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がん発症、手術、再発…闘病後、そこには別のアチェルビがいた

2019.05.15

ピッチに入るアチェルビ

“変かもしれないが、がんが僕を変えてくれたんだ”

Francesco Acerbi
フランチェスコ・アチェルビ

DF33|ラツィオ
1988.2.10(31歳) ITALY

 まさに青天の霹靂(へきれき)だった。2013年7月、ミランからサッスオーロへ移籍したアチェルビは、メディカルチェックで泌尿器に病巣の疑いが発覚したのだ。詳しく検査したところ、精巣に腫瘍が見つかりただちに手術となった。手術自体は無事終了するのだが、その年の12月に、今度はアンチドーピング検査でホルモンの数値が異常に高く出てしまう。検査した結果、精巣ガンが再発していたのだ。今度は、切除だけでは済まない。再度の除去手術、放射線治療、4回にわたる化学療法を余儀なくされることになった。当然、プレーからは長期間離れることになる。子供は育てられるのか、プレーに戻ることができるのか――脳裏には様々な不安が去来したという。

 だが6カ月に及ぶ治療を経て練習へ復帰した時、そこには別のアチェルビがいた。それまでは寝る時間を削ってナイトクラブをハシゴし、酒も浴びるように飲んでいたが、「真面目にやらなければ、ツケを払わされることになる」と考え、生活習慣と価値観を変えた。再発や転移の恐れがあるという指摘に真摯に従い化学療法に応じた他、真面目に日常生活を過ごし、朝晩2度神に祈り、人間関係を整理した。明るい性格を保つことを通して病魔を克服した彼は、プレーヤーとしても飛躍的に伸びた。再び代表にも選ばれ、今季はラツィオ守備陣の主軸として君臨。復帰への思いは、サッカーに取り組む姿勢も変えさせたのだ。

古巣ミランを敵地で下したコッパ・イタリア準決勝後、アチェルビ本人がツイートした喜びの表情。5月15日、自身初タイトルを懸けてアタランタとの決勝を戦う

Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。