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奥の手まで同じだった“似たもの”対決。ハイレベルな戦術のぶつかり合いが際立たせた、レバークーゼンの強さの秘訣【ELレバークーゼン対ローマ分析】

2024.05.12

未踏のシーズン無敗を継続するレバークーゼンと、ダニエレ・デ・ロッシ監督の下でスタイルを一変させて復調し勝ち上がってきたローマ。戦術的にも非常に興味深い対戦となったEL準決勝注目のカードのピッチ上で繰り広げられた攻防を、らいかーると氏が分析する。

 国内でも欧州でも無敗を継続しているレバークーゼンは、今季の欧州サッカーで最も注目を集めているかもしれない。CLに出場していないことは玉に瑕(きず)だが、かえってその強さをビッククラブ相手に証明できないことが伝説に拍車をかけている節すらある。国内で最強のビッククラブであるバイエルンを倒しており、彼らが今季のCLに出場していたら、という仮定の未来を想像することは楽しい遊びなのではないだろうか。

 昨年のシャビ・アロンソの歩んだ道を歩くかのように、ダニエレ・デ・ロッシのローマでのチャレンジもその将来を保証するかのような道のりになっている。モウリーニョからチームを引き継ぐ難題にもかかわらず、ボール保持スタイルをチームに早々に植え付けて国内ではCL出場圏内にあと一歩に迫り、ELでは準決勝にまで進んできた。1年のアドバンテージを持つシャビ・アロンソに挑むデ・ロッシの命運やいかに。

ボールを保持したい両チームのせめぎ合い

 レバークーゼンはボール保持をチームの基調としており、ローマもまたボール保持を基調としている。最初の注目は、ボールを保持して試合を進めるのはどちらかであった。結論から言えば、その資格を得たチームはローマであった。第1レグの会場がオリンピコであったこと、第2レグが存在することを考慮すればハイプレッシングに出るリスクを取る必要がなかったことから、レバークーゼンがボール保持とハイプレッシングに見切りをつけたことが理由であったが、彼らの姿勢をネガティブに評価する要因にはならないだろう。しかし、ローマのビルドアップの仕組みがレバークーゼンに見切りをつけさせたことも紛れもない事実であった。

 自分たちがボールを保持することで、レバークーゼンのボール保持機会を削りたいローマは、ゴールキックからも意地でも繋ぐ本来のスタイルをこの舞台でも継続した。再現性のあるビルドアップは最強だが、形がはっきりしていると、相手からしても対策が取りやすい時代になっている。自陣でのマンツーマンを受け入れる時代において、相手のGK以外の守備の基準点をはっきりとさせることは日常になっているからだ。

 ローマのビルドアップではっきりしている形は、右SBをウイング化させることだろう。右ウイングに配置されたパウロ・ディバラを解放させるための仕組みになっている。残されたCBと左SBがビルドアップの起点となるが、ローマのビルドアップの形は多種多彩になっている。ビルドアップの立ち位置がどんどん変わるため、対戦相手が対応しようとして相手の立ち位置に従属し過ぎてしまうと、自分が得意としているプレーエリアから離れた場所に連れて行かれてしまう。

 左SBを残した3バック化、左SBを上げた2バック化、アンカーを下げた3バック化、アンカーの下りる位置を左右に変えた3バック化……それぞれに合わせて前線の立ち位置を最適な形に変化するパターンにすべて対応することは、無限地獄のようなものである。このようなローマの仕組みが、レバークーゼンにボール保持よりも撤退して相手の攻撃を跳ね返してカウンターという道を選ばせたことは事実だろう。一方で、ボール保持を諦めた方が良い時はすんなりその道を選べるところに、レバークーゼンの結果を残してきた秘訣が隠れているような気もする。

5バックか、4バックか

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UEFAヨーロッパリーグレバークーゼンローマ

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

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