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【対談前編】戸田和幸×伊沢拓司――これからの時代のサッカーをどう伝えていくか?

2020.10.13

人気解説者でありながら、YouTubeチャンネル『SHIN KAISETSU』で新しいサッカーの楽しみ方を追求する戸田和幸さん。熱狂的なトッテナムファンで、クイズというジャンルの魅力を再定義して幅広い層に提案している伊沢拓司さん。テレビ、YouTubeなど様々なプラットフォームで活躍する二人に、サッカーの伝え方をテーマに語り合ってもらった。

前編は、ライト層からコア層まで幅広い人たちにサッカーというコンテンツの魅力を届けるには何が必要なのか、その方法を考えてみた。

「ゼロ」と「イチ」の間、「理論」と「熱量」のバランス


――今回の対談は「これからの時代のサッカーをどう伝えていくか」がテーマです。今日はお二人に、サッカーの魅力をより多くの人に届けるにはどうすればいいのか、意見を聞きたいと考えました。

伊沢「いつも戸田さんの動画を拝見してます。昨日の『SHIN KAISETSU』も見させていただきました。遅くまで試合の解説をされていたのに、ありがとうございます。深夜2時半に動画をアップされていてすごいなと」

戸田「仕事ですから(笑)。YouTubeで話す時はちゃんと台本を書いて収録した方がいいのか、どういう形が望ましいのかいろいろ考えてはいるんですが、現状はあれくらいがちょうどいいのかなと。誰に対してどんな情報を出すべきかはいつも考えています。試合中の解説に関しても本当はもっと細く、試合の大枠のところから丁寧に話したいのですが、中継を見る人はその試合のスピード感の中で楽しむものなので、そこで語れなかった背景は試合が終わった後の熱量が残っている状況で出しておくのがいいと思って、(あの時間帯で)『SHIN KAISETSU』をやりました」

戸田さんが試合のプレビューとレビューを中心にサッカーを言語化するYouTubeチャンネル『SHIN KAISETSU』

伊沢「視聴者側からすると、終わった後にすぐ見たいですからね」

戸田「本当は試合が終わった瞬間に解説があるのが理想ですよね」

伊沢「僕自身、試合後は勝っても負けても数時間ソワソワしているのでその時間に『新たな情報に触れたい……!』ってなるんですよね。それに、映像が使えないのだったら頭に残っているうちに見たいですからね」

戸田「(サッカー中継の制作陣に)いろいろ提案したこともあるんですけど、現状のフォーマットだとなかなか動かせないですね。なので与えられた枠組みの中で自分が楽しめるものであったり、試合を見た人が余韻にひたって楽しめるものは何なのかを模索しています。本当は車の中なんかで撮りたくはないんですけどね(笑)」


――僕がこのテーマに興味を持った理由としてDAZNやYouTubeという新しいプラットフォームが入ってきて、サッカーの観戦体験が大きく変わるタイミングなのかなと。伊沢さんはクイズという競技をより広い層に楽しんでもらうためのチャレンジをされていますが、そこからサッカーが学べる部分があるんじゃないかと考えました。

伊沢「戸田さんが『誰に対して』とおっしゃられていましたけど、メディアによって変えるということは僕も意識しています。自分のYouTubeチャンネルとテレビでは違うし、テレビと書籍、インタビューでもやり方は違います。そのメディアごとの特性があるなと考えています。

 僕が数年前までクイズ番組を見る方に感じていたのは、まだクイズの見方、奥深さみたいなのを伝えられていないなというか、『正解した人が偉くて、負けた人はものを知らない』『誤答したということは、答えについてまったく知らない、無知だということ』みたいな見られ方をしているなという悔しさがありました。これらの言説はクイズプレーヤーの視点からすると不正確で、たとえば誤答にも質的側面があるので一概に『無知』とレッテルを貼ることはできない。70%の確率を攻めたけど外れる方の30%を引いちゃいました、みたいなことがどうしてもあるわけです。サッカーで例えれば、PKを外した選手に対して『この選手はPKが下手』とレッテル貼りしてしまうような感覚ですね。たった一回のPKを成功した/失敗したと言ってもイチかゼロかの話ではなくて、そこにはいろんな要素が絡み合っていますよね。同じように、クイズでも正解と誤答の中間にある質を追い求めるのがプレーヤーの目指しているところなので、その部分を解説でわかりやすく伝えられれば、クイズという競技のためにもなるし、視聴者の方にもっと面白く見てもらえるんじゃないかということを意識しています」

戸田「YouTubeの作品はかなり頻繁に出しているんですね」

伊沢「そうですね。YouTubeでの作品は戸田さんの解説のような深いものじゃなくて、あくまでバラエティ番組的なものを目指しているんですけど、これは正直、YouTubeで継続して見られるようなじっくり解説する動画の需要は、クイズにはそこまでないなという実感が根底にあって。じっくりやってもそこで見てくれるのは、今までずっと解説を見てくれている、わかっているいる人たちなんです。それならむしろ、バラエティ的なクイズ動画を楽しんでもらって、その中にほんの少し解説的な要素を挟み込むくらいの方が、より多くの人に伝わるんじゃないかと思ってやっています。なので、ディープな解説は書籍などの適性が高いメディアでやることにして。メディアごとに伝え方は変わりますけど、ずっと『クイズはゼロイチじゃないよ』というのはメッセージとして発信していきたいですね」


――やり続けてきたことで変わってきた実感はありますか?

伊沢「僕の力で何か変わったかというとそんなことはないと思うんですけど、サッカーでいう戦術クラスタのような、クイズを分析的に見る目線を持とうとしてくれている人が少しは増えたのかなという実感はあります。ただ本当に小規模なものだなと思いますし、逆に戦術クラスタの人たちを見ているとうらやましさはすごく感じます」


――メディアの違いという面でいうと、戸田さんはNHKの解説から地上波の代表戦、DAZNの解説、そして自分でやられている『SHIN KAISETSU』まで幅広く、ほとんど網羅しているんじゃないかというくらい様々な場所でサッカー解説をされています。メディアによってやり方を変えることは意識されているんですか?

戸田「僕は残念ながら、選手時代から自分がやりたいことでポジションが取れたり、ピッチの上で結果が出せる選手ではなかったので、自分が全体の中でどんな働きをすれば必要とされるのかという思考を自然とするようになっていきました。そういう意味では、解説業に足を踏み入れた時点で自分のビジョンはありました。選手の時から中継は見ていたんですけど、どうにも局面を切り取った話が多いなと。その局面がどこから生み出されているのか、局面をジャッジするにしてもその前提をきちんと把握していないと、どこまでが良くて、どこからが物足りなかったのかという話ができないと思っていました。そもそも『この試合の背景では何か行われているのか』を伝えられたら自分の解説者の色にもなるだろうし、それが前提としてあった方がこのスポーツをより楽しんでもらえるという思いがありました。

トッテナムでプレミアリーグの舞台に立つ戸田さん

 でもサッカーは基本的にすごく速いスピードで動く競技なので、何を伝えるかの取捨選択は難しいといつも考えながらやっています。きちんと話をするのであればやはりリサーチは欠かせません。その上で、どのメディアで仕事をするかで見る人が変わる、というのもずっと意識してやってきました。例えば、地上波の代表戦だと見ている層も幅広いですからね。実はDAZNも今やサッカー中継をほぼ一手に引き受けているので、これも幅広いと思っているんです。いろんな人が見ているので、解説のターゲットをどこに設定するかはいつも悩んでいます。とは言っても、そこで行われていることをできるだけ、『自分としてはこうだろう』という確信を持ってきちんと伝える。サッカーを簡単に見せ過ぎないことは大事だと思っています」


――「サッカーを簡単に見せない」という解説のコンセプトが面白いですよね。

戸田「これだけ難しいんですよ、こんなに難しいことをこの人たちはやっているんですよというのを伝えることで、サッカー選手の見られ方が変わったり、ステータスが上がってほしいというのはすごく大切にしています。

 戦略があって戦術があって、試合ごとに選手の捉え方は変わりますから。そういう細かなところも踏まえて話をしようと心がけていますけど、それをずっと話すとただのうんちく野郎になってしまう。スポーツという意味では熱量、熱狂、興奮が必要ですから。そこはナチュラルに、僕はサッカー大好き人間だというところ、それをそのまま乗せることも意識をしています。『理論』と『熱量』をバランスさせることで、できるだけ幅広い層に届けたい。熱量がないと楽しめない人もいるけど、ある程度の戦術的な話もないと楽しめない人もいますから、そのバランスはいつも自分の中では考えています」

背景を語るには「プレビュー」と「アフターレビュー」が必要

伊沢「その点で印象的だったのは、今年のCL決勝でした。両チームがどういう経緯でここまで勝ち上がってきて、こういうサッカーをしていて、というカチッとしたマッチプレビューがまずあった。試合もいい内容でしたし、その後にちゃんとアフターレビューがあって、『なるほど、実はバイエルンもそんなにうまくはいっていなかったのか』ということを理解して、その上であとから映像をまた見返して、『ああ、そうか』と思ったり……。

CL決勝にふさわしい好ゲームとなったパリ・サンジェルマン対バイエルンの一戦

 僕は戦術だったり技術だったりが好きな人でも、必ずしもリアルタイムですべてを理解したり、戦術や技術を追いかけ続けたりしているわけではないんじゃないかと感じていて。リアルタイムはやっぱりサッカーそのものに対する熱狂が勝って、戦術や技術については後から改めて振り返る、という見方になりがちなんじゃないかと。だからこそプレビューがあって、試合の後にアフターレビューがあって、というフォーマットが重要になってくる。戸田さんがそれをやってくださるおかげで、僕は充実した環境で見させていただいているなと思っています」

戸田「本当は試合中にリアルタイムで、ゴールキックからのビルドアップフェーズをどうやっている、みたいな話もしたいんですけど、現実問題、無理ですよね。サッカーは展開が速いですし、今画面に映っているものを解説することがベースですから。我々は画面に映っていないところの配置もイメージして見ているのでわかるんですけど、視聴者は映っていないとさすがにわからないと思うので」

伊沢「そうですよね。そもそも選手も状況も目まぐるしく動いているので、リアルタイムでは追いきれない部分もあります」

戸田「説明できない部分はバンバン捨てながら、いつも『ここだけは』というポイントを絞った話はさせてもらっています。やっぱりサッカーは理屈じゃなくてエンターテインメントなので、見ている人の熱量を邪魔してはいけない。それを忘れてはいけないと心がけています」

伊沢「僕としては、戸田さんがやってくださっているように、その試合に至るまでの背景だったり、戦歴の話があるとすごくありがたいです。対戦相手の前節、前々節までみんなが追えているわけじゃないですしね。特に日本のサッカーファンには情報があまり入ってこないですから。だからこそ、ここまでの調子だったり、試合を迎えるにあたっての状態を理解できるのはその試合をより深く楽しむためにもすごく大きいと思いますし、それによってアフターレビューにも意味が出てくるのかなと。

 あとは映像ですね。動的なものを見せる無料メディアとなるとやはり今はYouTube一強で、YouTubeも実際の試合映像ではなく選手の駒を使って解説する形が多いですよね。それだと戦術に関するアフターレビューをするあたりでどうしても難易度が上がってしまう。そこで題材となるチームを系統立てて追い続けた情報があって、それに基づいた毎試合前後のレビューがあって、チームの移り変わりを連続的に、繋がった状態の情報として摂取できる機会がちょっと少ないと感じています。このチームが今季どう戦ってきたのかをちゃんと系統立てて読めるような機会が、各チームについてもっと充実すると良いなと思います」

戸田「今言われたところで僕の考えを乗せると、やっぱり試合の前枠と後枠。伊沢さんがおっしゃった通り、視聴者はそこまでリサーチして試合を見ないですよね。特に応援しているチームの相手のことなんかはあまり知らないじゃないですか。だからフルアムとアーセナルの開幕戦を解説することになって、これはフルアムだなと思ったんです。アーセナルファンが圧倒的に多いのは知っているので、そのアーセナルファンのためにも『今季のフルアムはこういうチームだよ』というのを下調べして伝えてあげたいなと。ただ、調べてもそれを伝える枠がなくて。試合が始まった直後に『今日の見どころは?』と言われても、もう試合は始まっちゃっているわけで、『今話している場合じゃない』というのが僕の本音ですから。それを試合前にもうちょっと伝えたいなとは思っています」

伊沢「新しい試みを意欲的にやっているDAZNですら、試合前と試合後がどうしても短くなってしまう」

戸田「どこで仕事をさせてもらう場合でも、前枠のところできちっと両チームの背景を伝えるのはなかなかできなくて、そこをもう少し厚くできるともっと面白くなるんじゃないかと常々感じています。そもそも戦術の話はエビデンスがないとなかなか理解に繋がらないので、それを提示できるだけのまとまった時間が必要です。ハーフタイムの使い方もあるんでしょうけど、もう少し映像を使ってその瞬間に何かできたらいいというのは感じます。回収するという意味では、中継が終わったら実況の人とそのまま別室に移動して、YouTubeチャンネルでやれば試合を見た人が参加できて、コメントが来たらそれを拾ってあげる、それをやったら楽しいと思うんですけど」

伊沢「それができたらめちゃくちゃ楽しいですね」

戸田「映像は使えるはずで、1試合3分までという縛りがあるんですけど、3分を超えなければ使えるんです。ゴールシーンだけでもいいですし、それをモニターに映しながらああだこうだ喋るだけでも、試合終わった人はそのまま感想戦に入れる。もう一回この試合をみんなで話しましょう、みたいなのを作れたら面白いんじゃないかなと。

 代表戦の時にTBSに提案をしたことがあるんですけど、一番難しいのはオフサイドじゃないですか。だから僕に5分もらえませんかと。スタジオにタレントさんを呼んで説明して、オフサイドクイズみたいなものをやればいいんじゃないですかと。そこで1回クイズをやってから試合に入ればオフサイドの視点を得られて、試合の中でわざわざ説明する必要がなくなるのではと提案したことがあります」

伊沢「クイズ形式にすることで本番で際どいシーンを見た時に『これオフサイド? これオフサイドじゃない?』と考えながら見られる。普及に向けては理想的なムーブになりそうですよね」

戸田「あるいは僕みたいな戦術などを解説する人間を副音声にしてしまえば、もっと掘り下げた日本代表の解説ができて面白いと思います。だから僕はYouTubeチャンネルを作って、『こんなのがあったら面白くないですか』というのを各局の人に伝えていきたいという狙いもあります。それでちょっとずつプレビューやレビューを依頼されたりということも起きています」

目指すは『フリースタイルダンジョン』?


――伊沢さんから見て、サッカーメディアや中継に要望はありますか?

戸田「それは僕も知りたいですね」

伊沢「自分の体験の話になりますが、僕がクイズの解説をやっていて学んだのは、その場にいる全員が勝負に入り込んでしまうと面白くないこと。先日、『東大王』で生放送でクイズをする回があって、司会がお二人、解説者が僕であとは全員参加者……という形だったんですけど、いい勝負すぎて参加者全員が勝負に入り込んでしまって……。そうすると全体的に勝負を進めることを優先してしまって次の問題、次の問題となって、今起こっていることが客観視されないまま次に進んじゃう。『すごいことが起こっているんだ』というのが伝わらなくて淡々と進んでしまいました。とはいえ熱狂に水を差すわけにはいかないから技術解説は向いてなくて、かといって一回この勝負に対する客観的評価を加える必要はあって……というところでもう、『すごいことが起きている興奮を表現して、これが凄いことなんだと伝えよう』と。おそらくそのほうが、お客さんも『あ、これってやっぱ凄いんだ』と安心して見られるのかなと思ったので。全員が勝負に入りこみ過ぎてしまっていると視聴者は何を見ていいのかがわからなくなってくるのかな、というのはその時に感じました。

 そういう面でいうと、日本代表の試合を見ていると、実況の方が常に緊迫したペースで話すので『今何が起こっているのか』がわかりにくくなっている側面はあるかもしれません。もちろん常日頃サッカーを見ている人は少数派なわけだから、その演出は十分理解できるんですけど。逆に言えば戸田さんの解説は入っていきやすいペースですね。盛り上がる時は戸田さん自身が盛り上がっているけれども、基本は冷静にみたいな緩急がある解説が好きなので」

戸田「それはかなり意識してます。地上波の日本代表中継はやっぱり意気込んじゃうんですよね。巨大なコンテンツで、なおかつ地上波のサッカー中継は年間の本数が限られているので。だから多分、すごく緊張してるんだと思います。数字を取らなきゃいけませんし、コメンタリーで数字が決まるわけではないんですけど、その意気込みが表れている感じがしますね」

冷静に論理的な解説を届ける戸田さんでも、日本代表の試合では緊張してしまうという

伊沢「普段サッカーを見ない人も見ているでしょうし、盛り上がっている感じが常にないとチャンネルを変えられちゃう危機感もある。それもわかる一方で、本当にサッカーが好きな人も楽しめる環境が他に用意されていてほしいという思いもあります。W杯中継でも、選手の背景知識などをもう少し解説してほしいとは思いました。どうしても所属クラブでのプレーなどは地上波だと追いきれないのが現状なのかなと。

 試合の背景を語れる、中継じゃない番組枠みたいなのがあっても面白いと思うんですよね。テレビはやっぱりゴール集になってしまいがちです。スーパースターのゴール集と現地に行って日本人選手にインタビューしましたみたいなのが多い。映像権利の問題もあるんでしょうかね?」

戸田「時間の縛りがあるだけで、ゴール以外の映像も使えるんですよ。ただテレビの人はわかりやすさを考えるので、野球だとホームラン、サッカーだったらゴールになる。地上波中継だと、僕はビルドアップのことは言えないですから。シュートを打ったところから巻き戻して、二手、三手前から説明するのが限界ですね。ただスポーツの魅力を伝えるという意味では、ゴール以外の部分もやるべきです。僕はあまり視聴者を馬鹿にしてはいけないんじゃないかなと思うんです。情報の出し方、ポイントを作っていくことで少しずつスポーツの本質に近づけるチャンスはあると思うし、『この人たちにはこれぐらいだろう』みたいなことじゃなくて、もっともっとサッカーの魅力を伝えられるチャンスはあると考えています」

伊沢「これは以前、山口遼監督とお話した時にも話題になったんですけど、イニエスタには素人目に見て面白い部分があるし、一方で玄人目に見てもすごい部分もある。どっちの楽しみ方もできると思うんですよね。仮にめちゃくちゃレベルが高い視聴者がいたとして、その人が別にレベルの低いものがまったく楽しめないかというと、全然そういうことはない。半端ないスルーパスや芸術的なロングシュートはそれだけで面白いなと思えるはずで。 両立はできるはずです。簡単でわかりやすいもののところに、ちょっとずつ難しいものを混ぜ込むとか」

バルセロナとスペイン代表で一時代を築き、現在はヴィッセル神戸でプレーするイニエスタ

戸田「僕はいろんなレイヤーの視聴者に一緒くたに情報を伝えるのは難しいと思っているので、分けてコンテンツを作るのが現実的かなと」

伊沢「やっぱりそのやり方が現実的なんですかね。自分の活動を振り返ると、クイズを伝えるという面では僕もコンテンツ分けに頼ってますね。文字のメディアに比べると、映像メディアではやっぱり簡単な喋り方になりますよね。それでも以前、関西のテレビで野球の技術解説だけで1時間やる番組のMCをしたんです。掛布雅之さんと岡島秀樹さんを呼んで、Twitterでプロ顔負けの分析をしている人たちの意見を基に構成しました。そこで新しい変化球の話などをしたんですけど、掛布さんがすごく盛り上がってくれて。このレベルの話が地上波でできるのは最高だなと、こういう選択肢があってもいいよね、ということをMBSのスタッフに推してくれてたんですね。それを見るとやっぱり、地上波でも深い話に立ち入れる可能性はある気がして、サッカーでもスーパープレー集だけじゃない、技術戦術面にじっくり踏み込む番組が深夜に30分くらいでもあっていいなと思うんですよね。それが面白いとなって話題を呼べば、サッカーは好きだけど技術解説はあまりわからないという人たちが見始めて、玉突き的に全員のレベルが上がっていくような気がしていています。

 『フリースタイルダンジョン』という即興ラップの番組がありましたけど、ラップはかっこいいなと思うけど背景知識とかシーンについては全然知らない、みたいな人たちがその番組にだんだんと入ってきて、そこから玉突き的に視聴する側の知識量、リテラシーが上がっていったみたいな例があるので。ちょっとチャレンジ的なものが深夜とかにあるといいなと思いますし、観たいですね」

戸田「テレビの存在はやっぱり重要だと思いますね。母数が変わりますから」

伊沢「YouTubeが強い時代とはいえ、テレビで放送するだけで『このジャンル流行ってるんだな』という意識がまだ生まれますからね。トップのYouTuberがテレビに出ても、YouTuberがテレビに出た、YouTubeが認められたみたいな上下関係は、正直いまだにあるように感じます。YouTuberとしては悔しいんですが(笑)。あとはテレビに限らずかもしれませんが、戦術だけでなく文化の話ができたりとか、そういう多様性が生まれてくるといいのかなと。DAZNでベン・メイブリーさんがやっていた『プレミアリーグ・クラブヒストリー』シリーズはとても面白かったです。もしそれを地上波で、より幅広く実現できるのならめっちゃ楽しみです」

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Edition: Jay (footballista Lab), Baku Horimoto (footballista Lab)
Photos: Naoko Suzuki, Watanabe Entertainment Co., Ltd., Pool/2020 Getty Images, Getty Images, Pool via Getty Images

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伊沢拓司戦術戸田和幸文化

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。