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ドルトムントにとっては20億減収でも“かすり傷”。 タレントの叩き売りはしない

2020.08.24

コロナ禍のクラブへの影響:ドルトムント

コロナ禍のダメージを受けながらも、バイエルンと同じく盤石な経営基盤により運営に苦しむ心配はないドルトムント。昨年のような大補強こそ難しいものの、昨季は2位に終わったリーグ戦でのタイトル奪還を目指すべく、現有のタレント適正価格以外で売却する必要はないことを強調している。

 ホームスタジアムの平均観客動員が8万人を上回るのは、ドルトムントが欧州で唯一。無観客試合による経済的な痛手はどの程度になるか。マネージングディレクターを務めるカルステン・クラマーは、5月中旬のブンデスリーガ再開直前に『Sportstar』でこう予測していた。

 「観客とスポンサーなしの場合は、(通常開催時と比べて)1試合あたり300~400万ユーロ(約3億6000~4億8000万円)の損失になる」

 無観客での開催となった再開後のホームゲームは5つ。単純計算すると計1500~2000万ユーロ(約18~24億円)の収入がゼロとなった。もっとも、これは“かすり傷”に過ぎないだろう。2017-18にクラブ史上最高、翌シーズンに同2位の売上高を記録したドルトムントの財政状況はすこぶる良好。3月下旬には財政難にあえぐ1部、2部クラブのために、バイエルン、レバークーゼン、RBライプツィヒと計2000万ユーロ(約24億円)を寄付したほどだ。

 キャッシュに困っていない――大多数のクラブに比べれば――ドルトムントが、次の移籍市場で慌てて資金作りに奔走することはないだろう。事実、ハンス・ヨアヒム・バツケCEOは『ビルト』紙で「(該当)選手の価値を下回る形で手放すことはない」と明言し、コロナ禍に乗じて、人気銘柄のジェイドン・サンチョやアーリング・ホーランドを安価で引き抜こうとしかねないメガクラブをけん制している。

 その一方で、ミヒャエル・ツォルクSDは5月中旬にシーズン終了後の移籍市場での「支出を抑える」意向を表明。これを受け、『Sportsbuzzer』は「トルガン・アザール、ユリアン・ブラント、ニコ・シュルツ、マッツ・フンメルスを獲得するために総額1億ユーロ以上を使った2019年夏のような、積極的な投資は繰り返さない」と展望している。それなりの金額を注ぎ込むかもしれないのは、もしサンチョを適正額で売却することになった際の後釜くらいだろう。

8月に入りツォルクSDが残留を断言するも、いまだその去就について噂の絶えないサンチョ(右)

 ツォルクらクラブ幹部は「明日がどうなるかわからない」と繰り返し、コロナ後の経営戦略には具体的に言及していない。あくまで前記した「支出を抑える」といった基本姿勢だけだ。また、当然ながらシンガポールと中国を訪問予定だった夏のプレシーズンツアーは中止。ドルトムントは2010年代に入ってからグローバル戦略に力を入れているが、コロナのパンデミックが終息していない今年は現地を訪れその動きを加速させることはできない。

 あらゆる関係者の健康を守ると同時に、財政難のライバルには救いの手を伸ばす(バツケは宿敵シャルケへの支援も厭わない姿勢だった)構えを取りながら、引き続き従来の「収入に見合った支出」を徹底していくだろう。

Photos: Getty Images

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ドルトムントビジネス

Profile

遠藤 孝輔

1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。