いわきFCの山中惇希も、重心力トレーニングをコンディショニングに取り入れるJリーガーの1人だ。J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドでは18試合中17試合に出場し、5得点7アシストを記録。ドリブルを武器としてきたアタッカーは、キック精度、判断、周囲を見る視野に変化を感じているという。側弯症とも向き合いながら取り組んできた身体操作の改善は、どのようにプレーを変えたのか。
実感する効果。「自分でもこれだけ結果が出るとは…」
――今年は数字の上でも非常に好調ですね。
「自分でもこれだけ結果が出るとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしている部分もあります。でも、積み重ねられていることは自信になるし、よかったと思っています」
――好調につながる何らかの要素を、ご自身でも感じているのですか。
「そうですね。見える景色というか、感覚が非常によくなったと感じています。ボールを受ける前から味方とつながって、相手を見ながらプレーできている感覚。よりシンプルにプレーできるようになって、相手の逆を取れるようになったことが一番大きいのかなと。昨季までは体力的な問題もあり、必死に上下動を繰り返してプレーしていたので、息切れするし、顔も下がってしまうことが多かったんです。でも今年は体力もついてきて、プレーに余裕が生まれた。それが質の向上につながっているのだと思います」
――プレースキックの精度も高いですね。
「今季からキッカーを務めさせてもらってキックの練習量も増えたので、その成果が表れているんだと思います。もともとはキックは得意じゃなかったんですよ。ずっとドリブルに重きを置いてプレーしてきたし。本当に、今年に入ってからですね。クロスも含めて、キックの精度にフォーカスしてプレーすることが増えました」
側弯症との向き合い。アンバランスだった身体に起きた変化
――山中選手は側弯症を抱えていたということですが、先天性のものだったんですか。
「そうだと思います。父がBMZというインソールの会社に勤めている関係で、僕がプロになった時、全身のレントゲンを撮る機会があり、そのときにちょっと捻れているねと言われて判明しました。まず、脚長差が大きくて右がちょっと短いね、と判明したところから詳しく調べていったら、体の捻れやズレが見つかったんです。捻れた状態で固まっている感じで。だから最初はそれをインソールで調整していました」
――そういう状態で、プレーに影響は出なかったんですか。
「自分ではプレーに特に影響しているようにも感じていなかったので、そのままやっていました。でも振り返ってみれば、確かに肉離れなど右足のケガが多かったんですよね。自覚はなかったんですけど、意識しないうちに右足に負荷がかかっていたんだと思います」
――その中で、2025年の夏に重心力トレーニングをはじめたんですね。
「そうです。昨季在籍していた群馬で、チームメイトの(玉城)大志が何か体を伸ばしたり動かしたりしているのを見て、最初は『コイツ何やってるんだろう』って思ったんです。僕は大志のことを浦和レッズユースの頃から知っているんですけど、彼はユースの頃はどちらかというと足も遅いし動きもちょっと鈍くて、アスリート能力は低めという印象だったんですよ。でも群馬で一緒にプレーしてみたら、明らかにキレが上がって動きも速くなっている。『すごいな、どうしたの』と聞いてみたら、重心力トレーニングをやっていると。どんなトレーニングなのかと仕組みを聞いたらちょっと体を動かしてみせてくれて、僕も真似してやってみようと思ったら、できないんです。え、これすごいなと思って、僕ももともと体に興味があったので、やってみたくなりました。側弯症へのアプローチにもなると聞いたので、それならプレーのパフォーマンスも上がりそうだと思って、トレーニングの先生を紹介してもらったんです」
――実際のトレーニングはどのような内容だったんですか。
……
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
