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ソルバッケンはなぜ浦和へ?その才能に惚れたローマが見守る、ノルウェー代表WGの新しい冒険

2024.01.30

「左利きのウインガー。複数ポジションをプレーすることができ、パス出しや自らボールをうけてゴールに絡むこともできる選手。ボックス付近での質の高いプレーから多くのゴールに絡むプレーを期待したい」――浦和レッズは1月12日、この紹介文とともにMFオラ・ソルバッケンの加入を発表した(2024年6月30日までの期限付き移籍)。ノルウェー代表として2023年も7試合に出場するなど11試合1得点を記録。同年1月にローマが4年半契約で獲得した25歳の実力とJリーグ参戦に至るまでの経緯を、『ASローマ速報』の管理人、如月たくみ氏に伝えてもらった。

 『日本の浦和レッズがオラ・ソルバッケンの獲得に向けてローマと交渉している。あとは細部を詰めるだけで取引はまもなく完了するだろう』

 1月5日、移籍専門記者ファブリツィオ・ロマーノのX(旧Twitter)投稿に世界中のロマニスタが驚いたはずだ。近年ヨーロッパの多くのクラブが動向をうかがっていた才能あふれるノルウェーのアーラ(ウインガー)が、レンタルとはいえ極東のリーグに移籍するのだ。

 しかし、ここ日本では、現役感のあるヨーロッパの選手がやってくるというインパクトのみ語られて、ワールドクラスのアーリング・ホーランド(マンチェスター・シティ所属)と代表でプレーしている動画を通じて、相対的に凄い選手なのだろうという感想がSNS上では多く見受けられた。逆に言えば、浦和サポーターに限らず、多くのJリーグファン、欧州サッカーファンにとっても、ソルバッケンは現状評価する材料に乏しいということなのだろう。

 その点において、ぼくたちロマニスタは、かつては対戦相手であり、今は同じジャッロロッソの一員であるソルバッケンについて、より語れる部分があるのかもしれない。今回は、彼のヨーロッパ時代を振り返り、そのプレースタイルや、なぜ日本のクラブを選んだのかなどの事情をロマニスタの視点から紐解いていきたい。

“6-1”直後、モウリーニョからのラブコール

 1998年生まれ、現在25歳のソルバッケンは、ノルウェーの名門ローゼンボリの下部組織からランハイム・フォトバルを経て、2020年にFKボデ/グリムト(以下ボデ)に加入するとすぐにトップチームに定着した。彼の評価を決定的にしたのは、なんといっても2021-22シーズンのUEFAヨーロッパカンファレンスリーグだろう。2021年10月21日に行われたグループステージ第3節で、ローマ相手に2ゴールを挙げ、モウリーニョ監督(当時)のキャリアに汚点を残す6-1の勝利に貢献すると、オリンピコでのリターンマッチでも1ゴールをマーク。そして、決勝ラウンドプレーオフではセルティックに対して第1レグで1アシスト、第2レグで1ゴール、ラウンド16のAZ戦でも第1レグで1ゴールと結果を残した。また、2021年に出場した公式戦36試合をすべてスターターとしてプレーしている。

 この活躍により、ナポリやフランクフルトといったヨーロッパの強豪クラブが代理人の電話を鳴らし続けることになる。いち早くアクションを起こしたのがローマだ。6-1の大敗直後からモウリーニョ監督の密命を受けたチアゴ・ピントGM(ゼネラルマネージャー)が早々に代理人とコンタクトを取り、グループステージが終わった2021年の冬には個人合意を取り付けた。欧州トップリーグへのキャリアアップを望む選手にとって、モウリーニョ監督からのラブコールは魅力的に思えたはずだ。

ボデ/グリムト対ローマ(6-1)のハイライト動画。背番号9のソルバッケンは4点目(71分)と6点目(80分)のゴールを決めた

 しかし、クラブ間では大きな障壁が立ち塞がった。エリテセリエン(ノルウェー1部リーグ)がセリエAの2022-23シーズンが始まる8月よりも早い4月に開幕することから、ボデはシーズン途中の8月に売却する意思はないと伝えてきたのである。市場価格350万ユーロ(約5億6000万円)に対して、ボデが設定した移籍金は桁が1つ多いと報じるローマ系メディアもあった。この強気な価格は売る気がないという意思の表れであり、同時にローマが簡単に用意できる金額ではなかった。これにより、ピントGMはプレシーズンの獲得を断念。自由移籍となる2023年1月の冬の移籍市場まで待つことにしたのである。……

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J1Jリーグイタリアオラ・ソルバッケンノルウェー代表ボデ/グリムトローマ浦和レッズ

Profile

如月 たくみ

2004年から続くASローマ情報サイト『ASローマ速報』管理人で、2022年にローマ来日に合わせて設立された公認ファンクラブ「ROMA CLUB TOKYO」の会長を務める。現在はJリーグ入りを目指すサッカークラブ南葛SCで広報、運営として働いている。自著にトッティのラストシーズンを綴ったkindle電子書籍『ローマ速報オフライン』がある。【WEB】ASローマ速報〜ROMANISMO | 2004年からローマの魅力を伝えるロマニスタサイト(asromasokuhou.com) 【Twitter】如月【ASローマ速報⚡ROMANISMO official】(@roma_sokuhou)

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