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コロンビア戦には大島僚太が必要。河治良幸×五百蔵容 対談(2)

2018.05.31

短期集中連載:ハリルホジッチの遺産 第4回


4月9日、日本代表監督を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチは日本サッカーに何を残したのか? W杯開幕前にあらためて考えてみたい。ここからの3回は、第2回でハリルホジッチ監督がなぜマンツーマンディフェンスを採用したのかについて意見を交わした河治良幸氏と五百蔵容氏が再び登場。本大会ではもはや見られなくなった『ハリルホジッチ・プラン』を想像しつつ、コロンビア、セネガル、ポーランドへの対策を話し合う。西野ジャパンのヒントは、ハリルホジッチの遺産の中に隠されている。


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難敵。負けたとしても「負け方」が大事(河治)


――前提の話が終わったところで、ロシアW杯初戦となるコロンビア戦について伺います。河治さんは、どういう見通しを立てていますか?


河治
「引き分けたら非常にポジティブだと思いますね。1番難しい相手ですよ、3チームの中で。半年間の中でハリルホジッチが3チームの中でも一番見ていたそうです、最初の相手ということで。

 日本代表は6月12日にパラグアイとの親善試合をやり、そこからコロンビア戦に向けて準備をします。なので残りの2試合よりも準備期間が長い。ただコロンビアは3チームの中では一番、下手するとウクライナ以上に試合中でやり方を変えてくる相手です。

 序盤うまく入れました、はい終わり、ではない。『相手がこう変えてくるから自分はこう行かなきゃいけない』という、ハリル対ペケルマンの戦いでもあった。日本の選手が苦手とされるところが問われてくる試合になるかなと思いますね。

 あと憶測ですけど、3チームの中ではチームのサポート体制が手厚いほうだと思います。スカウティングやコーチングスタッフについては、ペケルマンファミリーとの総力戦になってくる。勝ち切るのは、相当なことがないと難しい。土俵際に追いやられながらも同点で行ければ御の字、という相手かなと思います」


――一方、五百蔵さんは勝てる相手だと分析されていますね。


五百蔵
「僕は勝ち点3取れる相手かなと思っていて。あのチームは完成度も高いしフォーメーションとかシステムのパターンをいっぱい持ってる。けど、どのパターンも基本的にハメス・ロドリゲスをどこに逃がすかというテーマです。それぞれのパターンの強みを見せたり弱みを隠したりしてるので、ハリルホジッチはそこが見えていたと思います。

 あのチームは基本的に、隠している弱みを使われるとやることがなくなっちゃうチーム。DFのやり方はどのパターンでもそんなに変わらない。南米予選でもそうでしたし、その後の親善試合を観てもそこは変わっていない。結構ハリルさんがハメ込みやすい相手だったかなと。地力の差はあるから、寝かせて勝ち点1。でも付け入るところがあるから勝ち点3はいけると僕は思っていました」


河治
「僕は交代カードなしだったら五百蔵さんと意見は同じ、ただ交代カードがコロンビアはすごく充実しています」


五百蔵
「確かに」


河治
「カルロス・バッカもそうだしミゲル・ボルハも、ルイス・ムリエルもいる。怪我で離脱していたクアドラードも間に合った。途中から変えた時にスイッチが入るカードを幾つも持っていて、ペケルマンもそのカードの切り方がうまい。南米予選もそうで、交代カードがバシバシ当たってて。南米予選は苦戦したので、最後でなんとか凌ぐケースが多かった。

 『このカードは日本相手ならこう切っていく』というシュミレーションを、彼はやってくる。ピッチの中での変化もそうだし、システムの変化もそう。強い駒を途中から入れてくるので、それに対応できたかというとなかなかしんどかったかなと」


五百蔵
「カードのバリエーションは4チームの中で1番持っている。逆に日本は一番カード持ってないんですよね」


河治
「ハメスがいるときはもちろんハメス中心になるけど、途中から入ってくる選手によってハメスのポジションも変えられる。基本はトップ下でも2トップの一角にもできるし、左サイドも右サイドもできる。そこに代わりに別の個を置いてくる。4年前だとジャクソン・マルティネスという選手がいたけど、今はミゲル・ボルハだったりムリエルがいる。クアドラードがスタメンなのかジョーカー的に入ってくるかも気になるところです。

 だから大変な相手だと思います。勝機が絶対ないとかじゃなくて、3試合の中でいうと勝ち点1で終われればいい。日本の世論として『初戦はすごく大事、勝たないと終わり』みたいに言われてるじゃないですか。でも前回、ハリルホジッチが率いたアルジェリアは1試合目で負けているんです。ベルギーとすごい接戦の末、最後はフェライーニのパワープレーにやられた。

 けど、そこでハリルホジッチにも手応えがあった。『手応えがある』と言いながら韓国戦で5人ぐらい選手変えるんですけど、そんなにネガティブな負け方じゃなかった。あのグループの本命がベルギーだったというのもありますけど、今回はコロンビアが本命だと思うんです。負けたとしても、負け方が大事だと思います」


コロンビアの弱点は一定。2敗するかも(五百蔵)


――もちろん勝ちに行くのは前提としても。


河治
「勝ちに行くし、勝てなくても最低でも勝ち点1を取りに行く。けど、負け方によってはネガティブにはならない。14年W杯初戦のコートジボワール戦みたいにはならないかなと。コロンビアは、センターバックの個が強い。日本はそこを逆に利用するやり方ですね」


五百蔵
「コロンビアの弱点はそこだと思います。もちろんすごく強いけど、まずいところがどのやり方でも一貫してる。そこを相手に研究され、使われたら守備面でバリエーションがさほどないんです。攻撃にはたくさんカードがあるけど、弱点をどのチームにも使われてしまってしぼむ可能性がある。意外に2敗とかしちゃうかも。それは、今河治さんがおっしゃったセンターバックの強さ。彼らは、積極的にインターセプトに出てくるじゃないですか」


河治
「インターセプト型のDFなんですよね。それが最終ラインまで浸透している。そこを破られちゃうとGKオスピナ頼りになる。ただ、オスピナがケイラー・ナバス(コスタリカ代表、レアル・マドリー所属)並みのセービング技術があるかというと、そうじゃないんです。総合力のあるキーパーだけど、ナバスレベルじゃない」


五百蔵
「最近の試合だと韓国やフランスにも、インターセプトに出てくるところをフリックで抜かれたりというシーンがありました。それをすぐに修正することはできないわけで」

コロンビアの正GKオスピナ。29歳ながらA代表歴は10年以上ですでに85試合に出場している


河治
「あと本来のセンターバックの主力であるサパタとムリージョがいて、ムリージョは本田のチームメイトです。その2人がケガをしていて、代わりにトッテナムのダビンソン・サンチェスとバルセロナのジェリー・ミナが台頭してきています。若くて良い選手ですが、経験不足です。

 この若手センターバック2枚がスタートで入ってくるような形だと、日本にとってはすごいチャンス。大迫でもマンツーマンじゃ勝てないぐらいの強さを持ってるけど、ここで1つ粘れば原口元気や浅野といったところが結構裏抜けできるんじゃないかなと思ってて。

 大迫はオトリになって潰れ、そこから浅野が裏抜けを狙う。そうなった時に、ジェリー・ミナは付いてこないんですよね。それぞれの担当で大迫を潰すんだったらほぼ完璧にやるけども、裏抜けする選手を逃してしまうところがある。ムリージョ、サパタの2人ならもう少しやるだろうけど、そういった組み合わせを狙っていく、個の強さを利用していくことですね。

 コロンビアって割とDFラインがポジショナルというか、距離を適度にとって絶対的な穴は開かないけども両センターバック間、サイドバックとセンターバック間で均等に距離をとってる。そこに大迫が潰れる前提でポジションを取り、浅野が近くで裏抜けを狙っていくと左サイドバックの選手はついてこなかったり。大いにこの情報を生かして欲しいですけど」


五百蔵
「DFラインだけじゃなく、コロンビアの守備全体の問題で構造的にそうなるんですよね。前線のプレッシングの強度が高くないので、ディフェンシブハーフも積極的に前に出て守備をする。結果、バイタルエリアが空きやすくなる。そこを潰すために強いセンターバックが出てくる。限られた局面の問題ではなく、構造上の問題です。それを利用する。どのチームにも狙われてそこから失点してるんですけど、彼らはやり方を変えられない。アタッカーの質とトレードオフで甘受している問題なので。だから、DFのもろい部分を誰でも使えて、しかも毎試合それが一定している。W杯だとやばいんじゃないかなと思いますね」


河治
「ハリルホジッチ的には大迫、もしくは本田を置いてボールを当てさせたと思うんですけど、僕がもし監督だったらゼロトップの選手を置いてセンターバックを浮かします。彼らを宙ぶらりんにさせて、仮にジェリー・ミナとダビンソン・サンチェスだった場合そこを浅野や原口が裏抜けを狙うというのがシンプルに生きそう。

 ただ右サイドバックのアリアスというやつだけ裏抜けにも強いんですね。原口が出て行こうとしてもマンツーマン気味について行って潰す力がある。逆サイドを狙ったほうが良いですね。だから日本にとっての左、コロンビアにとっての右はオトリ。どちらかというとそっち側で試合を作って行く。逆サイドの浅野だったり永井謙佑でも良いんだけど、隠しておく。だから本田じゃないほうが良いですね。僕は本田が戦力外とは思ってないし使い所はあると思うんですけど、コロンビア戦は右サイドで本田を活用する意味はない。裏抜けをタイミングよくできる選手が良いです。

 またコロンビアは相手のFWにワイドに張られるとサイドハーフかボランチが落ちて5枚にしてきますが、そこで落ちてきた選手とDFラインの関係があまり良くないので、その間をやはり裏抜けで突く方法はありますね。宇佐美の斜めのドリブルなんかも効きそうです」


五百蔵
「右サイドのファブラがすごいストロングポイントだから、どんどん上がってくる。そっちの方を重点的に攻めれば、大きな穴を開けられると思います」


河治
「わかりやすいサイドアタッカーよりはストライカーの方が良いので、スピードのある浅野か、調子が良ければ久保。最近プレーオフになってからよくなってるのでありかもしれない」

コロンビアがポゼッションで得点できないワケ


五百蔵
「コロンビア戦で重要なのは、彼らに意図的にボールを持たせること。基本的にポゼッションのチームではなく、カウンターで点をとるチームなので。ポゼッションからの得点機が、イメージほど多くない。

 どういうことかというと、ミドルゾーンでプレッシャーをかけられた時にハメスが下りてプレッシングを剥がすためのボール回しに参加しないといけないんです。そうしないとボールを前に運べないから。

 そうすると、ハメスが最終局面に関わるのが遅れるため、その時間を利用されて相手にディフェンスセットを許し、ブロッキングされるんです。これが、コロンビアがボールを持てるのに崩しでほとんど点が取れない理由。ハリルホジッチはそれを絶対狙ってたはずです。ミドルゾーンでプレッシングをかけてハメスをビルドアップに参加させれば、かなり脅威度が下がる。あるいは自陣に引いてボールを持たせる。そうするとビルドアップ時の厚みを担保するために左サイドバックのファブラが上がってくるので、その裏をトランジション時に突けるんです。センターバックが前に出てくる弱点へのアプローチと組み合わせることで、彼らの最終ラインを突破できる」


河治
「だから中盤には大島僚太が必要ですね」


五百蔵
「大島は入ると思います」


河治
「大島がボールを持った時に、1発で浅野の裏を狙うのか、大迫に当てた後にフリック気味に出させるのか。あとは酒井宏樹を使うとか。起点としてビジョンを描ける選手。ウクライナ戦で話を聞いた時に1番ポジティブだったのが柴崎でした。『十分合わせられると思った』と。『合宿の期間があれば大丈夫ですよ』と言ってたんです。

 ずっとボールを持つのは本大会では難しい中で、ボールを奪って攻撃を開始するとなった時に、どれだけ瞬間にビジョンを2本3本のパスに対して描けるか。そこで大島と柴崎という選手がいると、単なる思いつきのパスにならない。

 例えばボールを持って、相手のファブラが上がっていてそこを突けるとなった時に、単純に突くだけでなくセンターバックを吊り出すところも含めて崩しのメカニズムを描ける。同じカウンターでも、意図があるものをできる。右が浅野なのか久保なのか、そういう選手と組み合わせればカウンターのビジョンは描けたんじゃないかなと思います」


五百蔵
「ハリルさんは最終段階で大島や柴崎をしきりに組み込もうとしていましたからね。コロンビアとセネガルとポーランド相手に、彼らは効くんですよ。カウンターの時にポイントがわかって、センターバックを吊り出して『あそこが空く』という考え方ができる選手はすごく効く。大島はホルダーを潰しに来るところに対して1タッチでさばいて1人殺せるし、柴崎は身体を当てられても失わないで1人殺せる」


河治
「単に裏にボンってやる思考を持ってる監督だったら、この段階で大島とか柴崎を呼ばないんですよ。周囲の見込みも甘いのかなと思いますね。まずディフェンスの裏を突けたら狙うけど、難しければ繋いでボールを運ぶ。大島も柴崎も使われたなりにできてたわけで、その時にハリルが『とにかく縦狙え』って彼らには言っていないんですよ」


――論じる側にグラデーションがないんですよね。


河治
「E-1の中国戦でも、大島が出た時間帯ってボンボン裏を狙ってないんです。大島もボールを持ってポゼッションしてなんて言ってなくて、効率よく間合いを使って行くかというのをすごい意識してやっていた。もし大島が中国戦で90分出ていたら、世間の評価は全く違うものになっていたと思います」


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(3)へ続く


短期集中連載:ハリルホジッチの遺産

第1回:ヴァハよ、元気か?息をしてるか? その後のハリルホジッチ(文/長束恭行)
第2回:日本代表にゾーンDFは必要か? 河治良幸×五百蔵容 対談(1)
第3回:ハリル解任の真の悲劇はW杯以後。日本代表は「解任基準」を失った(文/結城康平)
第4回:コロンビア戦には大島僚太が必要。河治良幸×五百蔵容 対談(2)
第5回:セネガルの「3バック変更」が怖い。河治良幸×五百蔵容 対談(3)
第6回:対ポーランド、要注意人物はミリク。河治良幸×五百蔵容 対談(4)


Photos: Getty Images

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コロンビア代表大島僚太日本代表

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澤山 大輔