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ケガをも糧にアジア杯へ。中村敬斗が「自分にとって大きな意味があった2023年」を振り返る【現地取材】

2024.01.01

ガンバ大阪からオランダのトゥエンテ(2019-20)、ベルギーのシント=トロイデン(2020)、オーストリアのFCジュニオール(2021)、 LASKリンツ(2021-23)と渡り、8月にフランスのスタッド・ランスへ。初挑戦のリーグ1では前半戦17節(全34節)を終えて12試合に出場、2得点1アシストを記録した。日本代表にも定着した2023年は、23歳のアタッカーにとってどんな1年だったのか。現地で取材を続ける小川由紀子さんが、ケガから復帰したストラスブール戦(12月1日)、そして決勝ゴールで締めくくったルアーブル戦(12月20日)の試合後に話を聞いた。

 3月の代表ウィークでA代表に初招集され、6月のエルサルバドル戦で初ゴール。さらに9月のトルコ戦、10月のカナダ戦と、出場するたびにゴールを決めて、4試合で4得点というハイパフォーマンスを披露。そしてオフには、欧州5大リーグの一つであるフランスのリーグ1にステップアップし、そこでも順調にスタメンに定着して9月17日の第5節ブレスト戦(●1-2)で初アシスト、次のリール戦(○1-2)で初ゴールと、中村敬斗の2023年は間違いなく「飛躍の年」だった。

 ところが10月13日のカナダ戦、42分にゴール右上を突く鋭いシュートで日本代表に3点目をもたらした後の後半、相手DFアリステア・ジョンストンに左足首を削られ負傷退場。その後、2カ月近くも戦列を離れることになってしまった。

 代表でもクラブでも、自分の定位置をつかみかけ、ゴールも決め、徐々にインパクトを増していた上昇気流の中でのアクシデント。しかも、相手からの“もらい事故”だ。当然、苛立ちもあった。

 「(イライラしたりも)しました、しました。こっちに帰ってきて、正直11月の代表も行きたかったから、(メンバー)発表までにはこの試合で出ておかないといけないと逆算したり……。ナント戦(11月5日)とかロリアン戦(10月28日)には出場したいと、現実的に考えていたんです。『ちょっとぐらい無理しても出たいな』みたいな気持ちは持っていた。でも、アジアカップを目指してメンバーに入りたいっていうことを考えた時に、焦ってもっと悪化させたら、それこそアジアカップ(のメンバー)にも入れないんで……」

「いつ復帰できるか…しっかり計画を立ててチームとやってきた」

 最初の診断は、「復帰まで4〜6週間」というものだった。

 “6週がマックス”だと中村は考えていたそうだが、スタッド・ランスのメディカルチームも、ひとまず6週後の第14節ストラスブール戦(12月1日)での復帰を目標に掲げ、試合の3週間前あたりからそこに照準を合わせて調整を進めた。

 試合に出られない歯がゆい思いはありつつも、「いつ(復帰)できるか、と毎週毎週考えるのではなく、やれる?どうする?とかそんなんじゃなくて、しっかり計画を立ててチームとやってきた」ことは、ポジティブな気持ちを保つ助けになった。それにベルギーからオーストリアに移籍した頃、やはり左足首の靭帯を負傷した経験から、足首のケガには慎重だった。

 そうして辛抱強く回復に努めた結果、6週後のストラスブール戦、中村は6試合ぶりに本拠オーギュスト・デュローヌのピッチに立つことができた。

 2-0とスタッド・ランスがリードしていた78分に左ウイングとして送り出されたが、相手側が“失うものはない”という気概で押し込んでいた時間帯。中村は守備を中心に、という指示を受けていた。

 88分に元フランス代表FWケビン・ガメイロのゴールで2-1とされた後は、とにかく守り切って勝ち点3を手にすることだけが目標となった試合で、攻撃面での持ち味を発揮する場面は訪れなかったが、チームがそのまま勝利して連敗を2で食い止めたこと、そして中村にとっては実戦に復帰できたことが、何より重要だった。

 「復帰という点で言うと、この12、3分がすごい大きな意味があると思っている。やっぱり、実戦を1回やると全然違うんで」

 全体練習に参加してからわずか3日での実戦復帰で、ボールを受けた時の感覚などは最初は思い出せなかったというが、6週間ぶりの試合は中村にとって格別だった。

 「今日だけじゃなくて、まずチーム練習に合流した時からすごくうれしかった。6週間ぶりでやっぱりすごく楽しいし、自分1人で蹴るのと全然違うから本当にうれしくて、今日またこうやってピッチに戻ってこられた。絶対勝たなきゃいけない試合だったのでプレッシャーもあったし、守備の時間が長くて難しい展開ではあったんですけど、ファンの前でまたプレーできて、やっぱりうれしいですね」

12月1日の第14節ストラスブール戦で(Photo: Yukiko Ogawa)

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アジアカップウィル・スティルフランスリーグ1中村敬斗伊東純也日本代表

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小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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