか?オビエドを引き連れリーガに帰って来た不惑の魔術師

2025.08.23

4季ぶりのレバンテ(昨季スペイン2部優勝)、3季ぶりのエルチェ(同2位)とともに、25季ぶりにラ・リーガの舞台に帰還したレアル・オビエド。昇格プレーオフを勝ち抜いたチームを牽引するのが、昨季35試合5ゴール5アシストを記録し、1年契約を延長した40歳(12月13日で41歳)のキャプテン、サンティ・カソルラである。

2018年時点で、十分、ミラクル

 ここまでいくとまるで漫画だ。いや、フィクションだとしてもあまりに都合の良過ぎるお話にシラケてしまうかも(失礼!)。あのサンティ・カソルラが40歳になってオビエドを引き連れて今季リーガに帰って来た。

 いったい、カソルラの奇跡はいつまで続くのか?

 今から6年ちょっと前、『サンティ・カソルラが起こした執刀9回、22カ月後の奇跡』という記事を書いた。アーセナル時代の左足首の負傷で9回も手術し「歩けるかどうかわからない」と言われ、先が見えない状況にアーセナルもついに解約更新を断念し、「子供たちとボールを蹴れるようになればいいか」と自分を納得させ一時は引退を決意し、練習生の形で入った古巣ビジャレアルで認められてプロキャリアを再開するなんて、十分、ミラクルだろう。

 ところが、私の記事はここで終わったが、カソルラは終わらない。1年後にスペイン代表に復帰、2年目の19‐20シーズンには公式戦15ゴール、11アシストを記録する。あのシーズン「スペイン人最高の活躍」と絶賛された成績のまま退団しカタールリーグ(アル・サッド)へ行ったのは惜しい気がしたが、35歳、夢を叶えた後は黄金の第二の人生、と考えたとしても、それは尊重に値し過ぎる決断と言っていい。

 “もう十分。残りはゆっくり楽しむためにプレーしてほしい”と願ったのを覚えている。カタールでの3シーズン、スペインでは彼の便りは途絶えていたが、2年前オビエドに入団した、というニュースを耳にした。ああ最後に、お世話になった生まれ故郷のクラブのために人肌脱ぐっていうのも“らしい”な、と思った。

 カソルラはオビエドの下部組織出身だが、トップデビューは果たしていない。財政難で選手登録できず自由契約となって03‐04にビジャレアル入り。ただ、当時同ポジションにリケルメがいたためマヌエル・ペジェグリーニ監督(現ベティス)の構想外となって放出された後に呼び戻された07‐08からレジェンドへの道を歩み始める。11-12のマラガでの1年を経て12‐13にアーセナルから声がかかりプレミアリーグへ渡る。その間、代表では2008と2012のEURO連覇にも貢献している。

両利きの“マゴ”に、不可能の文字はない

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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