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「走らせる」だけじゃない。シャルケをV字回復させたデイビッド・バーグナーの辣腕

2020.01.17

ストーミングの旗手#9

現在のサッカー界における2大トレンドとして、「ポジショナルプレー」とともに注目を浴びている「ストーミング」。その担い手である監督にスポットライトを当て、指揮官としての手腕や人物像に迫る。

 昨シーズン、ぎりぎりのところで降格を免れたシャルケ。攻撃も守備も切り替えも、すべてが中途半端な状態になっていたチームを託されたのがデイビッド・バーグナーだ。ユルゲン・クロップの親友として有名で、仲が良いだけではなく志向するサッカーは似ているし、それを浸透させる術にも優れたものを持っている。

 とはいえ、シャルケでそれを成し得ることができるのか。前々任のドメニコ・テデスコも優れた指揮官だったが、チームのマネージメントをコントロールし切ることができずにクラブを去ったのだ。

 だが、今シーズンのシャルケはどこよりも精力的に走り、戦い、絶えずプレスを仕掛け、そしてサッカーをするようになった。ここが大事だ。強靭なメンタリティを要求し、走力と闘争心だけを前面に押し出す監督もいる。だが、バーグナーはサッカーのクオリティをおざなりにしたりはしない。

 そのための人心掌握に関しても優れた手腕を持っている点も重要だ。昨シーズン、期待外れの代表格だったアミヌ・アリ、オマール・マスカレルを信頼し、モチベートしてその実力を見事に引き出している。ユーモアたっぷりにコミュニケーションを取り、だがひとたび試合が始まると誰よりも熱い。コーチングゾーンで大きなジェスチャーで選手に指示を飛ばし、ともに戦う姿勢を見せていく。そんなバーグナーに導かれ、選手の心と頭は解放された。

 昨季とは見違えるようなフレッシュなサッカーで、シャルケとしての誇りを取り戻しつつある。だがシーズンはまだ長い。すでに他クラブもバーグナーの戦術に対応してきている。例えば、ホッフェンハイムは守備陣を普段以上に深くし、シャルケのスピードを殺した(ブンデス第8節/●2-0)。バーグナーは「あそこまで相手が深く守るというのは新しいことだ。だがこれは、相手の我われに対するリスペクトの表れだととらえている。とはいえ、ここから正しい解決策を見出していかないと」と言葉にしていた。

 ギド・ブルグシュタラー、ラビ・マトンドら攻撃陣の得点力には物足りなさがある。ドルトムントとのルールダービー前には「FW陣のゴールが必要だ」と発破をかけていたが、結局はノーゴール。オフェンスの問題をどう解決していくのか。強豪チーム相手にはどうなのか。そのことはバーグナーもよくわかっている。まだ自分たちは途上だと。ゆえに、アウェイで1-3と快勝し期待感を膨らませた第6節RBライプツィヒ戦後の記者会見では「今もうヨーロッパ(欧州カップ戦出場権)のことを口にする人は、錠剤を飲むことをお勧めするよ」と笑った。根拠のない楽観主義者ではない。その笑みの向こうには確かなビジョンがある。

ウィンターブレイク中、チームはスペインのムルシアでキャンプを張った。トップ5で唯一20点台にとどまった得点力をいかに改善するかがバーグナーのミッションとなる


Photos: Bongarts/Getty Images

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シャルケストーミングデイビッド・バーグナー

Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。