今シーズン、横浜FCの新戦力の目玉・福森晃斗が、プロ14年目にして過去一番の活躍を見せている。最大の武器である、左足のキックでつけたアシスト数は、第24節終了時点でリーグトップの12。この数字は、北海道コンサドーレ札幌でJ2を戦った2016シーズンの10アシストを上回る自己最多の記録であり、その勢いは留まることを知らない。のびのびとプレーする姿に、ピッチ内外で見せるマイペースかつ柔和な人柄、そして一度見たら忘れられないたしかな技術は、ファン・サポーターのみならず、同じプロであるチームメートをも虜にしている。
敵にとっては“悪魔”、味方にとっては“天使”
昨年、横浜FCは「J1残留、その先へ」のスローガンを掲げ、クラブ史上初の“自力残留”(2020シーズンは新型コロナの影響により、降格なし)を目指し、シーズンをスタートした。
開幕当初はより攻撃的なサッカーを体現すべく[4-2-3-1]にチャレンジした。しかし、未勝利と複数失点が続き、第11節以降は5バックの“堅守速攻”のスタイルを構築。苦戦しながらも、超強力な前線をそろえるヴィッセル神戸や、最大のライバルである横浜F・マリノスにホームで勝利するなど、粘り強く戦っていた。
しかし、結果として残留は叶わず。
たった1枠の降格を回避できなかったことは、監督、選手、フロントスタッフ、そしてファン・サポーター全員が悔やんでも悔やみきれない現実だった。
迎えた新シーズン。強化部が整理したいくつかある補強ポイントのうち、重要項目の一つに「セットプレーからの得点」が挙げられていた。
具体的な数字で言えば7本を決めており、突出して少ないというわけではない。それでも、コーナーキックやフリーキックを得た回数に比べ、ダイレクトにゴールにつながった本数としては少なかったな、という印象はたしかにある。
今シーズン1年でのJ1昇格を叶えるために、「主導権をにぎり、攻守にアグレッシブに、90分戦えるチームづくりを目指す」ことが、大前提の理想。
一方、昨シーズンは“理想と現実”のギャップを目の当たりにしたこと、どんな展開でも勝ち点を掴む勝負強さが足りなかったことを考えても、「流れを変える1点」を生み出せる人材を求めていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、国内屈指のプレースキックの技術を持つ、福森晃斗である。
「ヨモさん(四方田監督)を胴上げするためにこのチームに来ました」
その力強い宣言のとおり、福森はここまで与えられた役割をまっとうしている。……
Profile
青木 ひかる
1996年7月31日生まれ。神奈川県出身。大学在学中、Jリーグ観戦を楽しみながら、スポーツライターのアシスタントとして取材経験を積む。スポーツ写真販売などを手がける一般企業を経て、2023年に憧れだったスポーツメディア業界に飛び込み、株式会社ウニベルサーレに入社。現在は「フットサル全力応援メディアSAL」にて競技の魅力を発信するほか、Jリーグ・横浜FCのオフィシャルライターとしても活動している。