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最下位に低迷するボタフォゴ。本田圭佑へのさらなる期待と要求

2020.12.15

 本田圭佑が所属するボタフォゴが、12月12日のブラジル全国選手権第25節インテルナシオナウ戦に1-2で敗れ、全20チーム中の最下位に転落した。

 この試合、2つの疑惑の判定がボタフォゴに不利に働いたこともあり、チームとしては納得できない敗戦だったに違いない。それでも、ここまで25試合を戦って3勝11分11敗という結果は、ボタフォゴサポーターに限らず、多くのサッカーメディア関係者にとってもまさかの状況だ。

クラブは混乱の中にある

 ブラジルサッカー界は、「3試合負けたら監督解任」という常套句がある通り、長期的な視野を持ち、監督を中心にチームを作るクラブばかりではない。

 今年のボタフォゴは、その言葉に近いサイクルで解任を繰り返している。現在の監督は5人目で、さらにその間には、やむを得ずGKコーチが指揮を執った試合もある。また、4人目として契約したラモン・ディアスは手術のため現場に立てず、アシスタントコーチが代行している段階で解任となった。

 現在のエドゥアルド・バホッカは、11月28日の就任直後に新型コロナウイルスへの感染が発覚。アシスタントコーチの指揮でスタートし、このインテルナシオナウ戦でようやく初陣を迎えたのだった。

 そんな混乱もあり、結果が出ない中では、チーム最大のスターの1人である本田にも様々な意見があった。彼が運営するSNSへの書き込みにも「もっとリーダーシップをとり、チームを引っ張っていってくれ!」という訴えが見られる。

 本田がそのSNSで、クラブの運営について持論を展開したこともあるためだろう。「ウチの首脳陣はダメだ。あなたがクラブを買って会長になってくれ!」という懇願も少なくない。

チーム最大のスターの1人である本田にはリーダーシップが求められている

セットプレーは誰が蹴るべきか

 サッカーメディアが本田に関して議論しているのがセットプレーだ。彼がFKの名手であることはブラジルでも良く知られているが、ボタフォゴではこれまで、本田がFKやPKの場面でボールを手にするものの、結局、他の選手が蹴り、しかも外してしまう、ということが何度かあった。

 パウロ・アウトゥオリが監督を務めていた頃、報道陣に質問されて「本田は教養ある姿勢で、セットプレーを蹴りたい他の選手にその機会を譲ったんだ」と答えたこともあるが、最近ではセットプレーの際、本田が蹴る姿勢を見せない場面もある。

 12月5日の全国選手権第24節フラメンゴ戦に0-1で敗れた後は、スポーツ専門チャンネル『SPORTV』でも議論された。

 元選手であるコメンテーターのペチコビッチが「もし、本田自身がイニシアチブをとらないなら、『君がPKを蹴るんだ』『FKは君のものだ』『君に蹴って欲しいんだ』と誰かが彼に言うべきだ」と言えば、キャスターも「誰が彼に言うんだ? 毎週のように監督が代わっているというのに。本田には教養があり過ぎる。彼が蹴るべきなんだから、他の選手が蹴りたがっても『俺が蹴るんだ、馬鹿野郎!』ぐらい言っていいのに」と言う。いずれにしても、本田のことを高く評価するからこその、一風変わった批判だった。

 もう1人のコメンテーターである元選手のペドリーニョは、カルーがFKを蹴り、フラメンゴのGKに冷静にキャッチされた場面について「本田はカルーよりも良いキッカーだ」とし、さらにボールをセットした位置から見ても「カルーではなく、左利きの本田の方が効果的な蹴り方が出来る場面だった」と技術的にも解説していた。

 サポーターも「セットプレーはあなたが全部蹴ってくれよ!」と、SNSを通して本田に訴えている。

サポーターの前で戦えない状況が続く

 そういう議論を見聞きするたびに思うのは、SNSが選手とサポーターにとって非常に重要なコミュニケーションの場になっているのは確かだが、もしサポーターがスタンドで応援できるなら、称賛も要求も、そして批判があるならそれも、違ったものになっていたかもしれない、ということだ。

 もともと、ボタフォゴサポーターの熱烈なラブコールに心を動かされてここへ来た本田は、まだ1試合もサポーターの前でプレーしていない。新型コロナのパンデミックにより、デビュー戦から無観客試合なのだ。

 本当ならサポーターはホームスタジアムを満員にし、熱狂的に後押ししながら本田のプレーに一喜一憂するはずだった。

 チームがFKやPKを得れば、多分そのたびに本田コールをしたことだろう。そして大きな期待感の中で本田が蹴り、決まれば歓喜し、決まらなければ天を仰ぎ、次のチャンスに向けて激励したに違いない。サポーターは応援するだけではなく、時には一緒に戦い、試合を左右する存在となる。

熱狂的なファンの前でプレーできない状況が続いている

 全国選手権はまだ13試合残っている。2部降格は下位4チームだが、現時点で7チームがボタフォゴと同様に勝ち点20台で争っているため、残留のチャンスもまだ十分にある。バホッカの初戦では、チームがオーガナイズされ始めた印象もあった。

 本田もサポーターに向けて「僕はここを去るつもりはない。チームメイトとともに、この状況を変えるための努力をしていく」と発信している。1部残留を懸けて、本田とチームは戦い続ける。

本田は自身のツイッターで「僕はここを去るつもりはない」と発信した


Photos: Vitor Silva/Botafogo

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ボタフォゴラモン・ディアス本田圭佑

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。