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スペインスーパーカップ、金儲けあって名誉なき虚像のタイトル

2018.08.08

連盟と協会とクラブの綱引き。コパ・デルレイはフォーマット変更へ


試合が多ければ多いほど金は儲かるが、1年の日数は決まっている。となると、代表戦とカップ戦の主催者=連盟とリーグの主催者=協会が対立するのは当然で、そこにクラブの思惑も介入して……。開催まで1カ月を切った段階でようやく、中立地モロッコで、これまでのホーム&アウェイではなく一発勝負となることが確定したスペインスーパーカップ(スーペルコパ)。カネと欲しかない、開催日をめぐるすったもんだをおさらいする。

※この記事は大会フォーマット確定前に執筆された


 リーグ王者とコパ・デルレイ王者がホーム&アウェイで争うスペインスーパーカップはリーガの前哨戦、新シーズンのスタートを飾る8月中旬の風物詩とされてきた。今年のカードはバルセロナ対セビージャなのだが、その日程をいつにするかで大揉めに揉めている。例年なら水曜開催なのだが、今回はセビージャがELの予選ラウンド(木曜開催)に参戦するため週末にしか空きがないからだ。

 主催するスペインサッカー連盟(RFEF)は当初8月5日と12日に予定していたが、バルセロナが5日に親善試合(インターナショナル・チャンピオンズ・カップのミラン戦)があるから……と拒否。親善試合よりも公式戦の方が優先だからバルセロナの言い分に理はないが、夏のツアー絡みで巨額の契約を結んでいて取り消せない、という陳情を、ビッグクラブの言い分でもあり連盟は呑むことにした。

 次に提案されたのは12日と19日。が、これはリーガの開幕節と重なるため、両チームの開幕戦を別の日に設定する必要がある。その延期日をいつにするか先送りで未定だったところがいかにもスペインらしいが、これにはリーグを主催するプロリーグ協会(LFP)が首を縦に振らなかった。延期されたリーグ戦は週中に組まれるしかないが、それによる経済的損失を誰が負担するのか、という問題があったからだ。

 クラブと選手をリーグに専念させたいLFPと、カップ戦や代表戦に出場させたいRFEFがカレンダーをめぐって対立するのは宿命である。試合開催には大金が動き、1年365日は有限なのだから。利害が対立するLFPのハビエル・テバス会長とRFEFのルイス・ルビアレス会長の仲も当然良いわけがなく、この案は立ち消えになった。

スペインサッカー界に君臨する2人の会長、LFPのテバス(左)とRFEFのルビアレス


バルセロナとセビージャの“欲の綱引き”

 最後に、ホーム&アウェイでなく12日に中立地で一発勝負はどうか、という案が出された。バルセロナはRFEFに対しOKと即答したが、セビージャが自分たちのホーム、「サンチェス・ピスファン開催ならOK」と条件をつけた。彼らの説明は、年間チケットをスーパーカップ込みで発売済みであり、本拠地開催でないとファンを納得させられない、というものだった。

 だが、これは「建前」であり「本音」は“自分たちは当初の5日、12日開催でOK(4日に予定していた親善試合はキャンセル可能)なのに、バルセロナの意向で一発勝負にするならカネとイロをつけろ”。つまり、経済的損失を補償し勝負上のアドバンテージも欲しい、ということだ。スーパーカップとは比べものにならない大金が転がり込むから延期というバルセロナの言い分が通るのなら、自分たちの言い分だって通るだろう、と。いずれにしてもスポーツの精神とは無縁の議論である。

 もっとも、スーパーカップ自体がコンペティションとして意味を成しているかどうかは怪しい。昨季のリーグ優勝者はバルセロナ、コパ・デルレイ優勝者もバルセロナ。シーズンナンバー1はバルセロナで決まりなのだ。コパ・デルレイ準優勝とはいえ決勝で0-5で大敗したセビージャをぶつけて何を決めようと言うのか? 何が“スーパー”だと言うのか?

 ちなみに、コパ・デルレイ側の準優勝者が出場するのは、ここ4年間で3度目。1986年と87年には開催日にクラブ間の合意が得られず中止になっているが、金儲けの機会を失って喜ぶ者は誰もいないので、いずれどこかで妥協点を見つけるだろうと思う。


一発勝負でサプライズと弱者振興

 一方、コパ・デルレイのフォーマット変更が検討されている。現在は1部リーグのクラブが参加するベスト32以降は決勝を除きホーム&アウェイで行われているが、これを19-20シーズンから一発勝負にする意向だという。そうなると、当然RFEFもクラブも収入減となるが、さすがに過密日程になり過ぎた。緩和して選手の健康を守ろうという狙いのようだ。

 これ、個人的には大賛成である。格下チームのホームで一発勝負となると、経済面も支援できるだけでなくサプライズが起きやすくなり、弱小クラブに夢を与えられる、というメリットもあるからだ。もともと06-07までは一発勝負で、エスパニョール(99-00/05-06)、サラゴサ(00-01/03-04)、デポルティーボ(01-02)、マジョルカ(02-03)、ベティス(04-05)が優勝しているし、レアル・マドリーやバルセロナが2部B(実質3部)や3部(同4部)のチームに敗れる大番狂わせもあった。それをホーム&アウェイに「改悪」したのは、有名クラブが勝ち上がった方がテレビ放映権料が稼げるからだったのだ。

写真は04-05のコパを制したベティス。喜ぶ選手の中には若かりし日のホアキンの姿も

 あっちを見てもこっちを見てもカネのサッカー界で、格上へのチャレンジとか公正な競争とか弱者振興といったスポーツの精神が少しだけ帰ってきそうだ。


Photos: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。