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ベルギー、“タレント布陣”のパラドックス。短所が図らずも長所に?

2018.03.22

チーム戦術新解釈 攻⇄守4局面解説#3

5月14日に締め切られるロシアW杯予備登録メンバー(35人)提出前最後の代表戦となり、選手にとってもチームにとっても重要な意味を持つこの3月のインターナショナルマッチウィーク。着々と準備を進めている強豪国がどんな戦い方を志向しているのか、「攻撃」と「守備」だけでなく「攻から守への切り替え」「守から攻への切り替え」も含めた4局面にフォーカスして分析。各国の仕上がりをチェックする際の参考にしてほしい。

BELGIUM
ベルギー

予選:9勝1分0敗
4.3得点0.6失点(1試合平均)
監督:ロベルト・マルティネス
44歳|スペイン
16年8月就任


 ベルギーは年代別代表チームからA代表チームまで、一貫して[4-3-3]を採用していた。だが、2016年夏から監督に就任したスペイン人指導者ロベルト・マルティネスは、A代表に[3-4-2-1]を持ち込んだ。新システムの売りはウイングバック(WB)だ。

 ベルギーの左サイドにはエデン・アザールという絶対的な存在がいる。そのため、ウィルモッツ前監督はカラスコ(大連一方)を右ウインガーとして起用したのだが、いま一つ実力を発揮し切れなかった。しかし、新指揮官はカラスコを左WBにコンバートすることで、アザールとの共存に成功。右WBのムニエもW杯予選で5ゴール8アシストという圧巻の数字を残した。

監督のコンバートに応え、新システムの左WBで躍動する本職ウインガーのカラスコ

 3バックのフェルトンゲンとアルデルワイレルト(トッテナム)、フェルメーレン(バルセロナ)はアヤックスの育成システム出身ということもあり、正確なキックでボールをフィードすることができる。とりわけフェルトンゲンはゲームメイク能力にも秀でており、ポゼッション時には彼のために周りがスペースを作るほどだ。おのずとチームはポゼッション型となる。昨年9月のギリシャ戦で横パスを繰り返しながら敵陣内に押し入り、最後はアルデルワイレルトのパスからフェルトンゲンがミドルシュートを決めたシーンは、彼らの遅攻の能力の高さを証明した。

 ところがこのチームには、間延びするという欠点がある。相手ボール時にはボールサイドのWBが下がって4バックになるが、時には5バックになることも。そうなると中盤で数的不利になるのを嫌って、全員が自陣深いところまで引くことになる。5バックの状況は組織としてはうまくいっていないのだが、意図せずしてカウンターのスペースが生まれるというパラドックスがある。ロメル・ルカク(マンチェスターU)のポストからボールを持ったデ・ブルイネがスイッチを入れ、アザール、カラスコ、ムニエが一気呵成に攻め込むカウンターは驚異的だ。

 メルテンス、ムサ・デンベレ(トッテナム)ですらレギュラーを確保できないほどの人材を抱えるベルギーだが、弱点はCBの控え不足。一人でも負傷や出場停止になったら、即座にチームのアキレス腱となるだろう。


■チーム戦術新解釈 攻⇄守4局面解説
指揮官が変えた「前」への意識。スペインの猛プレスと“横走り”
再興に燃える母国イングランドの理想はスパーズ+チェルシー?


Photos: Getty Images

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ベルギーロシアW杯

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。