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サッカーは「情熱そのもの」ジェシー・マーシュは変化を恐れない

2020.01.07

ストーミングの旗手#3

現在のサッカー界における2大トレンドとして、「ポジショナルプレー」とともに注目を浴びている「ストーミング」。その担い手である監督にスポットライトを当て、指揮官としての手腕や人物像に迫る。

 RBライプツィヒでラルフ・ラングニックのアシスタントコーチとしてその哲学を間近で学んだジェシー・マーシュは今季ザルツブルクの監督に就任すると、すぐさまチームを掌握。CLでリバプールやナポリと互角の戦いを見せるほどに戦術を浸透させている。

 「お金のために働いていない。サッカーは趣味じゃない。情熱そのものなんだ」と断言し、細部に至るまでマネージメントを大事に行っている。例えば、コミュニケーションを円滑にさせるためにと、ユニークなアイディアを出したりもする。RBライプツィヒ時代、遅刻や休暇後の体重増量など規則に反することがあった場合に、ルーレットで罰則を選ぶというアイディアをラングニックに提案したのは他でもない彼。内容的には「育成アカデミーのトレーニングでアシスタントコーチとしてサポートする」「スタジアムツアーのスタッフをする」「食事時にサラダをよそい、皿の後片付けをする」「スタッフにプレゼントを買う」というふうに、ただ罰を科すというよりも、チームやクラブにとってプラスになることに取り組んでもらうことで規律の浸透、チームビルディングの向上に繋がったとラングニックも高く評価していた。

 こうした柔軟性が采配にも表れている。試合中に積極的に戦術やシステムを変えることを怖がらない。CLのGS第2節リバプール戦では30分過ぎから南野拓実をトップ下に置く[4-3-1-2]へとシステムに変更し、マークの受け渡しを整理させてパスの出口を防ぐことに成功。引いて守るのではなく、前に出てボールを奪取していく。そして、相手守備選手間に生じていたスペースへ南野を忍び込ませ、攻撃の起点を連続で作り続け一時は3点差を追いつく展開へと持ち込んでみせた。

 同じくCLのGS第3節ナポリ戦では[4-2-3-1]でスタート。サイドで数的有利を作り、ボールを奪い取るプランが前半はうまくいっていた。後半に入り、ナポリがボールを素早く動かしてこの狙いを外してきたために、途中からは[4-3-1-2]へとシステムを変更して流れを取り戻そうとしていた。ナポリ戦後には「毎試合2失点は多過ぎる。CLは世界のベストクラブがそろう大会だ。3バックを試すこともあり得るかもしれない」とさらなる変化の可能性も示唆していた。

 ただ、どれだけシステムや戦術を変更しても基本的な原則は変わらない。オフェンシブな姿勢で主導的にプレスを仕掛け、縦に素早くダイレクトプレーを繰り返していく。マーシュのアイディアによって、さらにバリエーション豊富なサッカーを披露してくれる日が待ち遠しい。

SNSで話題となったハーフタイムの「チームトーク」や南野の1ゴール1アシストも。ザルツブルグが公式チャンネルで公開した動画


Photo: Getty Images

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ザルツブルクジェシー・マーシュストーミング

Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。