
就任3年目の小林慶行監督率いるジェフユナイテッド市原・千葉が、J2開幕2連勝と好スタートを切った。今季のテーマは「大人になる」こと。その歩みは順調なのか? クラブを追い続ける西部謙司氏に考察してもらおう。
小林慶行監督が率いた過去2年間、ジェフ千葉は「自分たちのサッカー」という拠って立つ戦い方をある程度手の内に入れることができた。
大雑把に括れば守備は前線からのハイプレス、攻撃はポゼッション。後方からのビルドアップには相手が同数守備化した場合の守備ラインを直撃するロングパスも定石として含まれている。スピード感のある攻守はファンの支持を得て、ファンを巻き込んでの「自分たち」を主語とするプレースタイルを持つことができた。
ただ、順位は7位。1年目の6位よりもわずかに後退していた。3年目の今季、「自分たちのサッカー」だけでは足りない現実に向き合うことが大きなテーマになる。
今季のテーマは「大人になる」
そこでキーワードになっているのが「大人になる」だ。
実は昨季の段階から「大人」という言葉はしばしば会見などで聞かれている。ただ、どちらかといえばネガティブな意味にとらえられていた。
昨年5月18日、第16節の愛媛戦後に小林監督はこのように話していたものだ。
「やはりハマらないチームというのはある。その時どんな戦い方ができて、勝ち点を積み上げられるか。それが課題として浮き彫りになっている。では、この先何でもできるチームを目指すのかというと、それではおそらく選手もチームも平均化してしまう。まだまだ尖っていくべきで、そうでないと平均化して普通のチームになりかねない」
ただ、同時に「この先のチーム作りの絵はある」とも話していて、「尖ったまま進むけれども、ちょっと大人になっていく」と。しかし、「そういうところに足を踏み出すのは危険」と言っていて昨季はいったん棚上げした。今季は「チーム作りの絵」を描き上げにいく。
「自分たちのサッカー」に特化して尖っているだけでは勝てないのは、おそらく昨季スタートの時点でわかっていた。しかし、全方位に対応できるチームを目指すとなると、せっかく積み上げてきたものが失われる危険にも気づいていた。変えたいけれども、安易にはできない。昨季はずっとこの葛藤を抱えながらの1年だったわけだ。
3年目の今季、小林監督は「明確に結果を求められている」と言う。そのためには封印していた「大人になる」作業を進めなければならない。具体的には失点減であり、苦手の克服である。
【小林慶行監督の契約更新について】
2025シーズンもトップチームの指揮を執ることになりました✨『2025シーズンこそ、皆さまとの一体感と、積み重ねてきたものを武器に目標を掴み取ります』
詳細はこちらからhttps://t.co/ic3yv7Gfnp#jefunited #小林慶行 pic.twitter.com/mm81GIOjin
— ジェフユナイテッド市原・千葉【公式X】 (@jef_united) November 25, 2024
明らかに相性が悪い6チームの特徴
千葉には明らかに相性の良くない相手がいる。昨季で言えば2試合とも負けている相手は清水、長崎、山形、熊本、いわき、秋田の6チーム。清水、長崎、山形は千葉よりも順位が上だが、熊本、いわき、秋田は下。力の差以上に相性の問題。大きく分けると2種類の苦手がある。……



Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。