「世界と伍して闘うことのできるクラブ」を目指してきたものの、2022シーズンのアジア王者として挑んだクラブW杯ではグループステージ3戦全敗で、早々に姿を消した浦和レッズ。その「3年計画」から同大会までの4年半を振り返りながら、決戦主義で揺らぐチームに求めてほしいものを、番記者のジェイこと沖永雄一郎氏に洗い出してもらった。
浦和レッズの世界をめぐる旅はいったん終わりを迎え、今度こそ本当に一区切りがついた。なので今回は、クラブW杯自体の総括というより、そこに至る道のりに焦点を当てて振り返ってみたい。
チームは、無事に成田空港に到着🛬🇯🇵
たくさんの応援、ありがとうございました。7/19(土)に再開するJ1リーグに向けて、準備していきます⚽️#FIFACWC #FIFACWC浦和カメラ#UrawaRedDiamonds #urawareds #浦和レッズ#WeareREDS #WeareDiamonds #世界で赤い輝きを pic.twitter.com/kpaWu0safl
— 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) June 28, 2025
話はまず、2021年に遡る。
2021-22:現実と期待の狭間で『ポジションプレー』に終始
2021シーズン、浦和は「3年計画」の実質ゼロ年目を担った大槻毅からリカルド・ロドリゲスへ監督をバトンタッチ。本格的な改革へと歩みを進めていく。期待されたのは(おそらく)ポジショナルプレーの実装で、リカルド監督の得意とする立ち位置を駆使したビルドアップが導入された。
ただ、この時は『ポジションプレー』にとどまったと言うべきかもしれない。ゆるい相手を効率よく崩していく術こそ身につけたが、一定以上固い相手には苦戦した。大きな前進をしたものの、得点はJ1で8番目の45にとどまり、6位に終わる。
しかし同時に、アジアへの扉が再び開かれた。リーグ戦はラスト5試合に負け越す形で終了したものの、その後の天皇杯準決勝と決勝を宇賀神友弥と槙野智章の劇的決勝弾で制し、タイトルとACL出場権を獲得して底力を見せた。
#浦和レッズ 2021シーズンの成績は以下のとおりです。
J1リーグ 6位
YBCルヴァンカップ ベスト4
天皇杯 優勝熱いサポートありがとうございました。
30周年を迎える来季はアジアへ帰ります。
共に新たな歴史を築いていきましょう。#WeareBackintheASIA #ONEHEARTTOGETHER #urawareds #wearereds pic.twitter.com/rRyxVsTOjA— 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) December 19, 2021
とはいえ、リードを奪いながら試合の大半を大分トリニータに支配され、90分に同点に追いつかれた際は記者席の誰もが「試合は延長戦に突入し……」と原稿を修正しているところだった。ボールを握るために平野祐一を投入する、という選択肢もあったはずだが、リカルド監督は動きの重く見える伊藤敦樹をピッチに立たせ続けることを選び、終了間際にセットプレーで追いつかれた直後にセットプレーで勝ち越した。
時は進んで2022年4月。浦和はブリーラムへと飛び、ACLグループステージに参加した。過去記事『あつい「アジアの浦和」を観て。ある浦和記者のタイ遠征記』でもレポートしたように、格下チームは攻略できるものの堅い相手を攻略できない課題は持ち越されている。8月の決勝トーナメントでも似た展開となったが、まるで決勝戦かという雰囲気となった準決勝の全北現代戦ではまたも底力を発揮。キャスパー・ユンカーの土壇場ゴールで同点に追いつき、PK戦を制してファイナルへの切符をつかんだ。
ハードルを1つクリアしたリカルド監督だったが、その後のリーグ戦やルヴァンカップでは何度か大量失点を喫するなど振るわず。1-4で敗れたJ1第33節、横浜F・マリノス戦の後に契約更新をしない旨が正式に告げられ、10月31日に「監督職の解除」がリリースされた。
浦和レッズは、リカルド ロドリゲス監督と、2022シーズンをもって監督職を解除することに合意いたしました。
また、同監督と共にチームを率いた小幡直嗣コーチ兼通訳につきましても、来季の契約を更新しないことで合意いたしましたので、併せてお知らせいたします。https://t.co/TZ1QpINtpV pic.twitter.com/zj28FMfCFE— 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) October 31, 2022
リカルド監督の手腕や采配も完璧とは言い難かったが、「プレシーズンでは若手の木原(励)が唯一のFWだった。これが優勝を掲げる上で果たして現実的(な状況)なのか」「タイトルを目指すにあたって、(J1で昨年の)川崎(フロンターレ)との21ポイントの差をどう埋めるかの分析が現実的ではなかったと思う。私も(設定の場に入って)話をしたが、期待値の設定が正しくなかった」といった現実と期待の乖離に対するコメントは、クラブ関係者全員が受け入れなければいけないだろう。
2023-24:決戦主義の助長。賛否両論のヘグモ解任で逃した転機
明けて2023年、新監督にはマチェイ・スコルジャが就任。5月にACL決勝が控えていたことから、攻撃面は前監督の遺産を継承しつつ、守備強化に重点を置いてプレシーズンキャンプを実施。アル・ヒラルとの決戦に備えることが最大の焦点となっていた。
これは結果としてクラブ史上3度目のアジア制覇につながったが、決戦主義をより助長する成果となったかもしれない。以降は過密日程にも悩まされ、攻撃面の課題解消は遅々として進まず、アジアの先にある“世界”への挑戦準備が進捗しているとは言い難かった。
ファン・サポーターのみなさまへhttps://t.co/QKzdqVt66E#urawareds #浦和レッズ #WeareREDS pic.twitter.com/aWfY6HtuKi
— 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) May 6, 2023
そして迎えた12月。すでにチームは満身創痍で、世界に挑むどころではなかったかもしれないが、クラブW杯初戦のクラブ・レオン戦を制して準決勝のマンチェスター・シティ戦へと駒を進める。ただその先に待っていたのは、過去記事『クラブW杯で痛感した世界との差を埋めるために。浦和が引き継ぐべきスコルジャ監督の遺産』で記したような、少しの手応えと大きな差だった。
この経験をもとに、新フォーマットでさらに大規模に開催される2025年のクラブW杯へ向けて歩みを進めるはずだった浦和。
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Profile
ジェイ
1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。
