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ブラジルサッカー、空前の外国人監督ブームとブラジル人監督への回帰

2020.11.14

 昨年、フラメンゴで指揮を執ったポルトガル人監督、ジョルジ・ジェズスの成功により、ブラジルサッカー界では空前の外国人監督ブームが続いている。

ボタフォゴではラモン・ディアスが就任

 何しろジェズスは、昨年6月に就任するや、チームをリベルタドーレス杯とブラジル全国選手権の優勝に導いたのだ。その影響力は大きく、今季は開幕時だけで、インテルナシオナウにアルゼンチン人のエドゥアルド・コウデ(※11月に辞任)、サントスにポルトガル人のジェズアウド・フェヘイラ(※8月に解任)、アトレチコ・ミネイロにベネズエラ人のラファエウ・ドゥダメル(※2月に解任)が、新たに就任した。

 その後も、昨年サントスで準優勝したアルゼンチン人のホルヘ・サンパオリが、3月にアトレチコ・ミネイロの監督に就任。

 ポルトガル人ではさらに10月、バスコダガマにヒカルド・サー・ピントが、パルメイラスにアベウ・フェヘイラが就任した。

 11月5日には、アルゼンチン人のラモン・ディアスがボタフォゴの監督に就任した。本田圭佑が所属するボタフォゴでは、今年だけで3人ものブラジル人監督の辞任・解任があり、やむを得ずGKコーチが指揮を執った試合もあるほど落ち着かないシーズンを過ごしている。

本田圭佑を擁するボタフォゴでは、Jリーグでも活躍したラモン・ディアスが監督に就任(Photo: BotafogoTV)

 これほど多くの外国人監督がブラジル全国選手権1部のクラブを占めることは過去になく、「外国人の侵攻」と表現するメディアも多い。その言葉ほどの拒否反応は感じられないものの、その外国人のキャリアや戦績は様々。ジャーナリストやサポーターが疑問符を付ける契約もある。

ロジェリオ・セニは気鋭の指揮官

 さらにここへ来て、ブラジル人監督への回帰の兆しが見られる交代劇も2つあった。1つは11月9日、フラメンゴのドメネク・トレントの解任だ。

 今年7月、ジョルジ・ジェズスがベンフィカに引き抜かれた際、後任探しは難航した。最終的に契約されたスペイン人のドミ(ドメネクの愛称)は、2007年のバルセロナ時代から11年間、名将ペップ・グアルディオラのアシスタントコーチを務めていた人物だ。

 監督経験はニューヨーク・シティでの1年半のみ。ブラジルメディアは「外国人でありさえすればアシスタントコーチでもいいのか」「唯一の監督経験がサッカー新興国のアメリカだなんて」と、その人事に批判的だった。

 ただ、ドミは就任後、急ピッチでポルトガル語をマスターし、ブラジルに溶け込もうとする姿勢を見せた。コメンテーターも人間だ。「ポルトガル人のジョルジ・ジェズスよりもブラジルのポルトガル語が上手」「アルゼンチン人のサンパオリは、ブラジルのクラブを1年半指揮していてもスペイン語しか話さないのに」と、親しみさえを持ち始めていた。

ドメネク・トレント監督(右)はポルトガル語をマスターし、チームも結果を出すなど評価される面もあった
(Photo: Alexandre Vidal/Flamengo)

 実際、成績も全国選手権で上位を維持。リベルタドーレス杯ではグループリーグを1位で突破し、コパ・ド・ブラジルでも準々決勝に進出している。

 しかし、守備の修正に問題があり、負ける時は大敗する。リベルタドーレス杯では、インディペンディエンテ・デル・バジェに0-5。全国選手権ではサンパウロに1-4で敗れた1週間後にアトレチコ・ミネイロに0-4の敗戦。その時点で、約3カ月間のフラメンゴ生活を終えることになった。

 ドミのアシスタントコーチ時代をよく知るマンチェスターCのガブリエウ・ジェズスがブラジル報道陣に問われ、こう答えていた。

 「ドミとは2年近く一緒だったけど、落ち着いた、とても良い人間だし、高いクオリティを持っている。ただ、ブラジルサッカーは、彼が慣れているものとは違うんだ。弁護するようだけど、僕はブラジルサッカーを、それこそ彼以上に知っているからね」

 そして、あれほど外国人にこだわっていたフラメンゴが次に契約したのが、ロジェリオ・セニだ。サンパウロやブラジル代表でプレーした元GK。2017年の古巣サンパウロを皮切りに監督業をスタートさせている。

 その後、フォルタレーザを全国選手権2部から1部に引き上げ、北東部カップでも優勝、セアラー州選手権では2019年からの連覇も果たし、現在、最も勢いのある若手監督の1人とみなされている。

 選手時代からの友人であり、現在はテレビコメンテーターを務めるエジムンドやジーニョをはじめ、多くの元選手たちが「彼の戦績を見ても、ステップアップするのに良いタイミングだ」とエールを送り、サポーターも歓迎ムードだ。

アベウ・ブラガは7度目の指揮

 もう1つは、インテルナシオナウのエドゥアルド・コウデの突然の辞任。理由は、スペインのセルタによる引き抜きだ。

エドゥアルド・コウデ監督(右)はセルタに引き抜かれた(Photo: Ricardo Duarte)

 インテルナシオナウが全国選手権でトップに立っているだけに、ジャーナリストの中には「南米の監督にとって、ヨーロッパで指揮を執るチャンスが重要なのは理解するが、彼の監督歴はまだ5、6年。タイトルだって、そのキャリアの中で大切なはず。セルタはリーガで下位にいるのに。どれほどのお金を積まれたのだろうか」と、皮肉を交えて語る人もいる。

 彼の後任は、ベテランのアベウ・ブラガ。クラブW杯優勝に導いた2006年をはじめ、インテルでの指揮は7度目になる。旧知のブラジル人監督を、サポーターも歓迎しているようだ。

 通常は12月に終わるブラジルサッカーのシーズンだが、パンデミックによって、今季は2月まで続く。まだまだ何が起こるか分からない。


Photos: Alexandre Vidal/Flamengo, Ricardo Duarte, BotafogoTV, Getty Images

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。