
Jリーグ最優秀育成クラブ賞を最多の4度にわたって受賞しているFC東京。その下部組織が輩出した佐藤龍之介と永野修都はなぜ今季、それぞれファジアーノ岡山とガイナーレ鳥取で武者修行しているのか?背景と現状を、育成年代からJリーグまで取材する竹中玲央奈氏に伝えてもらった。
トップチーム登録されているGK4人全員がアカデミー出身者であったり、森本貴幸が保持していたJ1最年少記録を塗り替えた北原槙が現れたり……と、FC東京の育成組織には明るい話題が多い。
数が多ければ良質な人材はそれだけ生まれてくる、というのは定説である中、FC東京は日本最大の人口密集地帯を本拠地に置く分、“選べる才能”が多い強烈なアドバンテージを持っている。それゆえ有能な選手が生まれてくるのは当然かと思われるかもしれない。
筆者個人としても、FC東京のアカデミーは強くあって然るべきで、それこそいずれはトップチームのスタメン全員を育成組織出身者で埋めなければいけないとも思っている。それくらい、“場所”に恵まれている。
とはいえ、抱えられる選手の数は限られており、例えばユースに同年代でスーパーなタレントを20人そろえても、試合に出られるメンバーは11人プラスアルファにとどまり、下級生からの突き上げもあるとなると、成長において最重要と言っても過言ではない“実戦経験”が不足して伸び悩む懸念もある。
その意味では、“ジュニアユース年代で実力ある選手でも同ポジションに優れた選手がいる場合はユース昇格をさせずに高体連へ送る” こともそうだし、ユースで将来性のある選手が複数人いたとしても“トップチーム昇格後に即レギュラー定着は難しいので大学で試合経験を積ませる” という判断を適切に下す必要がある。そうしたキャリア作りにおいて、FC東京は贅沢な地域で活動しているようにも見えるが、難しいミッションと向き合っているとも言える。
実際、2種年代では突き抜けた実績を持っていたにもかかわらず、トップチームでは試合に絡めず苦しむ育成組織出身者も少なくない。そういった意味では、昇格後の扱い方は非常にデリケートな問題であり、ここにフロントの手腕が問われてくるはずだ。
🔵「2024Jリーグ最優秀育成クラブ賞」受賞🔴
FC東京が2024Jリーグアウォーズにて、「2024Jリーグ最優秀育成クラブ賞」を受賞しましたので、お知らせいたします。https://t.co/8bBhvE5iu5
2023シーズンに続いて4度目の受賞でJクラブとして最多となります。#fctokyo #tokyo pic.twitter.com/ywRbHvOHMY— FC東京【公式】 #東京が熱狂 (@fctokyoofficial) December 10, 2024
年代表別代表の“前と後ろ”を支えてきた2人
そして、この春にFC東京は、高校を卒業したばかりの次世代のホープ2人をそれぞれ異なる形で武者修行に出した。2006年生まれのMF佐藤龍之介とDF永野修都だ。ともにU-15からFC東京のアカデミーに所属している生え抜きである。
高い位置のギャップで受けて前を向き、そこで失わない技術とアジリティを備え、ゴール前への侵入を繰り返せる “テクニカルで走れるトップ下” である佐藤と、屈強な体で最後尾の防波堤となりボールポゼッションにも関われるCBの永野は、年代別日本代表の常連。この世代の“前と後ろ”を支えてきた2人である。


佐藤は高校2年生時の2023年にプロ契約を結んでいるので3年目だが、今年からトップチーム昇格を果たした永野と同じく、社会人としては1年目である。そんな節目のシーズンに、佐藤はFC東京と同じJ1のファジアーノ岡山へ、永野はJ3のガイナーレ鳥取へと期限付き移籍した。
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Profile
竹中 玲央奈
“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。