INTERVIEW

ガットゥーゾが目指すのはペップ?「休業中に彼の練習を見に行った」

2017.11.28

“グアルディオラのやり方を見ていたら、小学校からやり直したい気分になった”

Interview with
GENNARO GATTUSO
ジェンナーロ・ガットゥーゾ

2017年11月27日、ミランはモンテッラ監督の解任を発表し、下部組織で指揮を執っていたガットゥーゾが後任に指名された。「闘犬」とあだ名されたファイターはどんなチームを作るのか? レガ・プロ(イタリア3部)のピサを率いていた昨年に収録したインタビューを特別公開。「監督」ガットゥーゾは現役時代とは異なる顔を持っている。

波乱万丈の監督キャリア

“監督業には下積みが必要だ”

── ピサでの監督業はどうかな?

 「すごく順調にいってるよ。自分が思い描いていた通りに仕事ができている。フロントは真面目で、選手への給与未払いとか、チームに対してあれこれ口を挟む会長とか、そういったサッカーとは関係ないところで心配することが全然ない。監督業をやるのに理想的な環境にいるおかげで、ついに監督としての力を存分に試すことができているんだ。残念ながら、パレルモでもクレタでも、そして選手兼任監督だったシオンでも、そういったピッチ外でのゴタゴタがちょっとあったからね」

── スイス(シオン)、ギリシャ(クレタ)などいろいろな国で指揮を執ってきたわけだけど、なぜ変わったキャリアを歩もうとするの?

 「変わってるってことはないだろう。サッカーの監督に限らずあらゆる職業において、下積みってヤツが必要だとオレは思ってるんだ。イチからスタートして経験を積み上げていくということがね。現役時代に偉大な選手だったとしても、監督になって成功するとは限らない。選手と監督では勝手が違う。いや、ある意味では偉大な選手だった方がもっと難しい。なぜなら、元有名選手だと何かと注目されて、ミスしたり試合に負けたりすると、そのマイナス部分が増幅されるんだ。物事はゼロから学ばなければならないものだとオレは知ってるし、底辺からスタートすることも恐れてはいない。むろん、過去の経験が消えるわけではないよ。ハイレベルな舞台で選手として積み上げた経験は、今の仕事でも有益だ。でもそれにあぐらをかいてはならない。レガ・プロ(3部)で監督経験を積めて満足している。経営難のクレタでは、オレがホペイロの仕事をやったこともあったんだぜ。あの6カ月間の冒険もオレは無駄にはしない。あそこで多くのことを学んだよ。ミランの下部組織の監督をやっていたら学べなかったことだ。たとえるなら、少年が大人になって仕事のために家から離れて違う街に住むようなものさ。自分の足で歩いている、ということだ」

── 監督として学び、サッカーに対する見方は変わった?

 「オレはオープンマインドだし、この仕事は常にアップデートせざるを得ない。一つのやり方にこだわるのはご法度だ。特に戦術面でそれが言える。オレは選手時代、相手チームのサッカーを分断するプレーを優先させてきた。今も守備はサッカーの基本だと思っているけど、敵よりも優れたゲームメイクができなければ勝利は得られないと考えるようになった。守り抜くサッカーでも目先の1試合は勝てるかもしれない。だが、10試合中9試合は試合の主導権を握ったチームが勝つだろう。とはいえ、サッカーに対する見方で変わらないことが一つだけある。それは勝つためには努力しなければならない、ということだ。そうすれば結果はおのずとついてくる」

── 君がトップレベルでプレーしていた2000年代と現在とでは欧州サッカーの戦術トレンドが変わっているということかな?

 「スピードアップしたし、よりフィジカルが重要視されるようにもなった。身体的に万全でなければ、ピッチには立てなくなったんだ。あの頃と違い、うまくオーガナイズされているチームの基盤となっているのは走力だ。また、現在の欧州では戦術の格差はほぼなくなってきている。試合への準備をきちんとせず、細部にこだわらない監督は絶滅危惧種だ。だが、おもしろいことに、そうなったことであの当時よりもさらに選手の個の力が勝敗を分けるようになっている。戦術面での格差がなくなったことで、個人技によるプレーやFKから勝負がつくことがより多くなった。だけど話は元に戻るが、コンディションの良さは今の欧州で絶対条件だ。あのメッシでさえ、身体の調子が悪ければバルセロナを勝たせることはできない」

── グアルディオラの登場でサッカーは大きく変わった。君も彼の影響を受けている?

 「もちろん。彼は常に新しい戦術を開拓しようと研究を怠らない最先端をいく監督だ。監督をやっている人間なら誰もが、彼のサッカーを見ていると自分のやる気がかき立てられるはずだよ。実はクレタが破綻の危機となり監督業を休業していた時、バイエルンの練習を見学しに行った。そこでグアルディオラのやり方を見ていたら、自分が生徒になったみたいに思えてきて、小学校からやり直したい気分になってきたんだ。でもその瞬間、このギャップを早く埋めたいという気持ちがムクムクと湧いてきた。彼に近づくためにもっと学びたいという欲望にかられたよ。もの凄く高い位置からプレスをかけて守っていくところとか、FWとMFのパスのコンビネーションのところとか、サイドを完全に占領してしまうところとか、ミュンヘンから持ち帰ったものをオレのピサで生かそうとしているところだ」

── 今の欧州サッカーで注目しているチーム、監督は?

 「今言った通りの理由から、グアルディオラのバイエルンだな。それと、超現代的サッカーをしているルイス・エンリケのバルセロナからも目が離せない。手堅いサッカーを追い求めながらも、戦術的にはとても柔軟だし、メッシ、スアレス、ネイマールという3トップ全員がゴールへ顔を向けていて、後ろをカバーするためにピッチには立っていない。あと、アレグリのユベントスもお気に入りなんだ。気づいていない人も多いし、過小評価されているように見えるんだけど、アレグリのサッカーはモダンで、あらゆるフォーメーションに早変わりできるチームを作り上げている。変幻自在にシステムを変えることができる力は武器になる。何事もないかのように3バックから4バックに移行したり戻したりできるチームの方が強い。なぜなら、困難に陥った時間帯にうまく乗り切れるし、敵の意表を突くこともできるからね。この能力が最も長けている監督はコンテだと思う。彼はマニアックなまでにその動きを選手に叩き込む。こう考えていくと、欧州でイタリアサッカーが巻き返しを見せるのはそう遠くないのかもしれないな」

愛する古巣ミランの窮状

“現実を見て、サポーターに真実を話すべき”

── 古巣ミランはチャンピオンズリーグに参加できていないわけだけど、現状をどう見ている?

 「悲しいかな、困難に陥っている。クラブそのものの状況がちょっとややこしいことになっているし、かつてのように移籍市場に金をかけられなくなっている。名門クラブとしてふさわしい成績が義務づけられているけれど、それは今の戦力には無理な要求だ。もっとリアリスティックになって、サポーターに真実を話すべきなんだ。ミランが欧州のトップレベルに返り咲くまでには、かなりの年月を要することになるだろう。こんな話をしなきゃいけないのはオレだって辛い。でもこれが事実なんだ。ヨーロッパの収入ランキングでミランは14位に落ちた。収入と成績はかなり密接な関係にある。でもまあ、チャンピオンズリーグでの優勝は難しいかもしれないが、ヨーロッパリーグ優勝ならチャレンジできるかもしれないな」

── ミラン復活のためには何が必要だろう。補強? それとも何かを根本から変えなければならない?

 「ミランには強みがある。それはスカウトの力だ。まだ無名で値段が張らない選手を発掘するのに秀でている。とにかく、ミランが立ち直るために大切なのは現実を直視してシーズンの目標を変えることだ。イングランドやスペインの金持ちクラブと移籍市場で張り合おうなんて考えちゃだめだ」

Gennaro Ivan GATTUSO
ジェンナーロ・イバン・ガットゥーゾ
(ミラン監督)
1978.1.9(39歳) ITALY

イタリア南東コリリアーノ・カーラブロ生まれ。ペルージャの下部組織に入り、95年にトップチームデビュー。97年にスコットランドのレンジャーズ、翌年サレルニターナへと移籍し、21歳の時に名門ミランへ。泥臭くボールを追い回し奪い取るプレースタイルから「闘犬」と呼ばれ、セリエAとCLをそれぞれ2度制すなどチーム黄金期の立役者となった。12年スイスのシオンへ移籍し、シーズン途中から選手兼任監督となり、指導者キャリアをスタートする。13年パレルモの監督に就任すると同時にスパイクを脱ぎ、監督業に専念。しかし、わずか6試合で解任され、14年から率いたギリシャのクレタでは給与未払いなどもあり半年で辞任。15年8月から当時イタリア3部レガ・プロに所属するピサを指揮し、初年度にセリエB昇格に導いた。今夏、古巣ミランのプリマベーラに監督として復帰していたが、モンテッラ解任に伴いトップチームの監督に昇格した。

COACHING CAREER
2013 Sion (SUI)
2013 Palermo
2014-15 Crete(GRE)
2015-17 Pisa
2017- Milan

Translation: Hiroko Uchiumi
Photos: Getty Images

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エンリコ・クロー