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中島翔哉が魅せた「思考力」。日本代表に今、必要なものを見る

2018.03.27

日本代表コラム

ロシアW杯予備登録メンバー(35人)提出前最後となる欧州での2連戦に臨んでいる日本代表。その第1戦、仮想セネガルとして組まれた23日のマリ戦は指揮官、選手ともに認める低調なパフォーマンスに終わった。だが、収穫がなかったわけではないだろう。その一つが、A代表デビュー戦ゴールを奪った中島翔哉の活躍だ。彼はいかにして攻撃を活性化させたのか。そのプレーぶりから、27日に控えるウクライナ戦に向けた改善点を考える。

 日本を救ったのは、ポルトガルで大ブレイク中の小柄なドリブラーだった。3月23日に行われた親善試合、日本代表対マリ代表。0-1で迎えたアディショナルタイム、ラストワンプレーで中島翔哉がゴールネットを揺らし、1-1の引き分けで終えた。

 ハリルホジッチ監督が新たに招集した中島がピッチに登場したのは60分。そこから、日本の左サイドは一気に活性化した。シュートへの積極性や、ドリブルで勝負を挑んでいく強気な姿勢、そうした中島の良さはA代表デビュー戦でも発揮されていた。

 ただし、中島が素晴らしかったのは「ボールを持った後」だけではない。むしろ注目すべきは「ボールを受ける前」だろう。

 85分、中島が中央でボールを持った三竿健斗からパスを受けて、ミドルシュートを放ったシーンがわかりやすい。中島がボールを受けたのは、ピッチを縦に5分割した場合の真ん中とサイドの間にできるレーン、いわゆる「ハーフスペース」と呼ばれるエリアだった。

 パスが出てくるまで、中島は最前線で大迫勇也と並んだ位置にいた。この時、中島のマークについていた右SBのファライ・サッコは、日本が何度も狙ってきている背後へのパスを警戒していた。

 三竿が前を向いた瞬間、中島はボールをもらいに3mほど下がってパスを受ける。F.サッコはついてこない。フリーでパスを受けた中島はワンタッチで前を向くと右足を振り抜いた。

 ポイントは、中島のボールをもらうまでのアクションにある。FWの位置で裏を狙う意思を見せて、自分のマーク役であるSBをDFラインに釘付けにしてから、ボールを受けに下がっている。

 87分に見せたプレーも印象深い。ファウルからのリスタートでパスを受けた左CBの槙野智章が、ボールの出しどころをうかがう。

 この時、中島がポジションを取っていたのはハーフラインを越えた敵陣のやや左寄り。サイドでも、中央でもないハーフスペースである。

 ゴールに背を向けていた中島の左には相手のボランチ、右にはサイドMFがいた。しかし、中島が下がってパスを受けた時、相手は誰もついてこなかった。ボランチの近くに小林悠、サイドMFの外側には長友佑都がいたからだ。

 またしても、フリー。

 足下でパスを受けた中島は、次のタッチで前を向くとドリブルを開始する。誰が寄せるのか曖昧になっている間にボールを運んで、CFの大迫に縦パス。大迫は前線でキープしてから、DFラインの背後を狙った小林に浮き球でパスを出した。惜しくも通らなかったものの、中島のハーフスペースでのボールレシーブが攻撃の合図になった。

 ここでもポイントは、中島のボールをもらうまでのアクションにある。パスを受ける数秒前、中島は数歩バックステップを踏んだ。それによって中島は前に抜けて行くだろう、だから後ろの選手にマークを受け渡せばいい――そんな意識を相手の選手に与える。

 得点シーンに繋がった94分のプレーも、中島がハーフスペースで受けたところが出発点になっている。マリ選手のドリブルを中盤で潰した、守備から攻撃へのポジティブトランジションの場面。三竿がファーストタッチで相手陣内のハーフスペースにいる中島へ繋ぐ。

 マリ選手3人が寄せてきたが、うまくターンしてかわして、左前方の小林へパス。ファーの本田圭佑を狙った、小林のクロスは弾かれたものの、こぼれ球を拾った三竿がゴール前に入れたボールを中島が左足で押し込んだ。

チーム方針への拘泥=思考停止

 中島は初速が速く、小回りが利いて、相手の逆を突く技術がある。とはいえ、サイドで相手と1対1でドリブルを仕掛けても、マリの選手の身体能力を考えれば確実には勝てない。

 相手がマークしづらいポジションを取ることで、自分の武器であるドリブルを発揮しやすくする。中島がボールを持ったシーンがことごとくチャンスになったのは偶然ではない。

 ウクライナ戦の日本代表に必要なのは「中島のようなプレー」というより、「中島のような思考」だと思う。相手が何を警戒しているのかを考えて、駆け引きをしながら、優位になる状況を作っていく。

 マリ戦ではフリーでボールを持ったCBが、相手が背後へのパスを警戒しているにもかかわらず、ロングボールを選択するシーンが何度かあった。DFラインを下げる準備が整っていて、しかもマリは身体能力が高いので、スペースで競争になっても勝ち目は薄い。

 DFラインの背後でパスを受ければ、一発で決定的なチャンスになる。ボールを持った時にそこを狙うのは間違いではない。とはいえ、通る確率が低いのがわかっているのに、チームのコンセプトだからと背後へのボールを繰り返すのは、もはや思考停止である。

 どんなプレーをすれば試合における課題を解決できるのか。ウクライナ戦では、もっと自分たちで考えてプレーする日本代表が見たい。


Photos: Getty Images

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中島翔哉日本代表

Profile

北 健一郎

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。『ストライカーDX』編集部を経て2009年からフリーランスに。サッカー・フットサルを中心としてマルチに活動する。主な著書に『なぜボランチはムダなパスを出すのか』『サッカーはミスが9割』。これまでに執筆・構成を担当した本は40冊以上、累計部数は70万部を超える。サッカーW杯は2010年の南アフリカ大会から3大会連続取材中。2020年に新たなスポーツメディア『WHITE BOARD』を立ち上げる。