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ドイツ発戦術分析サイトが切る。ドイツ勢がCL&ELで勝てないワケ

2018.02.13

『Spielverlagerung(シュピールフェアラーゲルング)』分析

ブンデスリーガ勢にとって異常事態が起きている。今シーズンのCL、ELに参加した7クラブのうち、グループステージ突破を果たしたのは王者バイエルンのみ。ドルトムントやRBライプツィヒを含む、他6クラブはすべて敗退を喫したのだ。ドイツの分析サイト『Spielverlagerung(シュピールフェアラーゲルング)』が読み解くドイツ勢不振の理由。

歴史的不振には3つの理由がある

 12-13シーズンのCL決勝はブンデスリーガ勢同士の対戦となった。バイエルンとドルトムントの両クラブはヨーロッパで最も重要なタイトルを懸けて戦ったのだ。この一晩の間、ロンドンのウェンブリー・スタジアムはドイツ人の手に渡り、これまでのスペインとイングランドが独占してきたヨーロッパでの圧倒的な覇権を打ち破るための最善の道を歩んでいるかのように思われた――だが、あれから4年半が過ぎた現在、そこにはまったく違った風景が広がっていた。

 ブンデスリーガはこのシーズンの成功をピークに国際比較の中でもゆっくりではあるが、確実に凋落が進んでいる。もはやドルトムントは当時ほどの結果を出すことはできず、バイエルンにしても欧州のトップクラブが繰り広げる熾烈な“輪舞”についていくだけでやっとの状況だ。この2クラブに取って代わるほどのチームが後方に控えているわけでもない。東ドイツに現れた金満クラブであるRBライプツィヒにしても、初参戦となったCLの舞台では、高い授業料を払う羽目になってしまった。

12-13シーズンのCL決勝バイエルン対ドルトムントの戦術図

 このドイツ勢の後退の理由には、様々な要素が絡んでおり、多面的だ。そのため、たった1つの要因を挙げることはできない。だが、これから挙げる3点はドイツ勢の欧州での凋落を説明する上で決定的な役割を果たしている。

理由1:個のクオリティの欠如

 バイエルンを除くと、すべてのブンデス勢が定期的にトップタレントや主力選手を国外のメガクラブに引き抜かれている。ドルトムントを例に取れば、イルカイ・ギュンドアンはマンチェスター・シティへ、ヘンリク・ムヒタリャンはマンチェスター・ユナイテッド、そしてウスマン・デンベレはバルセロナへと旅立っていった。シャルケではベネディクト・ヘベデスがユベントス、そしてレロイ・サネがマンチェスター・シティへと移籍。ボルフスブルクのユリアン・ドラクスラーはパリSGへ。RBライプツィヒではすでに来季ゲームメイカーを務めるナビ・ケイタをリバプールに放出することが決まっている。

 2000年代以降、優れた成果を出しているドイツ国内の育成やトップクラブのイノベーティブなスカウティングを持ってしても、毎年これだけ多くのタレントたちが流出してしまうと、その穴を埋めるのは至難の業だ。

 人材の入れ替わりがあまりにも激しいため、今のブンデスリーガでトップグループに居続けるだけの戦力を備えたチームは少ない。今のところ5~7位のチームがELに参加する資格があるが、コンスタントに上位に食い込んでくるチームはあまりなく、常に異なるクラブが参戦することになる。

 今季前半戦を終えて、現在は残留争いに苦しむハンブルクも含めて今季のブンデスリーガに所属する全クラブが過去10年で最低でも1回は欧州の舞台を経験済みだ。昨シーズンはヘルタ・ベルリン、フライブルク、そしてケルンがサプライズを起こしELへの挑戦権を獲得。だが、フライブルクは早々に8月の予選3回戦で敗退し、ケルンとヘルタはグループステージで姿を消した。そして、彼らはリーグ戦でもつまずきの多いシーズンを過ごしている。単純な話、中2日のペースで昨シーズンと同じレベルのプレーをコンスタントに維持し続けるには、戦力のクオリティが不足していたのだ。

17-18欧州カップ戦で大惨敗に終わったドイツ勢の成績

理由2:戦術的専門性の欠如

 最近のブンデスリーガはサッカーそのものの基本的なプレーレベルよりも、柔軟な戦術的バリエーションが評価される傾向にある。ドイツのトップレベルでは、試合中に戦術的なシステムやフォーメーションを違和感なく変えられる監督が増えている。このトレンドは、もちろんほぼすべてのクラブが[4-2-3-1]システムを用い、中盤でシンプルなプレッシングを試みていた時代に比べれば、大きな進歩を証明している。これは若い監督たちが年々成長を続け、同時に選手たちの戦術理解が十分なほどに成熟していることが理由だろう。

 だが、ここ数年の間は戦術における個別の領域でそれぞれ専門的に特化するプロセスが欠如しているように見受けられる。

 2013年当時のバイエルンやドルトムントは強度の高いプレッシングとトランジションで圧倒的な強さを発揮したゲーゲンプレッシングを前面に押し出し、眩いほどの強さを見せていた。彼らは強力な攻撃陣を擁したバルセロナやレアル・マドリーを打ち破ったのだ。この圧倒的な成功により、ドイツ国外の監督たちにはまだ戦術的なレパートリーとしてあまり注目されていなかったゲーゲンプレッシングという要素が世界中の監督たちに取り入れられるようになった。こうして国内外で戦術の均衡化が進み、トランジションの局面での優位性が消えると、ブンデスリーガではある種の無関心が広がるようになった――どんな戦術もこなせるが、どれも本当に得意とは言い切れない。

 この間に、国外では各国が自分たちに刷り込まれた戦術的DNAにそって、それぞれの国が持つ強みを特化させていった。

 スペインのリーガでは守備戦術が緻密になっていく一方で、相変わらずスムーズなビルドアップやバリエーション豊富な攻撃を生み出す創造性では他の追随を許さない。中堅クラスのチームでも、ボールを持つことを怖がらず、攻撃のクオリティを上げ続けることに余念がない。

 イタリアのセリエAはトップレベルのDFを育てることに関しては総じて素晴らしいものがある。イタリアではほぼすべてのDFが個人およびグループ戦術が叩き込まれ、すでに高いレベルにある選手たちが、より守備の各局面で安定したプレーを見せるようになっている。

 イングランドのプレミアリーグでは、多くの外国人監督たちが次々と流入して以来、攻守にわたって戦術の改善が進み安定して結果が出せるようになった。この変化は、ほんの数年前まではアップダウンの激しい“ラン・アンド・ガン”スタイルで欧州の舞台で苦しんでいたイングランド勢全体にとって、良い影響をもたらすだろう。

 これらの専門化が進むと、サプライズを起こすチームが常に出現する。今季ではアタランタやリバプールのようなチームの特殊な戦術が話題になっている。それに対して、ブンデスリーガでは、その特化した部分を軸にチームのクオリティ全体を上げてくれるような戦術的なベースが見当たらない。これらの戦術コンセプトの競争において、ブンデスリーガは他国に比べて大きく遅れを取っている。

 こうしたタレントの流出と戦術の平均化がさらに加速すれば、今後ブンデスリーガがますます不利になっていくことも考えられる。現在、欧州の舞台で見られるドイツ勢の劣勢はその兆候なのだ。

理由3:ボールを支配する経験の欠如

 クラブや代表チームの成功で、直近の数年間でドイツ勢の立場は変わってしまった。欧州の小規模クラブと対戦する場合は、ホッフェンハイムやヘルタのような中堅クラブが常に下馬評では有利な“本命”の役回りを演じなければならない。こういったチームとの対戦では、ブンデス勢がボールを支配してゲームを作らなければならない、という暗黙の了解ができてしまった。

 だが、バイエルンを除いた多くのチームは強者の立場を与えられても戸惑うだけだった。なぜなら、彼らにはそれに見合ったメカニズムもなければ、不可欠なボールキープ力も備わっていないからだ。

ブンデスリーガ勢のボール保持は「U字」型に守備ブロックの外でパスを回すことが多く、相手にとって危険なスペースにボールが入ることが少ない

 実際に、ブンデスリーガに目を向けてみると、ボール支配率が高いチームはカウンターからピンチを招くシーンの方が目立っている。彼らは狙いがあってボールを持っているわけではなく、持たされているのだ。ボールを持つ時間が長くなるとDFラインが徐々に高くなり、自陣ゴールとの距離は広がっていく。自分たちの足下にあるボールを長い時間動かしていくうちに、集中力が下がり、いつかは途切れてしまう。こうして漠然としたポゼッションからのボールロストが生じた瞬間、そのミスはもはや修正不可能になってしまう。欧州の舞台では、アンダードッグと目されるクラブでも鋭いカウンターは標準装備だからだ。実際に、ほとんどの場合が同じパターンでやられており、失望にまみれた結果はこの点からも説明がつく。

まとめ

 今シーズンは間違いなく例外的なシーズンと言える。バイエルンを除くと、ドイツのクラブは1つも欧州の舞台でグループステージを突破できなかった。RBライプツィヒやホッフェンハイムのように急成長を遂げているチームには、欧州で戦うスケジュールのリズムを獲得する経験が欠けている。拮抗したレベルのリーグ戦と並行して戦う移動や回復、練習のプランニングに加えて、欧州の舞台が持つ独特の環境にも慣れなくてはならない。だが、現在の状態に至る兆候はすでに見えていた。この流れを変えるためには、再び新しいアイディアが必要だ。そして、それが効力を発揮するまでには長い時間を要するだろう。

注目されたナーゲルスマンの欧州デビューはCL予選プレーオフで同胞のクロップ率いるリバプールに敗退、ELもグループ最下位というほろ苦いものになった


Photos: Getty Images
Translation: Tatsuro Suzuki

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Profile

シュピールフェアラーゲルンク

2011年のWEBサイト立ち上げ以来、戦術的、統計的、そしてトレーニング理論の観点からサッカーを解析。欧州中から新世代の論者たちが集い、プロ指導者も舌を巻く先鋭的な考察を発表している。こうしたプロジェクトはドイツ語圏では初の試みで、13年には英語版『Spielverlagerung.com』も開始。監督やスカウトなど現場の専門家からメディア関係者まで、その分析は品質が保証されたソースとして認知されている。